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書籍『ネトゲ戦記』の感想

ネトゲ戦記を読了した。(2024/2/23 朝)
私には、とても面白かった


はじめに


ただ読む前に、こちらの動画観ておくべきだと私は思う。

この動画では、裁判も落ち着き、心に余裕が生まれ、少し暇になった時に、時系列順ではなく、思いついた順で、𝕏(Twitter)でポスト(ツイート)していたのが、このネトゲ戦記の始まりで、それを時系列にNoteでまとめて、さらに今回、この書籍化になった事を説明している。
私が暇空茜さんを知ったのは、「公金チューチュー」という単語が流行った去年の1月頃からなので、ネトゲ戦記の連載は知らなかったのだが、これを知っている状態で読むと、最初の方の味がしてくる。
(でも、やっぱりちょっと読み難い部分も。)

また、こちらのポストにもある通り、

本の中で自分ことを「彼」と表現している。
一律、彼としているので、自分や裁判官のセリフの中も「彼」となっていて少し読みづらさを感じた。
セリフの中は、「私」や「名字」で良いのではないかな?と思った。

第一部 ネトゲ編

私は、UOやFF11をプレイしたことがないので、注釈があることはとても助かったが、それでもよく理解できない所があった。
でも、ひとまず彼が天才的プレーヤーで人格にちょっと難ありっていうのは、凄い伝わってきた。

UO(ウルティマ オンライン)

初期段階で装備を整え「いざ!攻略!!!」となった時に、PKにやられて、初期からPKKになるも、ギルド内で羊たちに理不尽(?)に迫害され、落ち込み、PK※になったというエピソードは笑った。
※と言っても、初心者狩りPKではなく、誇り?あるPKのようだが…
ハメ殺しで、10万ゴールドのエピソードは本当に鬼畜。
(まぁそういうことを思いついちゃったらしたくなる気持ちはわかってしまうが…)

FF11(ファイナルファンタジーXI)

また、Cionというキャラがいなくなってから、1年も責任感だけでFF11を続けていたというエピソードも、彼の「彼の中の誇りのような真面目さ」が、とても良いな、と感じた。
Apos戦法という名前が勝手に付くほど、最初の討伐は衝撃的だったのだろうなと。本当に凄すぎる。

第二部 起業編

第一部や熱い第三部とは違って、さくっと終わる。理不尽を知って起業するまでの物語。
ただすべての出来事が彼の経験になっていて、それを自覚しているところに、彼の強みがあると思う。

SEGA

ゲームに関わる仕事をしよう思うと、さくっとSEGAに入社出来てしまうのは流石だな、と。
しかしSEGAは大きすぎる企業。天才を見出すことが出来ぬ無能な人事と上司がゲーム業界におけるダイヤモンドの原石の彼を手放すまでの物語
さすが大手ということだけあって、管理ツール等はしっかりしていたようだが、ヒット作を生み出すための人材を見抜けないので、衰退していくしかない。彼の企画書をゴミ箱に捨てた方は、未だにSEGAにいるのだろうか?
まぁそういう人たちが上司として居続けているのだろうな、というのは、今のSEGAのゲームを見ていれば、なんとなく想像が付く気がする。

ブラウザ三国志

lalha氏との出会い。この出会いがなければ今の彼はいなかったであろう。
それにしても30分サイクルで10分ゲーム、20分睡眠。すごいゲームライフだと思う。気持ちはわかるが、私には無理だった。3日位で寝落ちで死んで、寝すぎた後、やる気をなくすというのが、私だ笑

gloops

谷直史さんとの運命の出会い。少ない時間の面接で彼の才能に気付いた谷さんは、相当優秀だったのだろう。少なくともSEGAの無能の極みの上司なんかとは比べ物にならないくらい優秀なのは明らかだ。
とは言っても、プロデューサーとして優秀でも優秀なディレクターがいなければ、どうしようもない。
面接して彼が入社後自分の下に付いた時は、本当に嬉しかったのではないと思う。
そして野心が出来た。彼を起業すれば絶対に成功できると見えていたから。
それにしてもgloopsも愚かだ。ダイヤモンドの原石ではなく、ダイヤモンドの輝きを見せた彼を、社内規定なんていう社長や取締役なら、どうにでもできるルールに縛られて、ダイヤモンドを手放してしまうなんて…

