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作品における世界観とは何か

創作の世界にいると「世界観が好き」「自分なりの世界観を」というような言葉をよく耳にしますよね。

でも世界観って厳密に言うとなんなの?世界観ってどうやったら出せるの?と悩んでる方もいるのではないでしょうか。

今回の記事では皆さんのそんな悩みを解消すべく、僕が考える世界観の作り方をご紹介したいと思います。

世界観とは

僕は作品作りにおける世界観とは【画面内のルール設定】のことだと思ってます。

これは絵画でも漫画でも映像作品でも、ありとあらゆる創作に通じる話です。例えばカメラマンで「この人の世界観が好き」と言われるような方の作品は、作品がそれぞれ共通するルールの元に撮影&レタッチされていたりします。

漫画を描く時にキャラクターの設定を考える場面を想像してもらうとわかりやすいかもしれません。キャラクターだけではなく、そのキャラクターがどんな世界に住んでいるか、そしてそれを作者がどう表現するかのルールまで決めるのが【世界観を作る】ということだと思います。

創作において、画面内の世界の設定までは決めるべきこととして自然に想定できてる方が多いと思うのですが、それをどんな手法で表すかのルールは意識しないとなかなか練ることができない部分かなと思います。ただ、世界観を演出する上で最も大事なフェーズがこの表現手法のルールだと思います。

一枚絵の絵画でも同じで、一つの画面の中に異なるルールの画法が混在していると鑑賞者が混乱して世界観を感じづらくなります。(コンセプト的にあえてそうしてるアートもたくさんありますが)

「この作品にはこの色は使わない」、「前後関係はアウトラインの強弱で表す」、「ひとつの画面内に○個以上のモチーフは置かない」など、作者は神の視点でどんなルールでも作ることができます。

ルールを破るような物が登場した途端、世界観は一瞬で霧散する

世界観がルール作りと説明した通り、画面内でルールが統一されてなかったり、ルールを破るものが登場したりすると、鑑賞者は一気に冷めます。

例えば映画や漫画において、この作品の世界には「お米は存在しない」という設定があるのにも関わらず、登場人物が「実るほど頭を垂れる稲穂かな」とか言い出したらめちゃくちゃ冷めるじゃないですか。

何言ってんだコイツ。ってなるじゃないですか。

ストーリーがあるような作品の中では【リアリティライン】という語られ方をすることも多いのですが、「この作品の中はここまでできる世界なんですよ」という設定を明確にすることがとても重要です。

例えば魔法使いの物語を考える時に、どんな問題でも解決できる魔法が存在したら元も子もないわけで、「この世界の魔法はここからここまでできます」という線引きが必要になります。

線引きを徹底することで「魔法だけでは解決できない問題に立ち向かっているんだな」というストーリーに説得力が生まれます。

リアリティラインの設定が緩い作品に対して、鑑賞者が「あの人がさっさとあの魔法使っちゃえば解決するのにね」と身も蓋もない感想を抱いてしまうことは珍しくありません。

鑑賞者が現実に引き戻されると「所詮つくりもの」という目線になってしまいそれ以降は作品に没入することはできなくなります。

作者はどんなルールを作ってもいいのですが、作ったルールは意識して最後まで徹底しないといけません。

自分の「好き」を元にルールを決める

このように創作物というのは作者がどんなルールでも自由に作れる分、設定に凝りすぎてルールが複雑化してしまったり、独自性を意識しすぎて過剰に奇をてらったりしてしまいがちです。

「キャラクターがこの動きをした場合、この世界ではどういう制約を受けるんだっけ?」といちいち混乱してしまうようなルール設定をしてしまうと、その後の展開の足枷になったり、ルール自体を途中で変更せざるを得なくなったりします。

ただ、あまりにも自由度が高い中ではどういうルールを選べばよいか迷ってしまい逆に手が止まる、というのは創作あるあるなので、ルール設定の際のひとつの基準として「自分が好きなものを描けるようなルールにする」というのをオススメします。

他にないようなルールで独特の雰囲気が出たとしても、自分が好きなものでないと徹底すること自体が苦痛になってしまいますからね。

設定に縛られて表現が窮屈になることを心配するより、設定が曖昧で支離滅裂な表現になってしまうことの方が恐れるべきことです。

好きなものを基準にして窮屈にならないルールを設定すると最後までルールを破らず完走しやすいです。

また、普段ルールを意識せずになんとなく好きなものを描いている方も、試しにルールを設けてみることで世界観がグッと出てくるかもしれません。

好きなものにアンテナをはろう

好きなものを軸に設定を考えて、その結果世界観が生まれると考えると、そもそも作家は自分の好きなものをよく知ってないといけません。

そして、好きな物が多ければ多いほど、引き出しが増えます。

落ち込んだ時や憂鬱な時期は好きなものなんかひとつも何も無いような気分になる時もありますよね。そんな時にもいつでも自分の好きなものを確認できるようなお気に入りフォルダをまとめておくと良いです。

自分の好きなものを知るとか、好きなデザインをスクラップして集めていくというような考えはクリエイターにとっては学校で習うような初歩中の初歩の意識ですが、大人になってからはなんとなく気になるものをスクショ撮っているだけみたいな状態になりがちなので、今改めて意識してファイリングしてみるのもおすすめですよ。

クリエイターはとにかく自分のことを知らないと作品作りがうまくいきませんからね。

がんばれ!

僕は日頃からスクショ撮りすぎてむしろ振り返りづらくなってる自分のスマホに絶望しながらがんばるぞ。

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田中ラオウ/画家
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