Weekly R-style Magazine 「読む・書く・考えるの探求」 2018/06/18 第401号
はじめに
はじめましての方、はじめまして。毎度おなじみの方、ありがとうございます。
突然ですが、新刊が発売となります。
7/24発売に向けて鋭意作業中です。
ここしばらくはずっとこの本に取り組んでいました。格闘していたと言い直してもいいくらいです。
苦労話は、日曜日のディズニーランドの集客数くらいあるのですが、それはまたおいおい紹介していきます。
とりあえず、現時点では本に関する情報がほとんどない(目次すら確認できない)のですが、すでに「予約しました」というツイートをいくつか拝見しました。たいへんありがたいことであり、嬉しいことであり、身の引き締まる思いでもあります。
もともと本というのは、「中身も分からず買う」要素はあるにせよ、目次すら確認できないのは暗中模索レベルです。しかも、2000円オーバーで若干お高い感も否めません(少なくとも一般的なビジネス書よりは高いです)。
それでも予約してくださっている、ということの意味はしっかり噛みしめたいと思います。
〜〜〜感覚不在〜〜〜
以下のツイートを見かけました。
なかなか面白そうな問いだったので、けっこう真剣に考えました。しかし、まったくイメージが浮かんできません。休暇を何ヶ月取りたいのかのイメージが湧かないのではなく、そもそも自分が休暇を取っているイメージが湧かないのです。
18才の頃から「ボンクレショウガツ」と無縁の生活をしてきましたし、三連休程度の休みですらほとんど経験がありません。物書きにジョブチェンジしてからも、毎日原稿作業に明け暮れています。でもって、そのことに一切の不満を感じていません。「一ヶ月くらい休めたらな」と思ったことがないのです。
これはなかなか深刻なワーカーホリックです。
実際、一ヶ月仕事を禁じられたら、仕事以外の原稿を書くことでしょうし、それが禁じられたら読書に明け暮れるでしょう。いつもと変わらない日常です。もし、それすらも禁じられたら、何をしていいのか戸惑うことすらありえます。
はたしてこれは良いことなのだろうか、とわりと真剣に考え込んでしまいますが、仮に良くないとしてもあまり変えるつもりはないので、どうしようもなくはあるのですが。
〜〜〜ミニ登山〜〜〜
妻と「最近、お互いに運動不足だね」という話をしていたら、なぜか若草山に登ることになりました。
若草山は、奈良市内にある山、というかちょっと大きめの丘です。大人は150円で入れて、山頂までだいたい30〜40分くらい。頂上からの景色は、奈良市内を一望できます。
都会での生活がどういうものなのかはさっぱりわかりませんが、田舎での生活というのは、繁華街から少し歩けば山のような自然(というか山ですが)に突入できます。若草山ならば、近鉄奈良駅から20分くらい歩けば、もう山の麓です。めちゃくちゃ近いです(ちなみに道中にはいっぱい鹿がいます)。
で、まあこれくらいの山なら余裕だろうと思っていたら、ものすごく疲れました。登山ルートは南向きと北向きがあるのですが、南向きがかなり急な勾配になっており、ちょっと登るだけで一気に息があがります。山頂付近に辿り着いたときには、「もう一歩も動きたくない」みたいな状況になっていました。
ワーカホリックよりも、運動不足の方がより深刻かもしれません。もうちょっと体を動かそうと決意しました。
〜〜〜顔なじみの脱稿〜〜〜
毎日のようにカフェに行き、そこで作業をしています。
常に同じ店ではなく、そこにはローテーションがあるのですが、なにせ田舎住まいなので選択できるカフェの数にも限りがあります。作業しやすいカフェとなるとさらに限られます。よって、ある程度のお店に「通い慣れる」ことになります。
すると、同じように通い慣れている別のお客さんが目に止まるようになります。そういうお客さんもルーティーン的というか、毎回同じ席に座り、同じ注文をし、同じ作業をして、同じ時間に退店しています。だいたい私も同じなので、お仲間です。
