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『三体』レビュー

三体ALL

『三体』Ⅰ

劉 慈欣(著) / 大森 望, 光吉 さくら, ワン チャイ(翻訳) / 立原 透耶(監修)

『三体』Ⅱ 黒暗森林(上・下)

劉 慈欣(著) / 大森 望, 立原 透耶, 上原 かおり, 泊 功(翻訳)

『三体』Ⅲ 死神永生(上・下)

劉 慈欣(著) / 大森 望・ワン チャイ・光吉さくら・泊 功(翻訳)

―――

全五冊。まるっとレビュー、ネタバレ無しでいきます。


☆ ☆

ようやく! 三体三部作完結(の日本語版)です!!

いやあ、Ⅰのころからすごいすごいを連呼していた私ですが、あらゆる部分で面白さを書くと即ネタバレになってしまいかねない酷な作りでとってもレビュアー泣かせのお話。。とりあえず完結編のⅢを読むまで書くの我慢しよう~なんて思いつつ幾霜月。
そして、ようやく! 5月25日に発売されたⅢを即ゲットして先ほど読み終わりました。めっちゃ面白くてホントに一気読みだったのです。。ううー、この面白さ伝えたい! でもネタバレはできないっ!! ということでなかなか苦しいところではありますが、ぎりぎり、ネタバレにならなそうな一部冒頭を中心に、なんとか紹介してみることにします。

第一部、いきなり冒頭、中国の黒歴史の最悪のシーンから始まります。そう、文化大革命です。
文革の渦中で、偉大な物理学者の父を惨殺され、人類世界に絶望した娘の葉 文潔(イエ・ウェンジェ)。彼女の取ったある行動が、とてつもなく過酷で、残酷で、そして壮大な物語の幕あけとなるのでした。

この、文革がいきなりドカンとでてくる。それも中国人作家の手によって。ここがまずスゴイ。まあ、中国のヒトじゃないと書けないだろうとは思いますが。でも、中国のヒトだからこそ普通書けないでしょこんなこと、って思うところをいきなりぶっ飛ばしてくるわけです、その上もう、読んでいてつらくなるほど緻密に描かれていてうわあああってかんじ。
しかし、この描写が第一部と、第三部まで続く壮大なテーマを明確にしてくれるのです。

その後、それぞれのパートで圧倒的な絶望と危機が、主人公たちの身の上と、ひいては全人類に降りかかってきます。圧倒的絶望感。いやもうこれ絶対だめでしょ! ってところまで世界全てが追い詰められる。
のですが、それが華麗なSF的なアクロバットでぎりぎりなんとか希望につながっていく……。
この、破滅一歩手前の大逆転というか、下手したら破滅の先にあるものまで無理やり手繰り寄せてくるストーリーテリングが強烈に上手い。
このサスペンス感とSF的解法がもうたまりません。
とてつもなくリードアビリティが高くて読みやすく、感情的に振り回されたあげくに綺麗な落としどころにもっていく手腕がもうすごいのなんの。
センス・オブ・ワンダーをばっちり味わえます。ここらへんの読み味は古典SFの「そうきたか!」ってのに通じるところがあって、SFファンなら嬉しすぎてもだえ苦しむ(?)に違いありませんw

もちろん、古典っぽいだけじゃなく、最新SFのあれやこれやもたっぷり充実。しっかりと現代のハードSFとしても読ませてくれます。特に第三部は(ああ、いいたいけど我慢我慢w)けっこうハードSF色が強いですが、それでもエンタメ色もばっちりあり、ドキドキハラハラは第一部や第二部以上。そして、やっぱり「そうきたか!」と言う感覚が、今度はハードな理屈として、いままで展開されて続いてきた物語全体、さらに宇宙に対して降りかかってくる、スゴイ「SF感」です。コレは、ほんとスゴイ。

さっきから凄い凄いしか言ってない気がしますが、ほんとスゴイんですから。まあ騙されたと思って読んでみてくださいましw

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2008年に本国で発売された『三体』の全訳が、米国の英語版(2014)に遅れること約10年で日本に(2019)やってきました。(ちなみに本国で2010年に発売されたⅢが、今年、2021年に日本語訳です)
だいたい10年。それだけ中国SFは先行しちゃってるんですねぇ。
あちらは国家としてSF推ししてるらしいので、なんともうらやましいかぎりなのです。

ですが、(翻訳の上手さかもしれませんが)日本人でこそわかる、嬉しいポイントも結構お話の中に編み込まれていたりします。

↑これはSFファン向けサービスなんでしょうねw。
で、こういう小ネタが沢山あるだけはないのです。
一例をあげれば、Ⅰで、「智子」という情報処理ができるAIな粒子、「智子=ちし」(ソフォン)(中国読みではヂー・ズー)というものが登場するのですが、この読み方、日本人ならやっぱり「ともこ」って読んじゃいますよね。
この日本語での読み方があきらかにネタとして扱われていて、後半にとてもとても印象的な使われ方をします。これはもう、先に訳されていた英語版ではきっと味わえなかっただろうなあと思うと、つい「やったね!」とガッツポーズ(?)したくなっちゃうところw ただ、これ以上はネタバレになるのでやめておきますw (中国語の本って、ルビはないですよね? 原書でどう表現されているか興味あるわー。いつか中国語版も読んで見たい。よめるかな?w)

あらゆる点で、これは確実にSF史に残る傑作と思います。
さきほども書きましたが、ぜえっったいに読んでソンは無いです。ちょーおすすめ。ただし、冒頭だけ読んでダメって思ったらその先は危険です。。あれから、さらにもっと、どんどん……いえ、やめておきましょう。詳しいことは、読んで見たらわかりますw

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6/2追記

6/22まで電子書籍版Ⅰ&Ⅱ半額セールですって!!

https://www.hayakawabooks.com/n/n2731f1e0ba84

早川書房さんがKindle版をなんと50%オフセール始めたそう!!
『三体』もⅠとⅡがセールにはいっちゃってます! 悔しい!(ぉぃ)

まだ購入されていなくて、電子書籍も検討されていた方には超お得ですね!

いいなあw


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