見出し画像

【競争激化中】ドラッグストア・薬局2020年度版を読んで

・はじめに

もうそろそろ、2020年度も終わりに近づいてきましたね。
コロナの影響下でどの企業も苦しんでいる状況かと思います。
もちろん、医療業界もそれなりに影響を受けているところもあると思います。

一方で、経営がうまくいっている会社も、実はあります。
とはいえ、M&Aも相変わらず加速しているのも事実なのがこの業界。

昨日、下記の記事を見かけました。

前々から、マツキヨとココカラファインの経営統合が、騒がれていましたが、やはり起きましたね。

M3.COM及びファーマシストライフにて、ランキング記事が出ていますので、これを参考資料をさせていただき、記載させていただこうと思います。
メインは、各社の決算資料を使われているようです。下記にリンクをつけておきます。
なお、M3については、リンクがつけられなかったため、google等でご閲覧ください。

卸業界も、合併が進む中、薬局・ドラッグストアもまだまだ再編が起こるかと思います。
それを踏まえて、現状の立ち位置と中小薬局の立ち位置を確認できるような記事にできればと思っています。

・2019年度 ドラッグストア売上げランキング

2919年度は、第4Qあたりでコロナの影響が出始めた頃ですが、実は、ランキング10位まで増収になっている特徴があります。
また、10社中5社が対前年度比110%以上となっています。
増収の理由として、共通される部分としては、コロナによる対策グッズの臨時売り上げ店舗の純増数があるようです。
各社、独自の戦略でも対応しており、伸びている要因は、調剤薬局併設店舗の拡大、M&Aによる利益増大及び不採算店舗の閉店(インバウンド需要終了に伴う対応等)、PB品の売上げ増、日用品販売の好調さなどが挙げられているようです。

2020年度の売り上げはまだ出ていませんが、増収になる要因として、在宅勤務に伴う自宅待機時間の増加や受診抑制に伴うセルフメディケーション等によるドラッグストアの利用が考えられます。一方、減収になる要因としては、ECによるネット利用の増大、受診抑制に伴う処方箋調剤の減少等も挙げられます。

それでは、ランキングを見てみましょう。

 1位 ウエルシアホールディングス

売上高(百万円) 868,280
 前年度比(%)  111.4
  店舗数(店)  2,012

 2位 ツルハホールディングス

売上高(百万円) 841,036
 前年度比(%)  107.5
  店舗数(店)  2,150

 3位 コスモス薬品

売上高(百万円) 684,403
 前年度比(%)  112.0
  店舗数(店)  1,058

 4位 マツモトキヨシホールディングス

売上高(百万円) 567,868
 前年度比(%)  102.4
  店舗数(店)  1,717

 5位 スギホールディングス

売上高(百万円) 541,964
 前年度比(%)  111.0
  店舗数(店)  1,287

 6位 サンドラッグ

売上高(百万円) 427,499
 前年度比(%)  104.0
  店舗数(店)   876

 7位 ココカラファイン

売上高(百万円) 400,645
 前年度比(%)  100.8
 店舗数(店)   1,354

 8位 クリエイトSDホールディングス

売上高(百万円) 319,588
 前年度比(%)  112.4
  店舗数(店)   855

 9位 クスリのアオキホールディングス

売上高(百万円) 300,173
 前年度比(%)  119.6
  店舗数(店)   630

 10位 カワチ薬品

売上高(百万円) 270,313
 前年度比(%)   102
 店舗数(店)    339

今回、初めに書かせていただいた、マツキヨ(4位)ココカラファイン(7位)の統合に伴い、お互いの売上高をプラスすると、968,513となります。この数字を見ればわかる通り、1位のウエルシアを抜き、統合された上記会社が、1位に躍り出ます。8位~10位の会社と比べると、売り上げの差がすでに3倍まで広がることを意味しています。
今後、上位の会社が、下位の会社をM&Aしていくことももちろん考えられると思います。

ただ、経営統合したからと言って、ディメリットも存在します。それは、文化の違いです。どの会社もそうですが、統合したからと言って、うまくいくということは決してありません。基本的には、売上高の高い会社が主導権を取っていくと思いますが、M&Aにしろ、経営統合にしろ、店舗・人材を含めた資産すべてを合わせます。
そのため、統合がうまくいくかどうかは今後にかかると思います。

・2019年度 調剤薬局売上げランキング

一方、調剤薬局のランキングを見てみることにしましょう。大手の場合は、調剤基本料に関する締め付けや基準調剤加算の廃止など、調剤薬局業界に厳しい向かい風が吹いた2018年度診療報酬改定から1年の結果が出ています。

以前の記事でも書かせていただいた通り、大手は、調剤報酬改定が行われると、そのあと対策をしっかり行い、数字をまとめてくる傾向があります。
結果として、2019年度は10社中9社が増収となっています。
増収の理由を紐解いていくと、いくつか参考になるキーがわかってきます。
加算対応(後発医薬品調剤体制加算・地域支援体制加算)・M&A対応及び基準の見直し・出店強化・オンライン診療対応(オンライン服薬指導)になります。

