患者さんやお客さんのクレーム(claim)は、「苦情」ではなく「主張」?
医療機関や医療従事者に対する、患者さんやその家族のクレームは増え続けています。
患者さんや家族のクレームには、正当なクレームもあれば、患者さんや家族の思い違いによるクレームもあります。
そこで、今回は少し違った視点で、「クレーム」について考えていきたいと思います。
以前、アメリカからきたお客さんと、病院での出来事について話している時に、私が患者さんから受けたクレームについての話になりました。
そのクレームの内容とは、「受け持ちの看護師の態度が気に入らない」という内容でした。確かに、その日の受け持ちをしていた看護師さんは、表情が豊かではない人だったのですが、人間性に問題がある人ではなく、むしろ、何ごとにも一生懸命取り組む、頑張り屋さんでした。
ただ、普段から感情を表に出すことが少ないため、初めて会った人の中には、少し冷たい雰囲気を感じる人もいたようです。
そのクレームの話を、アメリカの方としていた時に、私はなんの疑いもなく「クレーム(claim)」という英語を使って説明しました。
すると、そのアメリカの方が、首をかしげて、私の話を理解できないような表情をしました。
私も、必死になって、クレームについて説明しようとして、何度も「クレーム(claim)」というフレーズを使いました。「L」の発音が悪いのかな~、と思って、発音を変えても、言ってみました。
でも結局、アメリカの方の表情は変わりませんでいた。しばらくすると、また、次の話題になって、そのクレームの話は流れてしまいました。
その後、私は、どうして「クレーム(claim)」が伝わらないかったのだろう、と気になり、英語辞書で「claim」を調べてみました。
すると、辞書に、「claim」の意味は、「主張」「請求」と書いていました。
逆に、「苦情」を調べたところ、「complaint」と書いていました。
そこで私はようやく気づきました。私がアメリカの方に話した内容は、患者さんの「complaint」であって、「claim(クレーム)」からは外れていたのです。
何気なく使っている私達の英語も、本来の意味をしっかり理解して使わないといけませんね。
また、それと同時に、私はこう思いました。
患者さんや家族が訴えるクレームは、彼らの「主張」なんだと。
「苦情」を聞くとなると、聞く方も嫌な気持ちになりますが、「主張」を聞く、と考えると少し気持ちが楽になりますね。
考え方を変えれば、自分に対するダメージも減らすこともできる。
そんなことを考えたエピソードでした。
医療現場でよく、患者さんや家族から発せられる、不平・不満・苦情は、正確には「claim」ではなく、「complaint」ですね。