松本 俊彦「誰がために医師はいる――クスリとヒトの現代論」
Page-turnerである。シンプルにお勧め。
タイミング良くこちらの記事を読んだ。
なんだBuzzfeedか、とか言わないこと。
松本先生の本から、依存症全般についての主張を引っ張ってくる。
・依存症は疾患である、なので必要なのは刑罰ではなく治療である ← わかる
・依存症は快楽の追求よりは苦痛の軽減目的が背後にある ← わかる
・依存症の背景にトラウマがある ← わかる
・覚せい剤や麻薬などで「依存」に陥るのはごく一部のユーザーである ← わかる
それらを踏まえてなお、日本の薬物依存症への無知・無理解〔依存症からの回復者への偏見〕が、薬物依存症への一次予防となっている可能性は否めないと思った。大麻所持罪(笑)て。なにそれひどい。
但し、最大・最悪の健康被害をもたらす依存性薬物「アルコール」がほぼ野放しであり、社会全体でのトータルコストがどのように動くかについては評価困難であると思った。
そして、何故野放しになっているのか、という社会背景も考えると、松本先生が一部踏み込みすぎた発言でフルボッコになっている理由がわかる。理由がわかっても解決策ないんだけどね。無いです。これは単に装いを変えたジン横丁だから。コンビニの横道に入ると…
こうなっているのが………
こう見えている、だけ。
「カナダ、チェコスロバキア、フランス、ハンガリー、スウェーデン、米国、フィンランドをはじめとする多くの国において、国内のアルコール消費量と男性の自殺死亡率とのあいだには有意な相関関係がある。」
—『誰がために医師はいる――クスリとヒトの現代論』松本俊彦著
https://a.co/doCNc77
米国で「医原性パンデミック」になっているオピオイド乱用やdrug seeking behaviorが、米国よりユルーくトラマドールとか処方できてしまう日本であまり問題にならないのは、さすがに人種差があるんじゃないか〔刺激・報酬系の差異〕と思っている。日本ではこのように症例報告されているが、米国ではどうなんだろう。よくある話?
冒頭の本に戻ると、この本の面白いところは、精神科医の専門としてはマイノリティに属する「依存症診療」を、松本先生が(多くは偶然の導きによって)「選び取っていく」過程にあると感じたが、それ以前に、何故「精神科医」となったかについての来し方を振り返る部分が出色である。
「それはつまり……」と、私は頭のなかで言葉を探った。 「つまり、内因性、心因性、脳器質性という三つの精神障害ということですか?」 すると、指導医は鼻から煙草の煙を噴き出しながら、首を横に振った。 「そうじゃない。泣き言と戯言と寝言、その三つだ」」
—『誰がために医師はいる――クスリとヒトの現代論』松本俊彦著
https://a.co/29ep5Wi
もっと色々書きたい(研修医時代、リタリン中毒患者を夜間救急外来で診療したときの苦い経験など)けれど、時間の制約のため本日の #クソ日記 おしまい。
なお、記事に付した写真から推測されるように、僕自身はラーメンなどの炭水化物とカフェインの中毒であることを認めざるを得ない。