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本当に「FIRE」が最終目的でいいの? 【感想】【『Phantom』羽田 圭介】

こんにちは、らるです。

先日、友人に勧められて
こちらの本を読みました。

あらすじは↓です。

外資系食料品メーカーの事務職として働く元地下アイドルの華美は、
生活費を切り詰め株に投資することで、
給与収入と同じ配当を生む分身(システム)の構築を目論んでいる。
恋人の直幸は「使わないお金は死んでいる」と華美を笑うが、
とある人物率いるオンラインコミュニティ活動にのめり込んでゆく。
そのアップデートされた物々交換の世界は、
マネーゲームに明け暮れる現代の金融システムを乗り越えゆくのだ、と。

やがて会員たちと集団生活を始めた直幸を取り戻すべく、
華美は《分身》の力を使おうとするのだが……。
金に近づけば、死に近づく。
高度に発達した資本主義、その欠陥を衝くように生まれる新たな幻影。
羽田圭介の新たな代表作。

https://www.amazon.co.jp/Phantom-%E7%BE%BD%E7%94%B0-%E5%9C%AD%E4%BB%8B/dp/4163913971

情報が過多な感じですが

「節約して長期投資で配当金生活目指す主人公」
を軸にして、様々な観点から
「お金じゃない」価値観を問うていく作品

になっていました。

あらすじに書かれているのは
この本の中のメインストーリーですが
サブで様々な考え方をもった人物との
話が展開されていくのが特徴的だなぁ、と
感じました。


本当に「FIRE」が最終目的でいいの?

先ほど書いたとおり
主人公は長期投資メインで
配当金で年収分を賄うこと目標
にしています。

32歳で1800万円の資産を積み上げているようで
立派だなぁ…と思うのですが
その反面で失っているものもあるわけです。

例えば

自分は約一万三〇〇〇円をケチったあまりに、友人たちからの信頼を失ったと華美は思った。毎年楽しみにしているバーベキューに、来年は誘ってもらえるだろうか。

羽田 圭介. Phantom ファントム (文春文庫) (p.24). 文藝春秋. Kindle 版.

主人公は、結婚式二次会への参加を
「お金がもったいないから」とケチったせいで
楽しみにしていた「友人間のバーベキュー」に
誘われなくなってしまいました

つらいですね。


結婚式は、正直、コスパとしては
非常に悪いので、参加したくないのは
よくわかります。

(高いお金を払って、堅苦しい服を着て
呼んでくれた本人と話す時間はほとんどありません
イベントも決まりきっていて
特にお金に見合って面白いものでもありません)

ただ、そこをスルーすると、
人間関係に悪影響があるのは確か
です。

パッと見のコスパだけでなく
「長い目」で見たらどうなのか
という視点は忘れてはいけない
と思います。

結局人間は、人間関係と、健康
これらがないと幸せに生きてはいけませんから…


あとは、「FIREを達成した」として
その後どうなるのか?
 というテーマについては
このシーンが印象的でした。

 貧乏くさい。
 そう感じた華美だったが、三人それぞれの金融資産が時価総額にして一億円を超えていると聞いて、驚いた。
 一億円分以上の金融資産を手にしても、タイヤメーカーブランドの靴を履くのか。そして優待券を消化しきるために自由を奪われているようにしか見えない彼らの姿が、最近目にしたなにかに似ていると思った。
 家賃四万二〇〇〇円、と誰かが口にしたとき、華美の頭に県営住宅の光景が浮かんだ。テレビで見た、古く狭い部屋だ。たしか、夜のニュース番組で扱われていた、生活保護費受給特集で見たのだ。モザイクがかけられ声も変えられていた画面の中の受給者たちの生活と、ここにいる配当生活者たちの生活様式が、ぴたりと重ね合わさる。
 華美は愕然とした。
 ブランド品も買わず友達づきあいも制限し、分身のような配当システムを作った先に待っているのは、生活保護費受給者たちと同等レベルの配当生活だというのか。

羽田 圭介. Phantom ファントム (文春文庫) (p.69). 文藝春秋. Kindle 版.

実際の配当金生活者と対面して
主人公がどう思ったか、を語るシーンです。

一言で言えば

苦労してFIREしても、その先の生活は
 生活保護受給者と同等レベル」
…ということを目の当たりにしショックを受けている

シーンですね。

ここに関しては、色々感想が
あるところかと思いますが

私としては
「これはこれでいいんじゃないか」と
思ってしまいますね。

主人公はイヤだったようですが
ここに出てくる1億円を持ったうえで
質素な生活をしているおじいちゃんたちは
それなりに幸せそうでした。

客観的に見れば
「貧乏くさい」のかもしれませんが
どこまでの生活を求めるか、は
結局個人によってくるので

周りの目に流されずに
「自分は、どこまでの生活がしたいのか」
に合わせて、目標資産額を設定して
いけばいいのかなぁ、と。

「貧乏くさい」のが嫌なら
そうでないレベルの生活できる分の
お金を貯めないといけませんね。


というわけで、小説の紹介と感想でした。

たまにはこういう小説を読むのも面白いですね。

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