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「づと」とは
秋も深まってきました。起床時間は真っ暗になり、日が落ちるのも早くなってきました。秋の日は釣瓶落としとはよく言ったものです。
和菓子屋さんでも洋菓子屋さんでも栗真っ盛り。どれを食べようか目移りしている方もいらっしゃるでしょうか。写真のお菓子は鶴屋吉信さんのもの。買おうとすると店員さんから「中に栗が入っています。」と教えていただきました。
ということで、普段はすぐ黒文字でいただくのですが、写真を撮ろうとナイフで切ってみました。すると・・・
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なんと手のこんだこと。栗も美味しい甘露煮になっています。
菓銘は「山づと」。
この時期、山づとと名付けられた和菓子をあちこちで目にします。栗が使われていることが多いですが、栗の別名ではありません。
万葉集に既に
あしひきの 山行きしかば 山人の 我れに得しめし 山づとぞこれ
(巻二十 4293 元正天皇)
などと詠まれています。
この歌の「山づと」が具体的に何を意味するかにはいくつか説があるようですが、「づと」に「土産」の字を当てるようになったようで、「山の土産」と現代語訳がつくことも多いです。ここから山の実り、山の幸と捉えて、秋の実りの時期の栗のお菓子などにも名付けられるのかと思います。
ただこの歌は天平勝宝五年(753年)の5月(旧暦です)に詠まれているのですよね。当初は、山づととは今ほど季節を限定しない言葉だったと思われます。
この「づと」を使った言葉でもう一つ「浜づと」というものもあります。
潮干なば 玉藻刈りつめ 家の妹が 浜づと乞はば 何を示さむ
(巻三 360 山部赤人)
この「浜づと」といえば全国区で有名なお菓子があります。
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亀屋則克さんの「浜土産」。季節限定で今年は終わってしまいましたが、ここはお菓子そのものだけでなく、お店の方のご対応もとても親切ですので、夏に京都にお出ましの機会があればぜひお試しを(それぞれの季節の和菓子ももちろん美味しいですよ!)。
様々な秋の山づとをお楽しみください。