炉開き①
11月に入りました。紅葉便りも出始め、秋の盛りというところでしょうか。
お茶では冬に向けて、炉という部屋の中に作られた小型の囲炉裏を使い始める時期です。旧暦亥の月亥の日に行うと言われ、今年は10月25日でした。
ただ現代では、お稽古日程の関係もあり、11月に入ったら炉開き、5月に入ったら風炉を使うというところも多いかと思います。今年なら新暦11月に入ってからの最初の亥の日である11月6日を炉開きとされているお稽古場も多いのでしょうか。
柚子の実が黄色く色付き始めたら炉開きをする、と利休さんが言ったという話があります。が、街中に住むわたしが黄色くなった柚子が売られているのをこの秋最初に見たのは5週間ほど前。当然気温などを調整した環境で出荷された柚子でしょう。また、自然の環境で育つ柚子の木は近隣には見当たりません。
もう一つ気になるのが立冬。今年は11月7日です。立冬より前に旧暦亥の月亥の日が来ていると、ちょっと落ち着かない気がします。
わたしのお稽古場は1日がお休みだったので、今年の炉のお稽古は8日から。たまたまですが、悩まないで済んですっきりした心持ちです。
亥の月、亥の日としているのは亥が五行説では水にあたり、水は火勢を調節したり、火を消すことができるので、火事にならないようにとの火伏の意味があることからきているようです。よく紙と木だけでできていると言われる日本の家。火を恐れる気持ちはとても強かったことでしょう。ちなみに亥は、本家中国では猪ではなく豚です。
今日の写真のお菓子は亥の子餅ですね。亥つながりで、子だくさんのめでたさも表す亥にあやかろうともしたのでしょう、この時期よく使われます。
コロナに翻弄されるようになってから、一旦火事になると簡単には消火できず死者も多かったであろうこと、子供の死亡率がとても高かったことなど、昔は今よりも遥かに死と身近に暮らしていたのだなぁということが沁みるようになりました。昔の人の祈りの気持ちにも思いを馳せながら、炉開きを迎えたいと思います。