見出し画像

司法試験過去問との向き合い方Ⅱ

こんにちは。ちょま林です。
さて、皆様、年始をいかがお過ごしでしょうか。私は、美味しいものを食べて、お酒を頂き、ゴロゴロしながらゆっくり過ごしています。
受験生の方も年末年始ぐらいは少し肩の力を抜いてゆっくりされると良いと思います。今年は試験が7月なので今から全速力でも息切れしてしまうかもしれませんしね。

今回は、前回に書いた以下の記事の続きを書いていきます。

前回は、主要7科目の過去問の利用方法について書きましたが、今回は、これらの記事に付随する出題趣旨、採点実感の活用方法、加えて短答過去問について書いていきます。出題趣旨、採点実感は共に司法試験委員会が何を書くべきか、それはどうやって、どれほど書くべきかの筋道を示してくれています。
つまり、そのとおりに書くことができれば合格答案になるという代物です。
もちろん、中にはあきらかに合格水準を大きく超えるものも存在するので、その向き合い方を私が実践していたものも含めてまとめていこうと思います。

例のごとく、本記事はちょま林の主観によるものであり、その内容の正確性等を担保するものではありませんので、ご了承下さい。

出題趣旨

出題趣旨はその名のとおり、その年の問題において委員会が想定した答案の骨格が示されています。何について、どの角度から論じるのか。判例や条文、論点についても言及がされています。
いかなる立場に立てば(判例あるいは学説上の有力説)、どのような帰結になり、それに点数がどのように振られるかまではっきりと述べられているので、過去問を解いた際に総論としてどのような点に触れておくべきだったかのチェックシートとしての役割を果たします。

ただ、要注意なのは記載してあるすべてのことについて言及してある必要はないということです
正確に言えば、該当年度の問題を本番において現場で解いた際にすべてできている必要はないということは念頭に置いておくべきです。

既に過去問で出題されている事項であり、かつ、それが重要条文や重要論点に関するものである場合には次回出題された際に出題趣旨に沿って解答することが基本的には求められます。
しかし、過去の受験生の当該年度の再現答案を読んでいただければわかりますが、私も含めて、重要論点であっても出題趣旨に述べられている形で完璧に解答できている答案は極少数だと思います。

つまり、あまりに細かいところまで完璧にこなそうとするのではなく、出題趣旨は過去問を解いた後の目次のようなものとして大体何に触れるべきであったかを把握し、委員会が示している考え方やこう書いてほしいという記述があればそれを吸収、理解して次に答案を書く際には、それをできるだけ意識して書くようにするといった使い方が有効だと考えられます。

ただ、一点注意するとすれば、科目によっては着目すべきであった事実関係あるいは当てはめでつかう事実関係に言及がなされていることです。現行司法試験では規範+事実(評価)のうち、とりわけ事実(評価)部分が重要とされており規範に整合する事実を過不足なく明示できているかが重要なポイントとなります。
この点を意識すると、事実関係に着目する記述がある部分の事実を引っ張って書いていればいるだけ点数が入るということなので、どの論点や条文ではどういった事実が問題になり、点数になるのかを把握する上で非常に重要です。

採点実感

さて、おそらく委員会が発表する資料の中では一番重要なものがこの採点実感ではないかと思います。

https://www.moj.go.jp/content/001382903.pdf

以上は、令和4年司法試験の公法系の採点実感ですが、形式面の注意(読解不能な文字を書くなや誤字には気を付けろ)から「こういった答案には高い評価を与えた」、「こういった答案は高く評価することができなかった」といった形ではっきりと論点や解答すべき内容についての評価がなされています。
行政法に至っては、「一応の水準」、「良好」、「優秀」の三段階の採点基準に従ってどれほどの内容の答案ならばそこに到達したかが明示されています。こういった、示し方は他の科目でもなされています。

現行の司法試験では、A~B水準(500~1500位)の答案の多くが「一応な水準」に位置していることになります。
ゆえに、「一応な水準」に到達していることを目指すことがまずは肝要だと言えます。自分が過去問演習の際に、採点実感に示されている一応な水準までは最低でもかけているのか確認しましょう。
その上で、重要論点や頻出分野に関しては、良好や優秀の水準として書かれていることも抑えていけばよいと思います。

採点実感内で詳細に法解釈についてや判例、有力な学説を採用した場合の帰結の差異、あるいは委員会が検討してほしいと考えている法的構成が示されることもあります。
例えば、〇〇については~という判例が存在し、~に従えば、✕✕と考えられ△△となる。一方で、学説上の▢▢も有力であることから、▢▢にのっとり、判例に正確な批判を加えて、(筋を通した)、検討していれば(判例で処理した場合と)同様の扱いを行った。
というような記述がなされていることがあります。
こういった、書きぶりの時にあえて学説で処理する必要性が低いことは一目瞭然です。なぜなら、判例+その批判+自説としても判例で処理する規範立てと点数的に変わらないことが明示され、しかも批判などが正確ではない場合には点数が下がることが言外に述べられています(もちろん、会社法の一部論点など判例を取らない方が良いものもあったりするので、そういうものだけは入念に準備しておくべきです)。

