
びっくりドンキーで思うこと
びっくりドンキーに行くと、おろしそバーグディッシュの150gに味噌汁というのが僕の定番。
ハンバーグを食べる時の「ほんのちょっとの罪悪感のようなもの」を、大葉と大根で帳消しに出来るような錯覚を起こす。
免罪葉と免罪根。
いや、さっぱりとした大葉と大根おろしが好きなだけだ。
刺身のツマみたいなサラダも好きだ。
胡麻の風味が効いた少し甘めのマヨネーズみたいなやつも美味しい。
10年ほど前に後輩とびっくりドンキーに食事に行った時のことを思い出した。
当時僕が付き合っていた女性も同席していたのだが、注文した品が届くまでの間、後輩が声を潜めて僕達2人に話しかける。
後輩:「〇〇さん知ってます?料理が運ばれてきた時に店員さんに向かって『ビックリしたリアクション』をすると半額になるんですよ。」
僕:「ふーん。漠然とし過ぎててよく分からん。具体的には?」
後:「例えば、届いたハンバーグを見て『わー!すごい!美味しそう!』みたいなリアクションです。半額になるのは驚きリアクションをした人の分だけです。」
僕:「それ、どこ情報?全然聞いたことないけども。」
後:「俺の同級生がびっくりドンキーで働いてるんですけど、そいつから聞きました。ネットとかに出てない情報なんで知られてないんですが、一店舗平均、年に3人くらい、やる客がいるみたいです。」
僕:「で、お前はやったことあるの?」
後:「あります!でもビックリ度が足りなくて、3割引止まりでした。」
僕:「え、芸術点みたいな考え方?そんなもん店員さんの匙加減だろ。」
後:「一応、会社として評価基準は定められてるらしいんですが、完全に社外秘で教えて貰えませんでした。」
僕:「どれだけ頼んでも半額になるってこと?それなりの単価の物もあるだろ。」
後:「デザートとアルコール類は対象外で、いわゆる食事系が半額になるらしいです。」
--ここで彼女は席を立つ。
よほど興味が無かったのか、全席禁煙の店内に設けられた「喫煙ルーム」に向かった。
煙草を吸いに行くらしい。
席には僕と後輩の2人だけ。
気にせず話を続ける。
僕:「で、今日が4月1日だから、そんなクソつまらん嘘をついてみたってことね。」
後:「バレたかー!やっぱ騙されないっすよね、〇〇さんは。最初っから目が怖かったですもん。」
僕:「いいよエイプリルフールとか。興味が無い。やるにしても、もっと本気で来いって。『びっくりドンキー』で『ビックリする』なんて安易な嘘、ダメだろ。センスがない。」
後:「ですよね、来年は頑張ります!」
僕:「いや、だからエイプリルフールとか、子どもじゃないんだから、もういいって。来年も別にやらなくていい。」
--彼女が席に戻ってきた。
テーブルには再び3人。
それから程無くしてハンバーグが運ばれて来る。
当時もやはり、おろしそバーグディッシュの150g。
もちろん味噌汁も付けた。
彼女の前にはチーズハンバーグが置かれ…
彼女:
「わー!美味しそう!思ったよりチーズ多くてビックリした!!!」(そこそこ大声)
店内全てとは言わないが、我々を中心に半径5mくらいの時間が停止した。
僕も後輩も、もちろん店員さんも動けなくなる。
彼女は時を止められるタイプのスタンド使いだったらしい。
さすがに馬鹿客集団だと思われても嫌なので、やや大きめの声で…
僕:
「やっぱチーズにすれば良かったかなー!美味しそう!!」
「普段から声がデカいカップル」を演出してみたが、時すでに遅し。
ちゃんと『見ちゃいけません』的な空気が漂っている。
作戦は大失敗だ。
小声で彼女に説明する。
僕:「ちょうどのタイミングで煙草吸いに行ったから聞き逃してるけど、あれ、嘘だから。こいつ(後輩)がここぞとばかりに言ったエイプリルフールネタだから。クソつまんないのが何よりの証拠。」
彼女:「うん、分かってるって。騙されたフリしてビックリしたら、『こいつ騙されてる』って騙せるかな、って思っただけ。」
頭がこんがらがった。
何だ、このメタ構造。
結局の所、
僕を騙そうとする後輩(失敗)
騙されたフリをする彼女(成功)
僕と後輩を騙そうとする彼女(成功)
という図式になった。
結果的に後輩の嘘は活かされ、僕は見事に騙された。
「子どもじゃないんだからエイプリルフールとかやめろよ」と言った僕だけが、一人で嘘に巻き込まれる、という話。
というような、しょうもない作り話を皆さんは信じただろうか。
…などと言えばエイプリルフールのハッシュタグも少しは活きるだろうが、僕は巧みな騙しを出来ない方なので、これは実話だ。
おろしそバーグディッシュという将来を誓った伴侶がありながら、チーズバーグディッシュに浮気した今日、唐突に思い出したエピソード。