そういう人たちの中に、物書きをしているおじさんがいました。パソコンを使うのではなく、分厚い本を横に置きながら、手書きで何かを書かれているおじさんです。私はそのおじさんにちょっとした親近感を覚えていたのですが、先日カフェに行ったら、そのおじさんが書き物をせずに、優美に新聞を読んでおられました。ゆっくりと紙面をめくる手つきからは、ある種の開放感すら漂います。
ああ、脱稿されてしまったのですね……、私はまだなのに……。
と、若干置いていかれてしまった気分を味わいました。逆恨みならぬ逆疎外感です。いちゃもん以外の何ものでもありませんが、そんなことを考えている暇があるなら、少しでも自分の原稿を前に進めた方がよいことは確かです。
〜〜〜教養について〜〜〜
教養の定義や、教養があるとはどういうことかははっきりわかりませんが、それでも私が誰かに対して「あの人は教養がある」という表現を使いたくなるときの心象、つまり「あの人は頭が良い」でも「あの人は知識がある」でもなく、教養という言葉を選択したくなる状況には、独特の感覚があるように思います。
言い換えれば、優れたデータベースと教養との間に、何かしら決定的な差異があるのではないか、と感じるわけです。
もちろん知識をたくさん有していることは、教養の前提条件ではあるでしょう。しかし、知識があれば教養があると言えるかというとやや微妙です。それならば、クイズ王がナンバーワン教養人間になりますが、そういう人たちに対して「あの人は教養がある」と言いたくなるかというと、必ずしもそうではありません。
で、少し思いついたのが、「知らないものへの想像力」です。
教養がある人は、自らが知らないものに対する姿勢が、他とは違っているのではないか。一番ありがちな「自分が知っているもの」に自己解釈して納得してしまうのではなく、興味関心を持たずに無視してしまうのではなく、ある種の想像力を持ってその対象に接することができるのではないか。そんな予感があります。
〜〜〜Q〜〜〜
さて、今週のQ(キュー)です。正解のない単なる問いかけなので、頭のストレッチ代わりにでも考えてみてください。
Q. 作業に行き詰まったときの対処法はお持ちですか。それはどのようなものですか。
では、メルマガ本編をスタートしましょう。
今週は通常のアラカルト方式に戻りますが、「ツール移行のタイミング」がややボリュームがあるので連載は一つ少なくなっております。目次は以下の通り。
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2018/06/18 第401号の目次
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○「仕事終わりもメモをする」 #メモから始める仕事術
タスク管理を掘り下げていく企画。メモを起点にした仕事術の紹介です。
○「不機嫌罪」 #ショートショート
読み切りのショートショートです。
○「一つ上のレイヤーに手を伸ばす」 #情報摂取の作法
情報摂取における重要な点を確認しています。
○「ツール移行のタイミング」 #知的生産の技術
物を書くことや考えることについてのエッセイです。今回はご質問への回答です。
※質問、ツッコミ、要望、etc.お待ちしております。
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○「仕事終わりもメモをする」 #メモから始める仕事術
前回は、作業を始める前・作業中・作業後にメモを書く話を紹介しました。
そうしたメモは、簡素ながらも自分への引き継ぎメモとなり、次回作業に取りかかる際に大いに活躍してくれます。一人ではなく、複数の自分で仕事に立ち向かうようなアプローチです。
今回は、そのお話の続きです。
〜〜〜合間のメモ〜〜〜
作業と作業の合間にも、何か思いつくことがあるかもしれません。それもしっかりメモしましょう。
思いつくことはさまざまあるでしょう。次に迫っている作業について、先ほど終わった作業について、まったく関係ない作業について、作業とはまるで関係がない思いつき。それらも書き留めておきます。