株式会社グラニ

さて、ついに彼の起業のグラニの話。そして「神獄のヴァルハラゲート」の制作話だ。
色々とチームで作ろうとして、担当者の育成も兼ねたかったようだが、失敗した。そりゃそうだ。天才の彼という存在がいるのに、仕様面を分散したらうまくいくはずがない。天才に指摘されて落ち込む事になるのは、わかりきっていた。それを逆恨みするなんて…
いや、多分谷さんは、自分が優秀だったが故に、それ以上の存在の彼に嫉妬してしまったのだ。でも嫉妬なんて恥ずかしいことを認められるわけもなく、他人を使って彼を否定するための理由付けをしただけなのだろう。

第三部 裁判編

ここから本番である約6臆円を勝ち取る物語。彼が彼故に成し遂げられた物語。もちろんそこには相手の動きによる「運」もあっただろう。しかしその「運」を引き出せる行動は、彼にしか出来なかったのではないかと思う。

地裁

いざ裁判となった際、「谷さんのサインが震えいた」とあった通り、恐ろしく後悔したと思う。
だからなのかもしれんが、いらないことを色々と証言しすぎて、自滅の道を進んでいく。一方、彼の方は、裁判初心者ですか?と思わせるくらい最初から冷静だったようだ。もちろん付いた弁護士が優秀だったというのが大きいだろうが。
それにしても、裁判とはこうも面倒なものかと感じた。裁判官にわからせゲームとは言え、相手が好き勝手言ってくることを、誠実に対応しないといけないのは、しんどすぎる。
あと、lalha氏がカッコいい。あの貸し方は、「もし裁判に負けて返せなかったとしても、彼を恨んだり断罪したりすることはない。」という意味だと思う。
親のいいつけの本来の意味は「お金の貸し借りをすると、人は裏切ったり裏切られたりして人間関係を壊すから、するな」という意味だろう。であれば、貸し借りして例えお金が返ってこなくても、貸した相手との人間関係を壊さなければ、親の言いつけを実質的に破ったことにはならないと考えるからだ。本当にカッコいい貸し方である。

高裁

途中で約8千万円の勝訴があった事が大きく、少し心に余裕を持って戦えたことが良かったのだと思う。一方で谷さんは気が気でなかったと思う。訴訟時点の価値を未来の出来事で下げようと必死になった故に、負けた際にきっちりお金を支払うことになる。ここらへんは、彼が彼の力で引き当てた運とも言うべき出来事だったと思う。
それにしても3臆円の和解案を蹴った所が、本当に彼が彼らしい所だ。
私にはわからないが、そうしないと彼が彼で居られなくなるというのは、ここまで読んでくると、なんとなくわかる気がする。
そして4臆5千万円の和解も当然「馬鹿め」で蹴り飛ばす。
彼はお金より「判決が観たい」のだ。だから強い。資本主義の拝金主義な世の中で、優秀だがそこに囚われていた谷さんに、この自分を持っている彼に勝てる要素など有りはしなかった事が如実に物語っていると思う。

最高裁

さぁ、本番だぁ!と読み始める時は思っていた「最高裁」の話。さくっと終わる。何もない。谷さんの主張は棄却され、彼の方だけ取り上げたものの最終的に何もなかった。というお話。日本は実質二審制というのも知らなかった私からすると衝撃的だったが、改めて冷静に考えれば、そりゃそうだな、と。高裁までで事実関係は終わり、最高裁は法的な解釈のみの再審。
特に死ぬまで関わることはない話だと思うが、それでもやはりこういう話は面白い。

おわりに

ある天才の人物の成長物語。なんとも楽しく読ませていただいた。
現在、彼は作家であることが楽しいようで、創作物語をポストしているが、このまま作家になるか、飽きるのか、それを観ているだけでも楽しい。
それにしても、谷さんは本当に勿体ないことをしたと思う。でもおそらく仕方がなかったのだろう。優秀な自分に気付いて、それが自己肯定となり、優秀なディレクターというパートナーがいなくて社内で燻っていた所に天才が現れてしまったのだから。
自分の今までの自己肯定を、否定すらさせられてしまう存在が眼の前に出てきてしまったのだ。もちろんそれは、彼が望んで自ら引き入れたものだとしても、自分の平穏を脅かす「敵」に見えてしまえば排除しなければ、精神が持たなかった。そういうことだと思う。

