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映画【ラストマイル】は物流業界の課題を描いた傑作

※映画のネタバレはありません。

普段あまり映画を観ないけれど、無料映画チケットがあったので久しぶりに観てきました。

【ラストマイル】

何を観ようか考えていた時に目にとまる。
物流業界を舞台にした映画らしい。
そうか、ラストマイルとは物流用語のラストワンマイルのことか。

ラストワンマイル:最終拠点からエンドユーザーへ荷物を届けること。「最後の1マイル」という距離的な意味ではなく、お客様へ商品を届ける物流の最後の区間、役割という意味を指します。

私は仕事で物流業界に関わっているので、これは興味深い。

映画ラストマイル
テレビドラマ「アンナチュラル」「MIU404」の監督・塚原あゆ子と脚本家・野木亜紀子が再タッグを組み、両シリーズと同じ世界線で起きた連続爆破事件の行方を描いたサスペンス映画。満島ひかり、岡田将生主演

21:25上演回で観に行きました。
上映が終わったのは23:46。

朝型の私は、いつもなら寝ている時間。ですが眠気を一切感じることなく手に汗握る展開で楽しめました。

ー物流を止めるな
映画でも描かれたシーン。物流業界に携わる人たちは、みんなそんな責任感のもと働いています。

物流は日本の血液です。
物流が止まれば日本が止まる。ドライバーは、自分たちが国を動かしているくらいの気概で荷物を運んでいます。

でもドライバーに感謝する人はいません。
映画でも語られた、ドライバーをみんな軽視します。
あなたは、荷物が運ばれてきたとき、ドライバーに感謝していますか?

置き配で荷物が届いていたとき、当たり前だと思っていませんか?

ドライバーはいつも透明人間のように扱われます。
ドライバーの存在が見えていますか?

近年、ドライバーの高齢化が止まりません。
この映画でも語られていました。給料が安い。労働時間が長い。重労働。
ドライバーになる人がいないのです。ドライバーの高齢化。これは何を意味するか。
年々ドライバーの数が減っているのです。
物流対策を何も打たなければ2030年には荷物の30%が運べなくなると言われています。

なぜ給料が安いのか
1990年代に規制緩和が行われ、特別な免許がなくても、届け出さえすれば誰でも物流業界に参入できるようになりました。つまり競争が激しくなりました。
そうなるとどうなるでしょうか。
配送料が安くなるのです。様々なサービスが無料になります。再配達無料もそうですよね。お客様を獲得するために、消費者、荷主企業(荷物の運搬を依頼する企業)のいいなりになります。

話が前後してしまいますが、日本の物流において、重量ベースで見ると、宅配は全体の荷物の1%しかないのです。99%が企業間物流(BtoB)なのです。
映画内で宅配サービス以外も少し触れられましたが、メインで騒いでいた宅配関係は、ほんの1%のことなのです。1%なのにこれだけ騒いでいるのです。物流業界がどれだけ大変な状況になっているかわかりますよね。

配送料が安い、つまり値下げするということは、その原資はどこから出るかわかりますか?そうです。社員の給料です。基本給を安くするのです。基本給が安いという物流業界の構造は他にも要因があるのですが、結果、ドライバーは他の産業と比較すると安月給になってしまったのです。

なぜ労働時間が長いのか。
宅配で言えば、再配達。物流は、お客様に荷物を運んで、ようやく売上が立ちます。再配達は無償労働のようなものなのです。

企業間物流で言えば荷待ち時間。荷物の積み下ろしのための待ち時間です。
トラックが列をなして待っている光景を見たことがないでしょうか。

さながら人気ラーメン店にトラックで並んでいるかのようです。

荷待ち時間を解消しなければ、ドライバーの残業時間は解消されない。
そう判断した国は、荷待ち解消の施策を打たない荷主企業(荷物の運搬を依頼する企業)に対して、警告、果ては企業名を公表する勧告を行うと発表しました。

そして2024年2月、実際に2社が勧告されたことは記憶に新しいです。

意識は少しづつ変わってきました。ですが、まだまだです。

物流業界の構造は、令和になった今でもさほど変わりません。物流業界の人たちは変えたいと思っていますが、変えられないのです。
みなさんが物流業界に対する意識が変わってないのです。当たり前ですよね。荷物が当たり前に運ばれてくる。家にいなければ再配達してくれるでしょ。そんな意識でいつまでもいるなら、変えられなくて当たり前です。

好きな日、好きな時間、好きな量を自分の都合だけ考えて指定して、言ったとおりに運んできてね。
個人に限らず、企業もその意識が変わらなければ、物流業界の構造は変わらないでしょう。

他にもここには書ききれないほど、様々な問題をはらんでいます。

残業規制が行われた2024年問題では、根本的な解決が結局されていません。2030年、2040年と物流クライシスはすぐそこまでやってきています。

この映画は、物が運ばれてくるのは当たり前ではない。
多くの犠牲の上で成り立っている。
そんなことを考えさせる内容でした。

物流サービスを利用したことない人はいないですよね。
全てのひとに関わる内容です。
ぜひ観ていただきたいです。

私はKindle作家ですので、物流に関する本も来年に書きたいなと思っています。
それまでは9月に出したこちらの本を読んでお待ちください。

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