人気バンドの感動ドタバタ劇|横関大/グッバイ・ヒーロー
ビーチの伝説
大学のゼミでフィールドワークなるものを
行ったことがあります。
サーフィンのメッカと呼ばれる海辺の街に泊まり、
サーファーへインタビューするのです。
どんなテーマだったかはもう忘れてしまいました。
でも当時、僕が提案して却下されたテーマの方は
今も覚えています。
「ビーチの伝説」
そのビーチのローカルたちの間に伝わる
ビックウェーブやサーファーの伝説を拾い集め、
その伝説の真偽を明らかにする。
その中でその伝説の裏に隠された人々の夢や希望、
欲しているものの姿をとらえる。
なんて意気込んでいたのですが、
映画の見すぎ、小説の読みすぎと一蹴されました。
もっときちんと科学的分析ができるものじゃないと、
数値に落とし込めるものじゃないとダメと。
今考えると、その通りだなあと思います。
でも、面白いテーマだと個人的には思います。
奇蹟や伝説の裏側にあるもの
奇蹟と呼ばれる出来事、
伝説として語り継がれる物事には、
そのコミュニティが欲する何かが
そこに含まれています。
そこに集う人々の心に訴えるもの、
価値観を象徴し魂を感じさせるもの、
自分たちの絆を高め得る何かしらがあるのです。
この物語はある奇跡と伝説の物語です。
人気ロックバンドと観客の間に起きた、
8年前の事件とライブを結ぶ奇跡と伝説です。
売れた時に真価が問われる
どんな人気者も生まれながらにして
人気者なのではありません。
程度の差はあるものの、
売れない時代を経験し、下積みを乗り越え、
人気者へと駆け上がります。
売れた後から振り返れば、
苦労でもなんでもないことでも、
売れるかどうか分からない時は不安でいっぱいです。
何が正しくて、何が正しくないのか、
何を大切にして、何はスルーしていいのか、
判断がつきません。
人気者になった途端、がらりと変わる人もいます。
今置かれている状態を当然と受け止め、
過去のことや経緯なんてすっかり忘れてしまう人。
一方で変わらない人もいます。
過去の延長線上に今を紡ぎ、
過去や経緯を大切にする人です。
人気バンドの過去
この人気バンドは良い意味でも悪い意味でも、
過去を大切にしています。
飾らない人柄のまま、
これまで大切にしてきたことを忘れません。
売れてない頃のまんま、人気者になります。
物語は売れていない頃に起きた事件を
中心に展開します。
ドタバタのシチュエーションコメディ的な
面白さです。
8年後のライブで、その伏線が回収されていきます。
人気者がこだわる様々な行いの理由を
自分は知っている!
そんなコアなファンの気分を味わえます。
横関大さんの小説はからりと明るく温かい。
それでいてホロリと来る。じーんとさせます。