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この手元にある「あるく みる きく」の行方はどうなっていくのだろうか?

 手元にある「あるく みる きく」の整理を始めているが、気になって開くと、ついつい読んで手が止まってしまう。

 「あるく みる きく」は宮本常一が中心となって民俗学者と学生たちが各地を歩いて調べた内容をまとめた月刊旅雑誌だ。
 近畿日本ツーリスト株式会社の日本観光文化研究所が昭和42年から昭和63年まで発刊した。
 それが手元に70~80冊あり整理している。
 民俗学の貴重な資料でもあり、また国内旅行ブームに火をつけたディスカバージャパンの時代に、レジャーとは違う旅の楽しみを教えてくれた雑誌でもある。

あるくみるきく

便利や合理の真逆にある豊かさが香り立つ雑誌。

 研究者がそれぞれのテーマを、まさに「歩く見る聞く」して自由に掘り下げた、号ごとにまるで違う多彩な内容。
 記録資料でもあり、研究発表でもあり、旅のガイドでもある奔放さが気持ち良い。
 現在の市場やコンセプトを意識し規範に沿って作られる雑誌に比べて、あれやこれや思いもよらぬ発見の楽しさに満ちている。
 このような”ある種のいい加減さ”が受け入れられたのは、作り手も読み手も実はレベルが高かったということ、文化的な豊かを示している。
 ほら雑談が出来ず無駄のない話をする奴って、かしこそうに見えて実はアレじゃん。
 この雑誌は、宮本常一ファン、民俗学研究者、昭和の日本を思い起こしたい人たちにとってはたまらない内容だ。

あるくみるきく2

 さてさて古書店主としてみた場合は、この素晴らしい雑誌をどうしたら良いものか?

 「あるく みる きく」の内容が気になるのなら農文協から「宮本常一と歩いた昭和の日本」全25巻の双書が出版されている。それを手に入れるのが良いと思う。
 雑誌として持つことに魅力を感じる人に届けたいのだが、手元にあるのは21年間のうちの7~8年分、中途半端だ。
 とはいえ個別に売ってバラバラに散逸するのは惜しい。
 これは個人の収集家や古書関係者にいつも付きまとう悩みだ。
 その真っただ中にいる。
 広い世の中には全巻保存されている人もいるだろうし、欠けた収集物を前に気張る必要がないのかもしれないが、割り切れぬ思いが消えない。

 文化の保存とそろばん勘定は仲が悪いのである。

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