見ること、在ること 小栗康平
なにかもうひとつの映画監督らしさを持った人
「泥の河」が公開されたときは作品の素晴らしさに圧倒されましたが、小栗康平監督はとてもちゃんとしたお堅い映画作家の印象があって、80年代の浮ついた雰囲気を楽しんで過ごしていた私には近寄りがたい気がしました。
当時でいうと鮮やかにデビューした村上春樹に対する佐藤泰志というか・・・あー、かえって伝わりにくいか。
しかし著作を読むと、しなやかに考え、ムダのない文章を書く、すっきりとした人物であることが伝わってきます。あくまでも個人的な感想ですけど。
裸本になっても素晴らしい装丁
装丁は司修、なにをやっても一流の人。
86年から96年に掲載された随筆集で、題材は日常生活から映画作りまで及んでいます。
島尾敏夫は「死の棘」を、大島渚からの映画化話を蹴って小栗康平にまかせたと言われていますよね。もう少し作家性を論じられても良い人のような気がします。私が知らないだけなのかもしれませんけど。
1996年の初版第一刷り。