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ラビリンス/迷宮

見た目はオジサン、頭脳は子供。

どうも、迷探偵オジサンです。

と言った具合で、最初の挨拶で相手をケムにまく術を学んだのが、今まで生きてきた教訓でもある。

ボクの地元は兵庫県の明石というところ。自己紹介でかるくふれたけど、現在53歳です。

さすがに半世紀以上も生きてきてるし、何度かドン底を味わってるので、同世代の人よりは経験値は豊富ではないかとも思っている。

そんな中でも、特に印象として残ってるものも、ひとつやふたつではない。

まずは小手調べといった感覚で、ひとつめのエピソードを紹介しよう。

さかのぼること、35年前…

ボクが高校3年生のとき。

当時、ボクは中学からずっとバレーボール部に所属していた。強豪校と広く認知されてた学校で、主将をつとめ、長い現役生活を引退して、ようやく、きびしい練習から解放されダラけきってた生活を送っていた。

ずっと、部活しかしてこなかったので、勉強をするという習慣をもちあわせていなかった。しかも、反動で、テレビばかりを見ていた。

あれは、忘れもできない。というのには理由がある。そのころ、金曜の19時から、アニメで北斗の拳が放映されていて、毎週欠かさず観ていた。

ちょうど、エンディングの曲が流れていたときに、一本の電話が入った。もちろん、それは、黒電話と呼ばなる家に一台しかない電話機だ。

もちろん、この黒電話に関しては、いろいろと想い出やエピソードにはこと欠かさないくらいあるので、それに関する記述は後日になる。

今回は、それらのことを軽く凌駕するので、一語一句、受け止める決意を固めてから読んでいただきたい。

1 あふれんばかりの想い受け止められますか?

さて、みなさん、この言葉をみて目を瞑って想像していただきたい。

それは、悪魔が來て笛を吹く。

どんな風景や姿をイメージしましたか?

ボクのイメージとしては、人の不幸をほくそ笑みながら、さも、楽しんでいるかのように、マントをゆらめかせながら、フルートのような横笛で、悪魔の来訪を知らせるというもの。

ここでのフルートは黒電話。

聞きようによっては、軽やかなリズムでありながらも、不幸を与えられそうな不吉なメロディを奏でて、軽く口元には笑みを浮かべている。

ホントに悪魔である。

受話器越しに伝わる相手の緊張。それに伝播されたように、ボクの鼓動も早くなってくる。

知らない女の人からだ。

どうやら相手はボクが写っている中学校の卒業アルバムをみて電話をかけてきた。

個人情報ほ保護という概念すらなかったので、アルバムの最後には、卒業生の自宅住所と電話番号が記載されてた。

その女の子は、ボクの写真を見て一目惚れしたから、付き合ってほしいと言ってきた。

こちらとしては、相手の素性どころか顔も知らない。はじめて話す相手に対して、スキもキライもあったものじゃない。

その旨を伝えると、女の子は間髪いれずに自分の気持ちとうとうと話す。人の話を全く聞かないし、挙げ句の果てには、ワタシの名前(ゆかり(仮名))を呼んで欲しいと…

それがワタシの夢なの❤️

ドンドンと自分の世界に入り込んで、それこそ、自分の感情に溺れ迷宮入りしていた。

だからといって、その子の名前を呼ぶのも違うしと思い、とにかく、キミのことを知らないし、会ってもないから、名前も呼んであげることはできないと、長い時間をかけて説得はできた。

それでも女の子はあきらめきれずに、次の土曜日な晩に会いたいと。指定された場所は何と病院の駐車場。

それは、女の子の気持ちにそぐわない結果になれば、すぐさま病院送りになるということなのか?
それとも、新たな手口のヤンキーたちの呼び出しなのか?

ボクとしては、はなはだ迷惑な話だし、相手の溢れんばかりの想いを受け止めることは出来ずにいると、女の子は、待ち合わせの時間を言って、一方的に電話を切ったのである。

さて、待ち合わせ当日。

2 郵便配達は2度ベルを鳴らす

一方的に約束されたボクとしてはどうしたものかと悩んだ挙句、腕っぷしの強い同級生と先輩に来てもらうことにした。ボクを含めて3人。

あまり大人数で行くのも警察に通報されたりしたら面倒だからだし、もし、行ったとき、相手が大人数だった場合、脱兎のごとく逃げられるようにという算段もあった。

そして、待ち合わせ時間の10分前に到着して、時間が来るのを、茂みの陰から見ていた。約束の時間を30分過ぎたところで、ボクたちは、ホッと息をついて、病院からボクの自宅へと帰宅した。

帰ってから、オマエはかつがれたんやわと言われ、バカ話で盛り上がっていたところ、黒電話のベルが鳴り響いていた。

それは、不幸の来訪を告げる音でもあった。

受話器を手に取る。

普段なら意識はしてないけれど、受話器をもつ手は微かながら震えてるようでもあり、ジトっと汗ばむ気配もあった。

予想してたとおり、女の子からであった。

その声は、前回のトーンとは打って変わり、かなり激昂していて、どうしてきてくれなかったの?
ワタシ、ずっと待ってたのにと、非難轟々といった形容がピッタリあうし、罵詈雑言というのは、こういったことなんだと妙に納得したものだ。

よく、アニメやドラマで描かれているように、ボクも受話器を話していた。それでも耳が痛くなるくらいの金切り声。

最後の最後に言い放った言葉。

「アンタなんか呪ってやる。呪ってやる。呪ってや…」

聞くに耐えなかったんで、途中で受話器を置いた。

ボクは呪われているのか?
もし呪われているのなら、いつになれば解けるのか?

ボクにはわからない。

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