『揚げて炙ってわかるコンピュータのしくみ』レビュー
『揚げて炙ってわかるコンピュータのしくみ』
秋田純一(著)
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ごめんなさい、またネタで買いましたw
が、この本もまた(失礼ながら)ネタ本かと思いきや、どうしてどうして、しっかり「コンピュータのしくみ」についての理解を深められる、優秀な学習書になっています。
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冒頭、「はじめに」で、1977年に作られた教育映画 ”Powers of Ten” が紹介されます。(これがCG使わないで作られてるところがまたスゴイのですが、まあ、それは余談)
↑未見の方はぜひ見てみて!
10のべき乗でどんどん視点が遠くなり、その分視野が広がり、銀河系や宇宙の構造まで見た後に、今度はどんどん視点が近くなり、原子の構造にまで到達する、トータルで10の40乗のスケールに至る旅の映像です。
(また余談ですけど、こういうのが1970年代に作れる、作られるってのいうのがホント裏山しい、、昨日の記事じゃないですけど、今のCG技術でスクロールホイールでぐりぐりみたいなあとつい思っちゃいますねw)
著者の秋田先生は、今やブラックボックスになってしまっているコンピューターの内部構造への旅を、この ”Powers of Ten” 風に拡大縮小して見ていけるように、この本を書いたと言います。
そうして、まずソフトウェア方面を解説します。
ユーザーの操作がどうやってコンピュータの内部へ降りていくのか。Webページの表示や通信の仕方、そしてOSやアプリケーションの構造、コンピュータ内部での情報伝達の階層、動作の抽象化レベル等を解説、ソフトウェアという概念の世界から、どんどん低いレベルへ(コンピュータ界で低レベルとはハードウェアに近いという意味です)向かいます。
そして到達した物理編。ハードウェア世界の旅は、物理も物理(笑)、原子からはじまります。コンピュータの最小単位のトランジスタ、P型、N型の半導体、論理回路の構造、集積回路、演算回路からCPUへと進み、実際的なコンピュータの構造といったところまで、丁寧に説明されていきます。
そして、本命の第4章。ブラックボックスになってしまっているコンピュータの内部を、ほんとうに、その目で見てしまおう。
あの、CPUや半導体チップを覆っている黒いプラスチックを炙って炭化させ、チップをむき出しにして、厳重な黒衣に隠されたコンピュータの内側の本当の姿を赤裸々にあばいてしまおうというわけ。エロイですね!
この、揚げかたや、炙りかたも、「どこのご家庭にもある」鍋や油などをつかって、(よいこは真似してはいけない気もしますが)行っているのがミソですね。(もちろん、食品と混ざらないようにしましょうね……)
そして、実際に取り出されたチップを顕微鏡でみて観察、解析して、本当に動いていた回路の中身にたどり着くのです。
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バラシて、揚げて炙って、半導体まで到達したコンピュータ版の ”Powers of Ten” 、あの前世紀(なんですよね……)の動画のように、コンピュータの動きや構造も、つぶさにみて、確認して、物理的なモノとして、そのモノの上で動作するソフトウェアという多重構造を、実際に触れられるカタチで面白くわかりやすく解説してくれる、物理と情報の世界を橋渡して理解できる良著だとおもいます。
コンピュータの構造やハードとソフトの交点、ビットとアトムの交差点に興味のある人、危ない実験マニア、なんでも自分でやってみたい人、小さいころいろんな機械をバラバラにして元に戻せず親に怒られちゃった人などに特におすすめですww
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超余談ですが、この著者の秋田純一先生は、
↑で紹介している某マンガに登場する先生のモデルの中の人だという、もっぱら噂の人だったりします。このマンガのファンの方にもおすすめですw