『私の心はパパのもの』『彼女が結婚しない理由』 これ観てみ! 忘れられたマイナー映画たち 第12回
『私の心はパパのもの』『彼女が結婚しない理由』 (1988年/90年、日本)
監督:大林宣彦
出演:斉藤由貴、愛川欽也、石田ゆり子、岸恵子、他
今回はテレビ映画を2作。
といっても尺は1時間半以上あるし、
フィルム(なんと16ミリ)で撮影されていますし、
事前にアナウンスされなければ劇映画と言われてもわかりません(実際、92年には2作とも劇場公開されています)。
ただこの2作、ほとんどがDVDで観られる大林映画の中で、『漂流教室』などとともにまだDVD化されていない、かなりレアな作品なんです。
かつてVHSで発売されたきりです。
大林監督は『三毛猫ホームズ』シリーズも含め、キャリアの初期からテレビ映画を時々手がけていますが、
近年『可愛い悪魔』『麗猫伝説』と初期作品が相次いでDVD化され、
まだ観られないTV映画の方が少なくなってきました。
この2作には共通点がたくさんあります。
同じテレビ局の制作、脚本が岸田理生、大林組の阪本善尚が撮影を担当、
いずれも娘と片親の物語で、
『私の心はパパのもの』の娘には母親がおらず、
『彼女が結婚しない理由』の娘には父親がいません。
そしてどちらの娘にも恋人がいます。
前者は斉藤由貴、後者は石田ゆり子が娘役を演じていますが、
2人とも劇映画では大林作品のヒロインを経験していない点も共通しています。
また、脇役にお馴染みの俳優が多数登場する反面、主役の愛川欽也、岸恵子も、大林映画のイメージが全くないキャスティングでした。
ストーリーはいずれも親と娘の関係性、そして娘と恋人の関係性を軸にして、双方が絡みあう図式。
前者は愛川欽也と斉藤由貴の陽性キャラを生かし、コメディ・タッチの軽快さが前に出ています。
その意味では、後者の方がシリアスでドラマティックな内容と言えるでしょうか。
しかしやはり1時間半の尺ですので、途中で意外な展開があり、愁嘆場も盛り込まれて、見応えは十分あります。
なので、余計に映画とTVドラマの線引きをするのが(メディアの違い以外では)難しいところです。
つまり大林ファン、映画ファンにとっては、何ら劇映画と変わらない内容で、作品のクオリティも高いので、ぜひデジタル化して欲しい所。
日本特有のややこしい権利関係についてはよく知りませんが、VHSで商品化できたのならDVD、ブルーレイも難しくないと思うのですが。
最後までお読み下さり、ありがとうございました。
(見出しの写真はイメージで、映画本編の画像ではありません)