調剤薬局のイメージとしては、診療報酬に縛られる部分があるため、どちらかというと正攻法で攻めるイメージが強いです。
また、戦略については、かかりつけ機能と健康サポート機能を兼ね備えた「ハイブリッド型薬局」を展開している形になっています。

これは、今回の薬機法改正の地域連携薬局を見据えての動きが、すでに大手は動いていたことになると思います。自分も何度か記事で書かせていただいておりますが、健康サポート薬局制度が出てきた時から、この流れになると考えていました。
今後、地域連携薬局が、加算要件になることは間違いありません。なぜなら、地域に役立つ薬局を運営するためには、それなりのお金がかかります。そのためには、フィーをつけるのも当然の流れになるからです。

ただし、各社の売上高は伸びているとはいえ、上位10社のなかで前年度比110%以上の成長をした企業は、2位の日本調剤と4位のクオールのみです。お分かりのとおり、調剤薬局業界の財源である調剤医療費は縮小傾向であり、生存競争はいっそう厳しくなっていきそうです。

しかしながら、実は、ここに出ている会社は、事業自体も調剤一本で勝負をしている会社は案外少ないことです。自分の他の記事でも書かせていただいておりますが、様々な事業を行うことにより、事業リスクを減らしています。そのため、中小薬局の場合には、調剤一本で事業を組み立てていると思いますので、そういった部分では、経営リスクが存在します。

それでは、ランキングを見てみましょう。

 1位 アインホールディングス

売上高(百万円) 263,750
 前年度比(%)  107.7
  店舗数(店)   1,088

 2位 日本調剤

売上高(百万円) 231,001
 前年度比(%)  110.7
  店舗数(店)   650

 3位 クラフト株式会社

売上高(百万円) 193,700
 前年度比(%)   ?(非上場のため調査不可)
  店舗数(店)  1002

 4位 クオール

売上高(百万円) 153,221
 前年度比(%)  114.2
  店舗数(店)   805

 5位 メディカルシステムネットワーク

売上高(百万円)  99,617
 前年度比(%)    109.8
  店舗数(店)    416

 6位 スズケン

売上高(百万円)   96,439
 前年度比(%)  101.9
  店舗数(店)     375

 7位 東邦ホールディングス

売上高(百万円)   96,124
 前年度比(%)   103.1
  店舗数(店)      778

 8位 トーカイ

売上高(百万円)   45,053
 前年度比(%)  107.7 
  店舗数(店)    133

 9位 ファーマライズホールディングス

売上高(百万円)   40,417
 前年度比(%)    99.5 
    店舗数(店)     294

 10位 シップヘルスケアホールディングス

売上高(百万円)   27,050
 前年度比(%)  105.7 
  店舗数(店)    100

 11位 メディカル一光

売上高(百万円)  22,898
 前年度比(%)    102.0
  店舗数(店)    93

(参考) 総合メディカル(非上場のため非開示)

売上高(百万円)  ?
 前年度比(%)     ?
  店舗数(店)  735

見ていただければわかりますが、1位と11位の差が、10倍以上あります。もちろん、店舗数の違いも見受けられます。ドラッグより格差が大きいことがわかると思います。
昔は、調剤薬局大手5社と言われていたのが、売り上げ順に、アイン・日本調剤・クラフト・総合メディカル・メディカル一光と言われていました。
クオールやメディカルシステムネットワークなどが少しずつ頭角を現しつつあります。しかしながら、売上や戦略を見せない等のために、上場を取りやめたり、非上場にする会社もあります。

最近の調剤報酬改定では、地域におけるかかりつけ機能に応じた適切な評価対物業務から対人業務への構造的な転換を推進することを目的として評価の重点化と適正化が行われています。
そのため、大手調剤薬局では「かかりつけ薬剤師・薬局」としての機能を発揮するべく、
・地域医療連携
・お薬手帳等を活用した薬剤に関する情報の一元的・継続的な把握
・それに基づく薬学的管理・指導の強化
・ジェネリック医薬品の使用促進
・ICTの活用や機械化の推進

などに取り組んでいくことになると思います。

・調剤薬局業界

平成30年度の厚生労働省のによると、調剤医療費は約7兆4,279億円薬局数は5万9,613件(2020年には6万店を突破)です。
ここに挙げられた会社が市場に占める割合は、売上高としては、およそ15%店舗数としても8%ほどでしかありません。
したがって、調剤薬局の大半は、中小薬局がメインとなっています。

しかしながら、大手チェーン薬局は、新規出店やM&Aによる拡大戦略を継続しています。この背景として、中小薬局の経営者が、後継者不足や経営不振により、譲渡をしているのが見て取れます。
今回のコロナ禍を受けて、各社が積極的に拡大していくのか、それとも選別してM&A対応するのか、医療モールなど収益の取りやすい新規出店のみの対応とするのか、各社の特徴が表れた様々な戦略がでてくると思います。

