蘭泥

『数行小説』 1分程度で読み終わる超ライトな超短編小説を随時執筆。 世を忍ぶ仮の姿での職業は…。 奇跡が起きて書籍化することになったら誰に帯を書いてもらおうかという妄想だけは一人前の男。

蘭泥

『数行小説』 1分程度で読み終わる超ライトな超短編小説を随時執筆。 世を忍ぶ仮の姿での職業は…。 奇跡が起きて書籍化することになったら誰に帯を書いてもらおうかという妄想だけは一人前の男。

最近の記事

『二択』

俺はいつも二択をハズすタイプの人間だ。 あの二択をハズしたことを今になって後悔している。 例えば、○×クイズは当たり前のようにハズすし、 スーパーでは自分が並んだ列じゃない方の列がスムーズに進んだり。 「この服とこの服、どっちがいい?」って彼女に聞かれ、 「こっちかな。」「いや私はこっちだわ。」的な流れはもう慣れた。 ある昼休み、普段買いだめしているカップ麺で昼食を済ます私が、 たまには気分を変えてみようと外食しに外へ出た。

    • 筆休め②

      さて恒例になりつつある筆休め、3作品ごと回顧していく感じです。 最初の3作品と比べて比較的軽い文体だったと思う。 それは少しだけ意識したのもあるし、軽い方が読まれると思ったから(笑) * 【悩み】 これは「悩みがないことが悩みです。」とのたまう友人から着想しました。 結構こういう事をいう人いませんか? それ、ホントか?強がってない?人間って悩む生き物でしょ? どんなに些細な悩みってひとつくらいはあるだろうよ、って思っていて、 そういう人ほど闇を抱えてたり、急

      • 『勘違い』

        彼の名はタブチ、超がつく程の天然で世話甲斐のある会社の後輩。 彼ほどの"逸材"は今まで見たことなく、私をいつまでも退屈させない。 ある日、営業の帰りに二人でカフェに立ち寄った時の話。 彼はコーヒーカップを持ったまま、窓の外を眺めこうつぶやいた。 「ゲッキョクさんがやってる駐車場ってどこにでもありますよね。」 …どうやら月極駐車場をゲッキョクさんが経営してる物と勘違いしてる。 「あれはゲッキョクじゃなくて『ツギギメ』

        • 『隣の客』

          『隣の客はよく柿食う客だ』 友人はその早口言葉がどうも気に食わないと言う。 なんでも、 「 誰が何を食べようが勝手だし、そもそも人の食事を見るなよ。 」 というのが友人の言い分らしい。 いや早口言葉だから、フィクションだろうよ、と思いつつも、 まぁわからないことはないかぁ、と私は頷く。 友人は納得した私の顔を見ながらビールを飲み干し、 店員に本日4杯目の生ビールと刺身五種盛りを頼んだ。

          『悩み』

          ―私はこう思う。    こういうタイプの人間が、実は一番危ういタイプであると。― ある日後輩ちゃんに「最近悩んでることある?」って聞いたら、 その後輩ちゃん、しばらく考えてからこう答えたんです。 「特にないっすねー。あ、悩みがないことが悩みかもです(笑)」 …こういう人って、たまにいません? 悩みがないことが悩み?は?なんやねんそれ。…って思うでしょ? でも、よーく考えてほしいんです。 たかが悩みがないことくらいで悩んじゃうんですよ? きっとめっちゃしょーも

          『悩み』

          筆休め その①

          出来ることなら毎日のように『数行小説』を上げたいんですが、 今後のペースのことも考えると、たまには違うことも書こうかと。 まだ始めたばかりなので、マイペースにいきますね。 今回は今まで上げた話の解説やあとがき、本当の意味など… それらをまとめて【筆休め】と題して、書いていこうかと思います。 * 【英雄】 記念すべき『数行小説』一本目。 これは今年の夏にあった、私の実話です。 あれは昼過ぎで乗客もまばらな山手線でした。 冷房が効いた車内に突然のセミ、一気に漂う緊張感。

          筆休め その①

          『ナイトパーティー』

          妖艶な美女に部屋へと案内されると、 そこには夜景に彩られた大きな窓と、豪勢な料理が広がっていた。 「好きなだけ飲んで、好きなだけ食べてね。」 そう彼女が言うもんだから、私は遠慮なくいただいた。 さらには、持ち帰り用の入れ物があるかたずねて、 図々しくも料理をたくさん詰めて、颯爽とあの部屋をあとにした。 こうやって謎の勧誘会から抜け出したのである。

          『ナイトパーティー』

          『賞味期限』

          賞味期限がとっくに切れていることを知った男、 今開けたばかりのお菓子を、食べずに捨てようとしている。 「今まで賞味期限なんて気にしてないから、切らしたんだろ?     賞味期限気にしてないタイプなら、気にせず食べんじゃね?」 私が急に投げかけた少々難解なトンチに、男はなんとなく頷いた。 そして私はそのお菓子を受け取り、得意気に頬張った。 どうしてもそのお菓子が食べたかったのだ。

          『賞味期限』

          『英雄』

          車内の静寂を、一匹の迷い蝉が切り裂いた。 乗客たちに何とも言えぬ緊張感が走る。 一人の青年がすくりと立ち上がると、 優しい掌で蝉を易々と捕まえて、窓の外へと放した。 もう一人の青年は、あの蝉がこちらに来ないことを切に祈り、 英雄の振る舞いをただただ見ていた。 自らの無力さと愚かさにハッと気付いた青年は、 それに蓋をするように、そっと目を閉じた。 降りる駅を乗り過ごした。

          『英雄』

          はじめに

          このnoteを始めた経緯から話したいと思う。 少々長文にはなるが、今後これほどの長さのものは当分書かないと思う。 緊急事態宣言―。 これ以前と以後で生活がガラリと変わった。 ほとんどの時間を家で過ごす事となる。 ドラマやお笑い番組などを観たり、YouTubeを楽しんだり。 たまには気分を変えて読書しようかなと思ってみるが、そうはいかない。 なぜなら普段読書をしないため、家に読む本がない。 お恥ずかしい話だが、話題作だろうがなんだろうが読んでこなかった。 家にある書籍と

          はじめに