手と手を取り合って

わたしの、2023年の季節が飛び飛びになってしまっている。
うつ病が再発してから、とにかく閉じこもって眠ることが多く、わたしはひたすら内側にこもるやり方で自身を癒していた。
わたしはうつ病の時でさえも孤独を愛しているようで、誰かに甲斐甲斐しく世話を焼かれて病人をするよりは繭を作って中で治して羽化するように外に出るようなイメージで療養を続けていた。
わたしの心と体に異変を感じ始めたのは年が明けてすぐのことだった。
既に2023年も4月の半ば。夏日を記録するような日も現れ、日増しに地面が暑さを帯びていく。
わたしは一人暮らしのため、もちろん買い物や支払いなどの用事でやむを得ず外に出ることはあったのだが、黒く垂れ篭める考えや気持ちのせいで外の景色など見る余裕もなく、ふと気がつくと外が大雪で白い世界に染まり、目の感覚過敏で外をまともに見ることが出来ず、またある日はゴミ集積所の脇に植えられている桜のつぼみが膨らんでおり、つい先日長らく景色を見ていないことに気づいて窓の外を見るとその桜すらも散り果て、新緑が萌える頃となっていた。
わたしはそのどれもを見逃しているようで「ああもうこんな季節になっていたのか」と時間の流れを実感して現世の世界へ戻ってくるような気持ちだった。
おかげで体はだいぶ楽にはなったのだが、嫌いな冬が終わって命の芽吹を感じる春を取りこぼしたのは少し残念だった。
これからは風に熱を感じ、葉の囁きを聴いて、日差しの偉大さと残酷さを知る季節になる。
飛ばした春を思いながら、わたしは病と手と取り合い、次の季節へご機嫌なスキップをしながら向かっていく。
数ヶ月後のうだるような暑さの中、「今年の春は寝てばっかだったなあ」とボヤきながらアイスをかじれるようになれることを祈る。

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