この場合も、問題になるのはメモを書く場所です。作業をしていないのですから、作業に関するファイルは開かれていません。では、どこに書けばいいのか。面倒でなければ、もちろん作業ファイルを開けばいいのですが、たいていそこまでの行動はとりません。また、作業に関連しないメモもあります。よって、どこか書く場所が必要です。
場所は二つイメージできます。一つは、総合的なメモの保管場所です。「どんなものであれ、メモはここに置いておく」と決めておけば、書かれるメモの属性について考慮する必要はなくなります。一元管理の優位性です。
しかし、そこに置かれたメモは、「処理」されない限り、適切な作業ファイルには配置されません。よって、このことから、「inbox処理」の必要性が演算されます。総合的なメモの保管場所(≒inbox)と、その中身の処理は一対の存在なのです。むしろ、メモの綜合保管場所なるものを設定したら、その処理が必然的に要求されることになる、と言えるかもしれません。
〜〜〜ワンディボックス〜〜〜
メモを書いておくもう一つの場所は、「デイリーノート」です。
一番わかりやすいのは、「手帳のその日のページ(あるいは欄)」だと思いますが、手帳などまったく使ったことがないデジタルネイティブな方もいらっしゃるかもしれないので、「その日に参照する情報をまとめたページ」くらいの抽象的な表現にしておきましょう。
一日のメモだけを集めた場所を作ってもいいですし、一日のタスクリストを作っているなら、そのツールに一緒に書き込んでもいいでしょう。
そのページは、日中参照することになるので、「思いついた時点よりも後の時間で実施する作業に関するメモ」を書き込んでおいても、きちんとリマインダーとして機能します。「今日書いたメモを、今日使う」という状況に限っては、inboxの処理のような作業を必要としません。
もちろん、その日に使わないメモに関しては「処理」が必要ですが、それは一日の終わりにでもまとめてやるか、次の日に「昨日のメモ」を見返しながら「処理」してもよいでしょう。
〜〜〜置き場所場所による差異〜〜〜
「メモの綜合保管場所」でも「デイリーノート」でもどちらでも構いません。このどちらかがあれば、作業に関係ないメモがあっても、うまく受け止められるようになります。
ただし、「その日に使うメモ」に関しては注意が必要です。綜合メモ保管場所に送るだけ送って、メモを書いたことをすっかり忘れてしまう、ということも充分にありえますので、定期的にinboxを処理するか、あるいは常にinboxが目に入るようにして、必要な情報を見落とさない工夫が必要です。
デイリーノートに関しては、その日に使うメモに関しては簡単に回りますが、「いつ使うのかわからないメモ」の扱いが難しくなります。綜合メモ保管場所であれば、「未処理」のメモはそこに残るので、「いつ使うのかわからないメモ」であっても再び目に入る可能性が残りますが、デイリーノートでは過去の日付のものはほとんど参照されなくなります。もし適切な処理がなされなければ、メモが「置き去り」にされてしまうでしょう。
よって、デイリーノート式のメモの場合は、扱いがよくわからない(≒決めきれない)メモを保存するためのリストを別に作る必要が出てきます。
〜〜〜さいごに〜〜〜
もちろん、両方の置き場所を使うこともできます。多少使い分けは難しいかもしれませんが、基本はどちらかに置き、その補佐としてもう一つの場所を使う、というやり方は可能でしょう。
どちらにせよ、発生したメモがどのように扱われ、どんな流れを辿るかをイメージしておくことが肝要です。
・その日のメモは見逃されないか
・メモは置き去りにされないか
この点にさえ注意すれば、メモの動きは随分とよくなります。
〜〜〜編集後記〜〜〜
少し難しい書き方をしているかもしれませんが、ここでやろうとしていることは、完成されたシステムからトップダウンにその装置を記述することではなく、メモを適切に管理するためにはどのような装置が必要になるかというボトムアップ的な議論の積み重ねによりシステムを記述することです。
このアプローチを取ることで、応用の効く方法論が提示できるような気がします。
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