・自分からの意見及びアドバイス

ドラッグストア業界と比較すると、調剤薬局の売上高・店舗数ともに、市場の占有率はまだまだ低い状況です。

また、ドラッグストアの売上げ1位と調剤薬局の売上げ1位を見ればわかる通り、3倍近くの開きがあります。また、調剤薬局1位とドラッグストア10位の売上げが同じくらいであることから、ドラッグストアのポテンシャルもまだまだあります。

調剤薬局の売上げは、利益率が高いといわれています。皆さんもご存じの通り、調剤料・技術料は純利であり、プラス薬価差益もあります。
それなのに、中小薬局の経営が厳しいという意見が多い一つに、加算対応をしっかりできなていない現状があります。
ただ、上記のランキングを見ればわかる通り、国が大手への診療報酬抑制をかけているにもかかわらず、ほとんどの薬局が増収になっています。

と言うことは、中小薬局のやり方が悪いということに他なりません。
大手調剤薬局もドラッグストアも、調剤は安定した収入であることはわかっていますので、どんどん切り込んで攻めてきます。
国民皆保険制度があり、保険システムは国が作っている以上、国に守られています。こういった状況を分かった上で、自店舗ごとに対策をとらなければ、いずれは飲み込まれてしまうことは言うまでもありません。

意外かもしれませんが、実は、個人的には、大手より中小薬局の方がチャンスがあると考えています。理由はいくつかあります。
①加算対応すれば、収益が見込める
今までやってなかったことをやれば収益が増えることは当たり前ですよね。その代わり、やるべきことをやらずして、加算だけ算定すれば、個別指導で返金されます。きちんと組織立って行うことが大事です。
大手は、逆に、限界までやるべきことを日々やって数字を出していくので、案外、伸びしろは少ないのです。
毎日、F1のタイムアタックをしているようなものだと考えていただければいいかと思います。

②間接費が少ない
これが案外盲点な部分なのですが、大手の固定費がすごくかかっているのはご存じでしょうか?

自社ビルであれば、固定資産税、賃貸であれば、賃料はともかく、経理・総務・IT部・営業部・教育情報部など多岐にわたる間接部門があります。立地であれば、比較的交通の便がいいところに本社がおいてあります。そのため、賃料は比較的高くなります。人件費に賃料等、かかる費用はかなりの金額になります。

間接部門は、基本的には収益を生み出さないのが一般的です。(もちろん、例外(ノウハウの販売等)はあります)
一般的には、店舗が利益を生み出すので、間接部門の役割としては、店舗が売り上げを上げるためにどのようにサポートするのかを日々考えることになります。

もちろん、店舗が増えていけば、間接部門も増やさなければなりません。しかしながら、こういったジレンマがあるので、日々、店舗・間接部門問わず、様々なことにチャレンジをしていく必要があります。

一方、中小薬局では、小回りが効くので、案外、小さい組織で回すことが可能です。しかしながら、小さい組織で回すにはそれなりのノウハウがなければ、コントロールが難しいのも事実です。しかし、統制する人数も限られてくるので、逆を返せば、大手調剤薬局・ドラッグストアより、うまくいけばコントロールがしやすいし、方針転換も比較的行いやすいというメリットもあります。

大手、中小問わず、どの会社も悩みはあると思いますが、自会社における優位特性を生かせれば、実はうまくいくのではないかと思うのが、自分の率直な意見です。
(それができれば苦労はしないと思うのが、経営者であったり、役付きの方々だと思いますが・・・・・)

・最後に

今回の記事は、いつもと似ている内容になってしまいましたが、数字が書かれている部分を見て、よりリアリティに富めばいいなと思って書きました。

もちろん、医療業界以外でもどの業種も苦しんでいます。
逆に、医療業界は、他の業界に比べて比較的落ち着いている方かもしれません。
落ち着いているからこそ、医療業界は、他業種にもターゲットにされています。

できるうちにできることから始めていただければ幸いです。
少しでも自分の記事やアドバイスしたことが、皆様の役に立ち、経営の一助となれば幸いです。

もし、本当に困っている薬局があれば、下記からコンタクト下さい。問い合わせフォームも入れてあります。可能な限り、支援できたらといつも思います。

やり方が悪いのであれば、いい方向にもっていきたいですし、地域で頑張っていらっしゃる現場の方は、本当に苦労されて地域医療を支えていただいていると思います。

あらためて、本日もお読みいただきありがとうございました。

いいなと思ったら応援しよう!

Rare Pharmacist Hide / 薬局改善・革新士(Pharmacy improvement and innovation specialist)
もしよろしければサポートしていただけると幸いです。 いただいたサポート費は、活動費に充てて、 記事などで還元したいと思います。

この記事が参加している募集