上記のような書きぶりが論点単位だけではなく、ある概念の定義(民訴の裁判上の自白の定義等)、条文の要件の構成(2要件なのか3要件なのか等)、様々な分野で登場するので、その場合にはできるだけ委員会の考え方に寄せておく必要があります。

さらに、採点実感内で注視してほしいのは法律論に関係しない部分です。
出題趣旨で述べたことの繰り返しになってしまいますが、司法試験ではとにかく事実が重要です。
そもそも、法律問題を解く際の思考の出発点になるのは事実です。
司法研修所では、当事者の求める結論→結論に至る合理的ストーリー→ストーリーを支える事実と証拠→ストーリーを実現できる法的構成の順で思考するように教わります。
司法試験の問題でも思考の順番は異なりますが同じようなことが言えます。
着目すべき事実が問題文にあり、事実を使える条文、法律構成を自分が決めた結論を導けるように考え、適切に展開していくことが求められます。

採点実感内で委員会が摘示する事実は、その事実に着目して条文を選択し、法律構成を決め、当てはめで評価を行う事実であり、点数のほとんどを占めているものだと言って過言はないでしょう。
自分が過去問を解いた際に、実感内で言及されている事実に気付けていなかった、気づいていたがスルーしてしまった場合には意識を変えて事実を活かしきるマインドにしなくてはいけません。

かくいう私も、事実を活かしきる意識が足りず、なかなか論文がうまく掛けないことがありましたが、事実を使い切るようにしてからは安定してそれなりの論文を書けるようになりました。
それに、司法試験の本番では極度の緊張やいつもにない精神状態のために筆が進みすぎたり、逆にまったく筆が動かなかったりします。
こういった事態では、事実の存在は認識していてもどこに活かすかとっさに出てこないことが頻繁に起こり得ます。
日々の練習の中で、できるだけ事実を取りこぼさない練習をしておいてなんとか対応できるということも珍しくありません。
そして、採点実感内で言及される事実は、全て点数になる重要なものでありこれを拾い切る意識、練習をすることで本番でも点数になる事実をすっと把握できたり、使い方が難しい事実でも食らいついていく感性が養われると思います。

短答過去問

短答は過去問が最重要とよく言われます。その通りで、同じ肢が出題されることもあれば、同じ知識が角度を変えて問われることもあります。まずは、過去問を9割は正解できるようになればそれなりに点数を取ることができるのではないかと思います。
現在の司法試験では、短答式による足切りは事実上の足切りとはなっていないと思います。短答式試験の合格者は2494/3060で最終合格者は1403/2494です。そうすると、短答に通過すれば大体55%は合格するということです。
合格者平均の123点を取れば約1200位、目標になる全科目平均の8割である140点を取れれば約400位になります。
合格者平均点でも十分に合格し得る点数になりますし、140点もあればそれなりのアドバンテージを短答で稼げることになります。
また、短答は3科目しかありませんが、この3科目でそれなりに良い点数を取れる基礎が身についていれば論文でも3科目はいい勝負ができる可能性が高まります。
短答対策では、大体大まかにわけて3パターンがあるかと思います。
①とにかくアウトプット、過去問を周回するタイプ
②過去問は1,2回解いて、あとはインプット中心にしていくタイプ
③担当の過去問を解くのは数年分にとどめ、インプットで対応するタイプ
私は、②のタイプでした。過去問を解いて間違えた問題に関係する知識を短答用のテキスト(私の場合は、基礎講座のテキスト)に書き込みそれを後はよんで確認していくだけです。
どのタイプでいいと思いますし、結果として140点~150点を取れるなら問題はありません。ただ、短答において過去問を無視した勉強だけはいけません。確かに、年度の古い過去問には今とは形式が異なったり、さすがに今はもう問われないのではないかと疑ってしまうような知識も出題されています。しかし、解いた過去問の年数が極端に少なかったり、初見の問題を解けるように知識を定着させることが目的のはずなのにただ漫然と過去問を周回するのは過去問の活かし方としては良くないものです。

目的意識と自分に最適な方法論を念頭に短答過去問を繰り返し解き、知識の定着を図るのが王道にして最良の勉強です。

まとめ

さて、全2回にわけて、過去問、出題趣旨、採点実感との向き合い方を書いてきましたが、いかがでしたでしょうか。
今回書いた内容は、私が意識していた点にすぎず、もっと多くの活用方法はあると思います。あくまで、一合格者の実感だということは忘れないでください。
しかし、一方で、多くの合格者に頷いてもらえるものではないかとも思います。合格者はそれぞれの勉強方法はありながらも、核の部分では共通していてることが多いと感じています。それが法曹の素質と呼ばれるものに繋がっているのかもしれません。
過去問、出題趣旨、採点実感は司法試験を目指す上における最良の教材です。基本書も演習書も予備校の講義もロースクールの授業もこの3つを理解する、乗り越えるためのものにすぎません。
この3つを勉強の中核に据えて、努力すれば良い結果がおのずと生まれるものだと信じています。
今年が皆様にとって最高の年に、記憶に残る年になるようにお祈り申し上げます。
それでは、ここまでお読み下さりありがとうございました。
また、次回の記事でお会いしましょう。




いいなと思ったら応援しよう!