番外編ポスト

このポストは番外エピソードを綴っている。

ネトゲ戦記 「乾杯」
GREEから求められたわけではなく、単にGREEから補助された金も尽きるかもしれないから、ということでヴァルハラゲートのリリース日は1月25日に決まった。その少し前、正月明けに出社した彼は、谷直史さんに呼び出されて近くの喫茶店に2人で行った。
相川雄太と谷直史さんの2人がたまに、その喫茶店を会議室にして打ち合わせをしてくると言っていなくなるのは見かけていたが、他の客もいる喫茶店だし、彼は使ったことがほぼなかった。当時はコーヒーが嫌いで、福利厚生に彼が用意した野菜生活とエナドリしか飲んでいなかった。
なんすか?と彼が不服そうに聞くと(たしかレイドを巻き取った事で忙しさの頂点に居た)谷直史さんは「今まで給料を出せなくてすまなかった、リリースも今月する事だし、ここで水原君を取締役にしたいと思う」と。彼は「はぁそうスカ」とだけ答えた。
谷直史さんは続けて言った「それともう一つ相談なんだけど、福ちゃんもいいかな?福ちゃんを取締役にしたらみんなも不満がないと思うんだ」「はぁ?給料出せるならいいんじゃないすか?他のメンバーは給料でないんすか?」「それも出せる範囲で、安いけど出そうと思う」
こうして彼は取締役になった。一応、帰ってからAmazonで「取締役、執行役員の心得」という本を買っておいたが、落ち着くまで読めなかった。この本は、後に新社屋への引っ越し作業で全員休みになった日に読み、新社屋での仕事に備えた。
当時、ゲームの課金者はガラケーの携帯払いユーザーが多く、その使用額がリセットされる日が1日だったので、毎月1日の課金がその月の50%を占めていた。だから目玉ガチャは必ず1日だったし、gloopsでは、毎月31日の夜中から1日の0時のタイミングでは、可能な限り全社員が会社に残り売り上げを見守った。
ヴァルハラゲートの運命は、グラニの運命は、2月1日にどれだけ売れるかでハッキリとわかる。1月25日のリリースは無理矢理で、できてない機能は将来こんなすごいことになるよ!の予告に差し替えて、間に合う妥協版での実装をし、会社に全員で泊まり込み、本当に鉄火場で記憶も飛ぶくらい働き続けた
1月25日というのも、2月1日の前にギリギリユーザーが定着できる一週間をおいただけの日だったのだろう。谷直史さんがみんなに説明していたGREEからの超手厚いバックアップは別になかった。GREEもこの時はグラニを軽く見ていたのだろう。
そして運命の2月1日。グラニのメンバーは全員が旧社屋に集まり、固唾を飲んで見守った。0時からの1時間でどれだけの売り上げが立つか。 速報を見た1時、彼らは手を叩き合い、抱き合って大声で吠えた。そこには確実に大成功といえる、数千万円の売り上げが表示されていたからだ。
夜中の一時だけどみんなは満面の笑顔でお互いのこれまでの頑張りを讃えあい、褒め合い、これからも頑張ろうと肩と肩を組んで歌った。そこで相川雄太が、この時間にやってる店に行きましょうよ!と言ったので、調べて夜中もやっているうさんくさい寿司屋に全員でなだれ込んだ。
偶然にも徒歩2分のところに夜中もやってる寿司屋があり、そこで出禁になってもおかしくない勢いで飲み散らかした。谷直史さんは何故か大声では騒がず、静かに飲んでいたので、彼は肩をバンバン叩いて「もっと飲みましょうよ!」と発破をかけた
何時まで飲んだかは覚えてない。とにかく、みんなで成功の美酒を味わった。水原さん、俺たちは賭けに勝った、勝ったんだよねと福永が聞いてきたので、そうだよ!とかれは抱き合って答えた。グラニを立ち上げて良かったと、この仲間とやってきて良かったと思えた夜だった。

おしまい

ちなみに、はじまりの日は、この1ヶ月後、3/1の売り上げを見守って、そのあと引っ越しで休みにして、新社屋に出社した3/2ですね。 谷さんは2/1のさらに倍くらいになってた3/1の売り上げを見て決めたんでしょう。

