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その住職、無邪気につき。

どーも。
こんにちは。こんばんは。
今日もただ思ったことを書きますよー。
妄想で記事を書こう!と決めてから何個か記事を書いてはいたのだが、
ただ、思っていることを書くことも大事だとふと思った前回。
いや、前回は思ったことというよりは思い出話のようなものか。

日々生活をしていると、ふと疑問に思うことは多々ある。
今回はそういう疑問の話だ。


まず、写真を見てもらおう。
よく神社?お寺?よくわからんが、こういうのありますよね。
龍の口から水が出てるやつ。

みなさん、今一度よく考えてみてください。
なんで龍の口から水を出そうと思ったのかと。

西洋の龍、まぁドラゴンは火を吹いているイメージはある。
しかし、東洋の龍は火を吹いているイメージはない。
なんなら少し長めの下をくねらせながら出しているイメージの方が強い。

それが今やお寺で水を吐いているではないか。
これはどういう意図で龍の口から水を吐かせようと思ったのだろう。

水を吐く生き物ではダメだったのだろうか?
例えば…って言われると居ないんだなこれが。
フグが水を吐いたりするらしいが、それでは凄みはない。
だからといって龍の口から水を出そう!って発想にはならない。

ある意味ここからは妄想だ。結局妄想の話だ。

ある住職は思ったのだ。
水を出すのに塩ビパイプやホースから水が出ていては
荘厳さや、威厳的なものが出ない!これじゃだめだ!
こうなったら、何かお寺っぽい生き物を使ってそれっぽくしよう!
そうすれば解決だ!

そう思った住職は悩みに悩んだ。
一体どの生き物が神社っぽい生き物なのか。
悩みに悩んだ末、思い出したのだ。
確かどっかのお寺で天井龍というのが居たはずだ!

そう、彼は妙心寺の雲龍図を思い出したのだ。

そこから彼は早かった。
馴染みの石細工に龍の口のところにパイプを通せるような感じで作ってくれ!と。
そんな突飛なことを言うもんだから、石細工の彼は(以下、石夫さんとする)さぞかし戸惑っただろう。
なんで?と石夫さんは住職にストレートに疑問を投げかけた。
住職は目を輝かせながらこう言った。

「龍の口から水を出したらさ、なんか…っぽいじゃん!?それっぽいじゃん!?」

石夫さんは住職の言っている意味がわからなかった。
むしろ、質問の答えになってるいるのかすら怪しいところだ。

しかし、石夫さんは優しかった。
全く納得はしていなかったが住職の要望通り口にパイプを通せるように細工をした龍の石像を作った。

完成したとの連絡を受け、住職は急いで向かった。
まるで少年時代、小遣いを握りしめ駄菓子屋へと向かったあの頃のように。
そして彼は石像を見て言った。
「龍は立たせちゃダメなんだ!寝そべっているようにしてほしいんだ!」

石夫は呆れた。
それは先に言わんとダメだろう…と。
しかし、石夫は優しかった。
その優しさが自分を苦しめていることにも気付かずに。
思い返せばいつもそうだった。
石夫は優しいが故に周りから頼られた。
しかし、それは頼られていたのではない。
いいように使われていただけなのだ。
石夫は薄々気付いてはいるのだ。
だが齢60にもなろうとしている石夫は今更変わろうなど思っていないのだ。

もちろん納得はしていなかった。
だが、石夫は住職の言う通りに作り直した。
今度は細かい部分も聞いて作った。
最初からそうしろよと言われればそれまでだが、石夫は住職の突飛な要求に困惑していたし、質問の答えにも納得していなかったためにそれどころではなかったのだ。

また完成の連絡を受け、住職は急いで向かった。
まるで若かりし頃、今の妻と交際をしていた時のことだ。
デートの待ち合わせ時間ギリギリでドキドキとワクワクとハラハラが混じった感情を持って走ったあの頃のように。

そして彼は石像を見て言った。
「これだ…これだよ!石夫!完璧だ!!!」

石夫はこれがどう使われるのかすらあまりわかってないので、
何故この住職がこんなに感動しているのか不思議だった。
だが、きっと自分は役に立ったのだろうと自分に言い聞かせた。

住職はすぐさまその石像を持ち帰り、水が溜まった石の縁に置きホースを通した。

全てが完璧だった。
龍の口から流れる水は、いかにも有難そうだった。
荘厳さも威厳もある!っと彼は満足した。

そこから話題になるまではなかなかに時間がかかった。
数年経った時に、全国お寺通信で自分のお寺に取材のオファーがあったのだ。
これは私のこのアイデアを全国のお寺に広める千載一遇のチャンスだ!
もはや食い気味で快諾だ。

そして待ちに待った取材の日。
全国お寺通信の記者たちはお寺の歴史など、どうでもいいことばかり聞いてきた。
私はそんな話はどうでもいいから、この龍を見てくれ!!!と心から思った。
そして取材が終わった際に、記者に紹介したのだ。
これは凄いだろう!と。
記者たちは唸った。
これは全国津々浦々お寺を巡ってきたが、こんな威厳のある水は見たことがないと。
これは是非紹介させてくれと住職に懇願した。
住職してやったり。
しかし、住職は冷静を装い「あぁ、もちろんいいですよ。たぶんこれはうちのお寺だけですから珍しいかもしれませんね。」と答えた。
心の中ではガッツポーズだ。

そして全国お寺通信が発行され、瞬く間に話題になった。
話題になったどころかこぞって真似をした。

彼は真似をされたとこに若干の戸惑いがあったが、全国の反応に概ね満足だった。

今となっては割と見慣れたこの龍の口から水が出ている光景は、
ある住職の無邪気さと突飛な発想によってできたものなのだった。
しかし、我々は忘れてはいけない。
その陰で振り回されまくった石夫さんのことを。

という妄想の話でした。

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