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第6の味覚「おもしろ味」について思いを馳せる、未知なる食のゆるネタまとめ

「甘味・酸味・塩味・苦味・うま味」の5つが味覚の基本的な構成要素なんだそうです。これらは五味、基本味、五原味とも呼ばれるそうですが、「辛味」は入っておらず(辛さは「痛覚」に属するという考え方がある)、また、今はこの5つに入ってないものの、いずれ6番目の基本味に加わるものとして、脂肪の味、デンプンの味、そして「コク」などがあるとも言われているとか。いずれにしても、味覚の世界って案外まだ科学的に解明されてない領域が多いんですね。

で、話は飛びますが、2011年ごろにペヤングの「激辛焼きそば」がコンビニやスーパーの店頭に並び始めたとき、その規格外の辛さについて販売元のまるか食品の人が「おもしろいからやってみた」的なことを新聞のインタビューで語っており、啓示にも似た衝撃を受けた記憶があります(が、あらためて調べてみたら発見できず。夢だったのかもしれない)。

つまりなにが言いたいのかというと、わたしたちは食べ物を口にしたとき、つい「美味しかった/不味かった」という二元論に落とし込みがちですが──そしてそれは結論として間違っているわけではないのですが──そこに至るまでの過程には、5つの構成要素だけでは到底分類しきれない、細かく複雑なルートを辿って来ているのではないか、しかもその中には、通常味覚として考えられていないようなものも含まれているのではないか、ということなのです。

たとえば普段の食事している時でさえ、「目にも美味しい」「パートナーと食べる食事がいちばん」みたいなことを言ったりしますよね。あるいは、「おかわり自由」「無料で梅しそご飯に変更できます」という一文をメニューの片隅に見つけたときの、「へぇ……(嬉)」という感じ(※個人差があります)。あるいは、知り合いのいない回転寿司屋でウニだけをひたすら何貫も頼み続けてしまうような振る舞い(※目撃談です)。それらの何やかんやを引っくるめた総合的な着地点として、わたしたちは「美味しい」へと辿り着いているのではないか。生理学的な味覚反応のみならず、五感から得た情報やソーシャルな環境、シチュエーション、そして未来への期待や予感なども含めて、トータルで、「味わっている」のではないか。

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そこで提唱したいのが、「おもしろ味(あじ)」

通常ありえない食材同士のバカな組み合わせ、バカな味つけ、バカな盛り、バカなサイズ。それを見た時の「なんぞ?」という好奇心。期待感。からの、実際に食べてみて、「……マジでなんなん?」という困惑。それは文字どおり、「飲み込みづらい」かもしれない。しかし、それを「美味しい/美味しくない」と安易に腑に落とすことなく、まずは「おもしろ味」という箱に放り込むこと。それはとりもなおさず、未知のものに相対した時、既存の枠に当てはめるのではなく、新たな価値観を想像・創造するための思考訓練なのです。

おそらく、「食」という営みは、わたしたちが思っているよりずっと複雑で繊細で、豊かなもの。「おもしろ味」とはそれに気づくための新しい概念の提案です。

ということで、前書きが長くなりました。みなさんの「おもしろ味」をめぐる冒険を見ていきましょう。

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● 龍角散のど飴なめながらブリーチーズをつまむ

龍角散の薬草みの強い爽やかな甘みとブリーチーズのクリーミーな脂がマッチ! なんていうか、レアチーズケーキ食べてる時の味わいでかなり不思議です。 口に含むチーズの量で、味のバランスを調整できます🧀🌿
(「第6の味覚『おもしろ味』のレシピ募集」より)

おもしろ味の予感が濃厚に漂います。口の中に飴を入れたまま飲み物を飲んで大変なことになってしまった、という経験をした人は多いと思いますが、この人はそれを積極的に迎えに行く、言わば味覚界の名キャッチャー。危険球まで拾いに行きます。龍角散のど飴とブリーチーズ、どちらもそこそこ癖の強い、しかしそれでいてちょっといい感じになるのでは? と思わせる絶妙な組み合わせがまた、何かの上級者という感じがします。

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● 中華風パスタ

ラーメン的なちょこっと甘めの麺類が食べたい…と思ったのにパスタしかなかったので、ごま油たっぷりの野菜炒めに生姜と醤油で味付けしたものをパスタに絡めて食べました! 味はマズくないですがこれじゃない感高めです。フロンティア精神を育むことができます🌱
(「第6の味覚『おもしろ味』のレシピ募集」より)

食べたいものの方向性が決まっているのに、食材がない。あり合わせの材料でなんとなくその方向に歩き始めた結果、思ってもない場所に辿り着いて息を飲む──。日常の中に冒険は隠れています。楽しみましょう。あと、鶏ガラスープとコショウがあるとラーメン感が出ますよ。

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● ホットスナック×パン=なんでもイケル!!