ネトゲ戦記 「乾杯②」
ヴァルハラゲートは、リリース後ドタバタしてはいたものの、すこぶる順調だった。gloopsではフロントエンジニアだったけど、立候補して技術書を片手にサーバサイドエンジニアになった担当者は、嬉しそうな奇声をあげながら膨大なユーザ数をさばいていた。
彼もこの成功の余韻を噛み締めながら、ヴァルハラゲートがグラニの成長とイコールなので、どこまで伸ばせるか夢を見るようになった。成功が確信できたから、ヴァルハラゲートで今後試したい新しい施策を書き出して、それぞれ軽く検討して仕様を切るなどしていた。
ヴァルハラゲートの初月の売り上げはGREEにおける青天の霹靂のようなものだったらしい。谷直史さんは、「GREEにはgloopsのようなギラギラした会社がない、だからきっと俺らが作る"面白い"ゲームがリリースされれば勝てる」と夜中に呟いていたことがあった。その時会社には彼と谷さんしかいなかった。
彼は仕事に集中していたし、一応顔を上げて谷さんの方を見たけれど、こちらを向いて話してるわけではなく、画面をにらみながら呟いてるので、独り言だろうと思ってまた仕事に戻った。
社内の空気は最高だった。みんなことあるごとにハイタッチしてウェーイ!と叫ぶし、なにかコードを実装する度にイイね!さすが!と褒め言葉が飛び交った。リリース前の鉄火場に比べればマシにはなったものの、どブラックな労働環境だったが、誰1人として苦痛に思っていなかった。働くのが楽しかった。
狭苦しい旧社屋だったが、大成功が確定したことで、新しくきちんとしたオフィスに引っ越しすることも発表された。またお祭り騒ぎだった。この狭苦しい、愛らしい、ブレーカーの限界でエアコンが使えないオフィスともお別れか、と手すりを撫でた。オフィスは谷さんと相川で決めてきたようだった。
みんなで旧社屋に対する不満を口々に言い合った。野良猫が猫の額のような庭にフンをしにくるから臭すぎて窓を開けられなかったこと。だから焼いたスルメの匂いが室内にこもったこと。泊まり込んだエンジニアが1階にある風呂を使う羽目になったこと。合鍵は彼と谷さんの2人で管理していたと思う。
そして、GREEの担当役員と担当部署がグラニの成功を祝う祝賀会を開きたいと言っている、と告げた時には皆有頂天になった。Mobageと覇を競うGREEはグラニを認めたのだ。みんなで、どんな高いもの食えるんスカ!!!!たはしゃいだ。
実際は、急に取れるだけのような、普通の、少しお高いだけの、六本木ではつまらない店だった。その祝賀会の席には、GREEの担当役員と、担当部署の5人?だったかな。が参加していた。そういえば、2月にGREEから打ち合わせの呼び出しも受けたが、何故か彼は外されていた。入倉が代わりに参加していた。
流石に、何故全体を把握している自分ではなく、入倉が行くのか分からなかったので、何故入倉が?と聞いたら、「水原くんはこういうの苦手じゃん?別に何か詰めるとかはおれがやるからさ」と谷さんが言うので、はあ、そうスカと彼は気にしないことにした
GREEとの宴会では、担当(と言っても会った事あるのは谷さん、相川、入倉だけだった)の5人が、今日はグラニの皆さんにお伝えしたいことがあります!と宣言し、Yシャツを脱ぐと、下には「I♡grani」という安っぽい揃いのTシャツが仕込んであった。その安っぽい歓待に、皆酔いしれた。
宴会の場で、谷さんと相川と入倉以外のメンバーは、GREEの担当に褒められた時に、この会社は水原さんのおかげで成功した、というような事を口々に言った。彼は「いや皆んなのおかげだよね、まあ俺がすごいのは事実だけどね」と言った。福永が「これがなければ完璧!」と合いの手を入れ、皆で爆笑した。
この飲み会の時、谷さんや相川や入倉が何か発言をしたのか思い出せない。何か発言していた印象がない。うろ覚えだが、何故か隅の方の席で静かに飲んでいたように思う。今思い出そうとして、やっと朧げに思い出せた。

おしまい

俺は後から思い返して、この辺が追い出された理由かなあとは思った でもそれを自分で言うのが悲しくて、lalhaさんにも話していなかった。

つまり、誰にも話せなかった。

それを、本という形にできたら、こうして全世界にツイートできるようになった。 本にしてくれた担当氏に感謝である

上記ポスト

どうしてこんな楽しかったはずのチームで…
人の嫉妬とは、本当に愚かで怖いものだと思う。
自分を客観視(メタ視点)することを常に心掛けようと、改めて思った。

ネトゲ戦記ネタバレトークショー

本を読み終わったら、こちらも観ておきたい動画。

トークも面白いよね。まぁ受け付けられないって人もいるだろうけど、受け入れた方が、楽しくなくるから受け入れられるくらいの心の余裕を持った方が、これからの人生も楽になると思う。

𝕏上では、暇空茜さんにブロックされている私だけど、これからも私のような凡人にもわかりやすく物事を伝えてくれる彼を、私は見守っていきたい。
WBPC問題や外伝認知プロファイリングも、傍観者としている場合は、本当に楽しいので。どこまでも凡人の私には…

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