どうしようもなく死にたくなった日に、わたしはパフェを作った

うつ病が再発してしまった。
ここ数ヶ月、どうにもならない状態を我慢し続けていた。
暗闇の中を今にも折れそうな割り箸みたいな杖をついて、手元しか見えないランプで、ふらふら遠くにぼんやり見える小さな小さな光に向かって歩いてる気持ちで生きていた。
その光は近づいた分だけ遠ざかり、つい先日フワッと消えてしまった。

あてどなく、共連れも先達もおらず、四方八方には誰もいない。方向を見失って孤独だった。
ひとえに、わたしがしている仕事がまずかった。
どうにも上手くいかないのだが、自分自身の問題であって外的な要因が何一つなかった。
つまり自分が悪い。だが自分だけで解決しなくてはならない問題を、わたし自身が解決できなかった。どうしていいか途方に暮れていた。

小さく見えていた灯りが消えたことで、わたしはもう無理だと思った。フラフラと買い物に行って「これ食べたらベランダから飛んで死のう」と、コーンフレーク、フルーツセット、いいアイス、生クリーム買ってきた。

最後の晩餐にパフェを選んだ。食べたら死のう、もうダメだ今日こそ終わりにしようと、500メートルほどの距離を足を引きずりながら帰宅した。

部屋開けたら猫が鳴きながらお迎えに出てきてくれて、思わず頬が緩むが、心は晴れない。
さあパフェ食べようと思ったら食器が全部使われまま乾燥してガビガビになっており、まだ死ねないのかとため息をついた。
お湯を垂れ流しながらそれらの食器一つ一つを洗った。洗いカゴがパンパンになると、そこからまだ濡れたままのぬるいコップを手にして、一緒に買ってきたワインをあけて注ぎ、雑にごくごくと飲んだ。赤ワインのえぐみを気にせず、100ミリリットル程を一気に飲む。
飲んだことの無いラベルだったが飲みやすくて美味かった。

ワイン臭いため息をついて、コーンフレークをコップに敷きつめ、フルーツをどかどかと放り入れ、わざわざ泡立てた生クリームをべシャリと乗せて、スプーンで雑に掬ったアイスを盛り付けた。
なんとも不格好なパフェだ。美しさの欠片もなかった。ワインを飲んで、パフェをほおばった
ザクザクの硬いコーンフレークが歯茎に刺さった。フルーツの酸味と、乳脂肪と砂糖が暴力的に脳を殴り付ける。
美味しいなあと思った。
悔しかった。こんなにも死にたいのに、体は貪欲に糖と脂肪を貪り、吸収していくのがわかる。
わたしは腹が減っていたのだと、ようやく理解した。
ワインを持ち、飛ぼうと思っていたベランダに出るが、夜風はまだ冷たいし、ベランダの材質が冷たすぎてすぐに部屋に戻った。

満足するまで食べたら、食器をシンクにおいて、水を張ろうと思った。
洗うのは明日でもいい。水だけ張って、歯を磨いたら眠ろう。
涙を拭い、台所に向かう。
パフェのおかわりを作りに。

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