コロッケ、チキン、ソーセージ、焼き鳥、、、パンに挟むとなんでも合う‼️ランチやちょっとボリューミーな朝ごはんにも❤️
(「ホットスナックのポテンシャルを極大まで引き出すアイデアレシピ」より)

我々はサンドイッチやハンバーガーという存在に長らく接し続けた結果、「大抵のものはパンに挟んであれば『そういうもの』として受け入れる」受け身の体質に仕上がってしまいました。パンは現代食事シーンにおいて無双状態。ホットスナックに並んでいる具材など、パンにとっては格好の狩り場ぐらいのもんでしょう。懐の深さという意味で今、パンに対抗しうるのはおにぎりぐらいでしょうか。頑張って欲しいものです。

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● ピノコーヒー

ピノをパクリと食べたままあったかい珈琲をひと口。口の中が熱い冷たい甘い苦いと変化して楽しい。ウイスキーなんかをたらりとしても良いかも。(「アレンジコーヒーの可能性をもっと探って欲しい」より)

口の中でやるシリーズ第2弾。しかもここには温度差による変化という概念も加わっています。すなわち味覚には「温度」や「時間」という軸も関わっていることが明らかに。味覚がいかに4次元的な概念であるかが分かります。

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● 爽やかなレモンの香り『カフェ ロマーノ』

エスプレッソがベースのレシピです。ご家庭で飲まれるならモカや濃く抽出した少ない量のコーヒーでもいいかもしれません。抽出したエスプレッソにたっぷりの砂糖を入れレモンを絞ります。軽く2回ほどかき混ぜ砂糖を溶かし切らずに3口程で飲み干します。…しかし、それで終わりではありません。ここからがロマーノの魅力。カップに残ったのはほんのりレモンの香りとエスプレッソを含んだ砂糖。そこに熱々のお湯を注いで飲んでみてください。味は…飲んでからのお楽しみ。きっと、気に入っていただけると思いますよ。しがないイタリアンのバリスタでした。
(「アレンジコーヒーの可能性をもっと探って欲しい」より)

きちんと名前が付いたレシピに対し失礼ですが、この複雑な摂取工程は明らかにおもしろ寄り。未知ゆえの好奇心を刺激されます。

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● 玉ねぎは、丸ごとチンで激うま1品。

たまねぎの皮を剥きます。 根っこと頭を切り落とします。 上から上下斜めに切り込み入れます。(深さは3分の2くらい) フワッとラップして、2〜3分チン! オリーブオイルと塩とか、ポン酢とかつ節とか、バターと醤油とか…お好きな味付けでどうぞー!! 箸でそのままいけます!
(「【時短ネタシリーズ】 料理編」より)

雑な調理法はおもしろ味の母。手間をかけたくない、めんどくさい、見た目がバカっぽい……しかし、だからこそたどり着ける愉快なメニューというものがこの世には存在するのです。

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● 舞茸をもいでパンに乗せて焼く

舞茸ならいしずきもないので手でもいで素早くお料理に使えて便利〜〜〜! バター乗っけてトースターで完成🍞 でもバターだけよりやってやった感あります
(「【時短ネタシリーズ】 料理編」より)

これまた雑。「やってやった感」もおもしろ味を引き立てる重要なスパイスですね。調理過程がバカ過ぎる、というのは自炊した者だけが楽しめる秘かな味わいです。そして、ここでもやはり白いカンバスとしてのパンが大活躍。

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● とにかくチーズを溶かしておかずのお供にする🧀

チーズが大好きなのもあってすぐチーズを溶かして何にでも合わせちゃいます🧀🤭💓 写真は餃子につけた時の! 洋食系ならもちろん何にでも合うし、おかずと合わなかったらチーズだけもぐもぐします🥰 #チーズ #料理
(「【時短ネタシリーズ】 料理編」より)

他人の目や良心の呵責をいったん脇に置き、欲望の赴くままにそれを貪ること。これもまたおもしろ味誕生の源泉です。特にチーズ界にはチーズフォンデュやラクレットといった、最初からリミッターが外れた先達がいます。チーズの沼にじゃんじゃんハマっていきましょう。



古川 耕
放送作家/ライター。放送作家としてTBSラジオ『アフター6ジャンクション』『ライムスター宇多丸とマイゲーム・マイライフ』などを担当。
ライターとして文房具や書評などを行う。連載は月刊GetNavi「手書きをめぐる冒険」。
https://twitter.com/2dawn

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