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これは怖い! おススめ短編小説・ホラー篇 第7回

レイ・ブラッドベリ 『群衆』『小さな殺人者』
(『10月はたそがれの国』 55年、宇野利泰訳、創元SF文庫)

『何かが道をやってくる』や『たんぽぽのお酒』など、
SFの叙情詩人と呼ばれたブラッドベリ。

彼が初期の頃に怪奇趣味の短篇を多く書いている事は、
ホラー・ファンの間では有名です。

私の好みとしては、前述傑作群のポエティックな美文調と較べると、
ホラー系の短篇は語り口が理屈っぽいのが少し気になりますが、発想が秀逸で、
思わず肌寒くなる恐ろしさがあって、
このテーマでは無視できません。

『群衆』は、交通事故の現場にいち早く集まってくる群衆の不気味さに目を付けた傑作。

主人公は事故に遭った事がきっかけで、
現場に群がる野次馬たちの不自然な行動が気になりはじめる。
むやみに動かしてはいけない負傷者を、
なぜか必ず動かしてしまう彼ら。
様々な事故現場の写真を調べるうち、
彼はある共通点に気が付く。

ある種の不安や強迫観念をデフォルメしたようなアイデアですが、
ブラッドベリはこれが上手く、
『小さな殺人者』でも同じ手法を用いています。

こちらは、生まれたばかりの赤ちゃんが悪意をもって親を殺害するという、
育児に伴う潜在的なストレスや不安感を極端に誇張した短篇。

分類からすると、
超自然的要素よりもサスペンスやサイコ・ホラー的な側面が強いですが、
無邪気で言葉を喋らない赤ちゃんを、
コミュニケーションの断絶した動物や人形に近い存在として描くと、
ぐっとホラー寄りになるという事でしょうか。

残念なのはいずれの作品も、
うすら寒くなるような不気味なイメージが、
理詰めのダイアローグでしばしば相殺されてしまう事。

後年のブラッドベリなら、
例の散文詩のように美しく幻想的な文体で、
もっと曖昧な雰囲気に仕上げたに違いありません。
ですが、もちろん充分に恐い短篇ですから、
お薦めさせていただきます。

最後までお読み下さり、ありがとうございました。

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