マガジンのカバー画像

らせんの本棚

231
SF、ファンタジー、実用書からマンガ、画集、絵本などなど、アトランダムに紹介するレビュー集。神楽坂らせんが読んで「グッ!」と来た本を不定期に紹介していきます。もちろんネタバレはな…
運営しているクリエイター

2020年9月の記事一覧

『メスティン自動レシピ』レビュー

『メスティン自動レシピ』メスティン愛好会/著 ◇ メスティンと言ってもアウトドアに興味のない方はご存じないかとおもいますが、長方形のアルミ製の飯盒で、ちょうど一合のお米を炊くのにピッタリのサイズになっています(大型のものもあります) ↑トランギアというメーカーの物が有名。 私も以前からキャンプで鍋や食器の代わりによく利用していたので、いまさらレシピ本を買うほどのこともないなあなんて思っておりました。 ですが、この表紙にある「自動」という文字にがぜん興味をひかれたわ

『ブラッカムの爆撃機』レビュー

『ブラッカムの爆撃機』 ~チャス・マッギルの幽霊 / ぼくを作ったものロバート・アトキンソン・ウェストール (著)/ 宮崎駿 (編) / 金原瑞人 (訳) ◇ イギリスの図書館協会CLIP(Chartered Institute of Library and Information Professionals)から贈られる児童文学の賞「カーネギー賞」を受賞している児童文学作家ロバート・ウェストール(1929-1993)の作品集です。 表題作『ブラッカムの爆撃機』

『機械より人間らしくなれるか?』レビュー

『機械より人間らしくなれるか?』  AIとの対話が、人間でいることの意味を教えてくれるブライアン・クリスチャン(著)/ 吉田晋治(訳) ◇ 数学の大天才でコンピュータの始祖ともいうべきアラン・チューリング博士が考案した、人間と(人間に模した)コンピュータAIとを判定する方法として有名なモノにチューリングテストというのがあります。 壁に仕切られた向こう側に人間と機械(コンピュータ)をおいて、壁越しに、相手が見えない状態で文字だけで会話(つまりチャット)をして、自分の話

『精霊の木』レビュー

『精霊の木』上橋菜穂子(著) ――― 《守り人》シリーズで有名な上橋菜穂子さんのデビュー作、ずっと入手困難でしたが30年ぶりに再販・文庫化されました。 作家生活30周年ということで、この本には、30年前の「初版あとがき」、15年前の「新装版あとがき」、そしてこの本用の「文庫版あとがき」の3本のあとがき、それに加えて《守り人》シリーズの担当編集者である偕成社の別府章子さんによる解説までが付いてきます。上橋菜穂子さんの歴史を知る上でとってもお得な重要資料となっていますw

『惑星カレスの魔女』レビュー

『惑星カレスの魔女』ジェイムズ・H・シュミッツ(著)/鎌田三平 (訳) ◇ 商業宇宙船の船長パウサートが仕事先でうっかり救ってしまった少女奴隷の三姉妹は、謎めいた魔法使い=超能力者ばかりが住むという惑星カレスの生まれ。 いやはや困った娘たちを助けてしまったものだと思いながらも惑星カレスにまで彼女たちを送り届け、その後地元の惑星に帰りついてみれば、なんと船長はすっかりお尋ね者になってしまっていたのでした。 知らなかったこととはいえ、惑星カレスにかかわることは彼の所属する

『揚げて炙ってわかるコンピュータのしくみ』レビュー

『揚げて炙ってわかるコンピュータのしくみ』秋田純一(著) ――― ごめんなさい、またネタで買いましたw が、この本もまた(失礼ながら)ネタ本かと思いきや、どうしてどうして、しっかり「コンピュータのしくみ」についての理解を深められる、優秀な学習書になっています。 ◇ 冒頭、「はじめに」で、1977年に作られた教育映画 ”Powers of Ten” が紹介されます。(これがCG使わないで作られてるところがまたスゴイのですが、まあ、それは余談) ↑未見の方はぜひ見

『テルジーの冒険』レビュー

『テルジーの冒険』ジェイムズ・H・シュミッツ(著)/鎌田三平 (訳) ――― 前回紹介したこちら、 『チックタックとわたし』はこのテルジーの冒険シリーズ(と言っておきましょう)の第一部。 そこから始まる天才少女の冒険物語です。 ◇ 時ははるか未来。人類は銀河に広くいきわたり、さまざまな星域を植民地にして独自の社会形態をつくっています。その星々は〈ハブ連邦〉という大きな枠組みで統治されています。この、〈ハブ連邦〉の政策は基本不干渉であって、よほど大きな(外敵の侵略

『猫は宇宙で丸くなる』レビュー

『猫は宇宙で丸くなる 猫SF傑作選』 シオドア・スタージョン (著), フリッツ・ライバー (著) , 他(著)/ 中村 融 (編集, 翻訳) ――― 猫さんとSFってめちゃくちゃ相性良いのですよねー。(ФωФ) 日本人が大好きな猫SFと言ったらやっぱりハインラインの『夏への扉』でしょうか。個人的には神林長平さんの『敵は海賊』シリーズのアプロなんかもすてがたいし、A・E・ヴァン・ボークトの『宇宙船ビーグル号の冒険』に出てくる狂暴な猫型生物クァールなんてもう最高!☆

『日本SFの臨界点[怪奇篇]』レビュー

『日本SFの臨界点[怪奇篇]』 ちまみれ家族伴名 練(編) ◇ 『日本SFの臨界点[恋愛篇]』に引き続き[怪奇篇]のレビューです。 怪奇篇と言ってもめちゃくちゃコワイというより、じんわりコワイ系が多い気がしました。SFってそういう方面にもたしかに親和性ありますよね。理屈でコワイというか、よーくかんがえてみるともしかしてコワイんじゃないのこれ。みたいなのとか。。 例によって今までアンソロジーや短編集にあまり収録されていなかった掘り出し物系の短編がごっそり入っています

『こんにちはPython』レビュー

『ゲームセンターあらしと学ぶ  プログラミング入門  まんが版 こんにちはPython』 すがや みつる(著/文) ――― ゲームセンターあらしで有名な、すがやみつる先生のコンピュータ学習マンガに『こんにちはマイコン』という名著があります。 ↑こんなの。 なんと1982年に出されたマンガだそうで、当時のマイコン少年(少女?)のバイブルだったそうです。今では学習マンガなんて普通にありますが、当時は学習マンガ自体がめずらしく、その上コンピュータの学習用のマンガなんて他に

『小公子』レビュー

『小公子』フランシス・ホジソン・バーネット(著)・川端 康成(翻訳) ――― 児童文学の古典的名作。 しかも川端康成訳!! でもって今回なんと山田章博さんの絵が表紙ですよッ! 思わず見つけて即買いですw(山田章博さん好きなんですよぉー) で、良くみたら(遅い)小野不由美さんが帯書かれてますね。 いわく、 小学生の頃はバーネットの『小公子』が異様に好きだった覚えがあります。川端康成訳の本を貰って、事あるごとに読み返していました。(中略)改めて振り返ると、小さ