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百葉の日記(筒井康隆『あるいは酒でいっぱいの海』感想)
1月22日
初めて筒井康隆のSFショートショートを読んだ。
ちょっと予想はしていたが、
人間や社会の嫌なところをこれでもかと抽出されてて笑った。
特に社会風刺としての皮肉は、星新一よりもかなり強烈だった。
例えば「九十年代安保の全学連」は、全学連が形式だけのエンタメとして残り、かつて活動していた学生達はタレント議員となってテレビ番組のような国会を開いている。
テレビ局とズブズブの政治。
これはもうほぼ現実に近い。
この物語の世界でも偏見報道や天下り制度があるんだろうな。
他にもディレクターが若い娘に枕営業を迫る「いいえ」、社長のパワハラに追い詰められ無理な過大宣伝をする製薬会社の悲劇「無限効果」など、これでもかと嫌な気持ちにさせてくる。
こういう社会風刺的なものを読むと、そうはいってもどうしようもないじゃん、なんて思う。
確かにこんな世の中嫌だけど、自分1人だけ頑張ったってどうにもならないじゃん、なんて。
そんな私にカウンターを喰らわせたのは最後の短編「睡魔のいる夏」。
事なかれ主義のままでは気づかずに緩やかな破滅に向かうぞ、と真っ直ぐ目を見つめられながら忠告を受けたようだった。
今まで毒々しいものばかりだったのに、ふいに気怠くて美しい物語。
衝撃でした。
今回初めて筒井康隆を読んだが、もっと読んでみたい。
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