EU混合食品輸入規制の現状【2021年11月末】
EU混合食品輸入規制については過去に現場で起こっていることなど記事にしてきたので、下記の記事を参考にして頂きたい。
規制の概要についてはこちらの記事
実際の運用面の記事はこちら
密接に関係するロックダウンの状況
2020年以降、世界経済に大きな打撃と変化をもたらしたCOVID-19。
思い返せば、中国で初めて流行り始め、その後イタリアを発端に欧州全土に蔓延した。その後、アメリカでも猛威を振るい、現在各地域で第〇〇波と言われる現状になった。
欧州に関しては、全域で初めてロックダウンとなったのが、2020年2月末。
その後、経済が再開されたのは、2020年7月だ。
この頃には、感染者数もかなり減り、レストランも再開されるようになった。
その後、また、2020年11月頃、欧州全域でロックダウン状態に入った。
このロックダウンは非常に長く、2021年5月末ごろまで続いた。
2021年5月末から現在までは、経済活動が継続され、欧州各国では意地でもロックダウンはしないという強い意志を感じる。
ただ、感染者数は各国で歯止めが効かず、オランダでは、れすとらんは営業時間を20時までとする時限的な措置を取ったり、オーストリアの一部地域ではロックダウン。スロバキアでもロックダウン。
私たちの住むドイツでも各地域でクリスマスマーケットが中止になり、エリアによってはレストラン営業に大きな打撃となる入場のための制限をかけている地域が出てきた。ロックダウンへのカウントダウンと言わんばかりの状況になってきた。
とても先行きが怪しく暗いクリスマスに向かっている様に感じる。
※上記ロックダウンの時期については、各国によって異なるため、ドイツの時期を中心に記載しています。
2021年11月末の海運状況
こういった、欧州の厳しい感染状況の中、日本から届く海運についてはどんな状況か。
全世界的にコンテナ不足は解消されていない。
日本からの船をブッキングすることすら難しい状況が続いている。
この原因は、世界の工場である、『東南アジア』の状況がよろしくないことが起因している。
東南アジアの工場がハードロックダウンで稼働しないことにより、世界中に供給されるべき製品が出荷されず、コンテナが中国を中心とするアジアに偏在している。
皆さんの生活でもパソコンやiPhoneに使われる半導体が供給不足で発売が遅れたり、品切れになっていますよね。そのほか、ナイキのスニーカーや、缶詰などの加工食品も影響を受けている。
本来、コンテナとは、留まることなく世界中をグルグルとまわりバランスが保たれていた。ただ、供給不足が理由でアジアにコンテナが偏在すると、渋滞が起こる。
この渋滞が全てのコンテナ船に影響を与える。こうして欧州への到着も通常の3倍近く要することになっている。
※通常は2ヶ月ほどで日本から届くコンテナが半年近くかかる。
それでもまだ届くだけマシな方で、他業種では、日本からアメリカ行きのコンテナのブッキングができないと嘆いている会社もある。このように、サプライチェーンは過去に例を見ないくらいの大混乱の最中にあるのだ。
2021年11月末の欧州主要港の現状
海運が上記のように混沌とすると、主要な港も当然混沌とする。
船が遅れて到着することで各方面(荷主やブローカー等)から問い合わせが殺到する港。
私たちも当然、問い合わせをして状況を確認している。 予定よりも4ヶ月も半年も遅れて届くコンテナだから、喉から手が出るほど早く欲しいのだ。
皆、同じ気持ちだろう。
この状況を想像するだけでも港職員の皆さんは気の毒だ。
しかし、私たちが利用している欧州最大ロッテルダム港はなんと
港スタッフが在宅ワークをしているのである。。。
わかる。感染防止のために在宅ワークはわかる。。
だが、欧州の在宅ワークはほぼホリデイに近いのだ。
という事で、港についてからも膨大な時間を要して荷上げをするハメになる。
普段の港スタッフが在宅ワークになるため、不慣れな職員が作業にあたる。
税関と、FDA(衛生局)この二つをパスして初めて荷上げになるのだ。
この作業、通常だと5営業日もあれば、終わり入庫ができる。
現在の特殊な環境下で、私たちのコンテナは最大2ヶ月も港で停められた。
この2ヶ月間停められた貨物は、追加で保管費用を取られる。
保管費用だけでも数百万円余分に発生した。
このように、不慣れなスタッフが少ない人数で回しているということもあり、港も最悪な状況だ。ロッテルダムに限らず、アントワープも同じ状況とのことだ。ドイツのハンブルク、ブレーマーハーフェンもおそらく状況は変わらないだろう。
本格導入されたEU混合食品輸入規制
スタッフ不足の中で本格導入されたEU混合食品輸入規制。
この規制は、2021年の4月末から適用されたのだか、8月ごろまではそこまで厳しくなかった。
ただ、8月ごろから突然チェックが厳しくなり、必要書類を全て漏れなく不備なく提出しても、停められてしまうほどのだ。
かつて、日欧EPAが適用された際、日本の検疫局のチェックが厳しすぎて、港に欧州からの貨物が大量に止まってしまい、欧州から日本国に対しクレームが入り緩和されたという事例があるようだ。
まさに、今その逆パターンが起こっている。
新規制には必要のない書類の提出を求められたり、スタンプを押すべきでない書類にスタンプがないから差し戻し。原本を日本に送り返し、修正をして原本を再提出など、とても無駄な作業が多い。
さらに、FDAの手が回らない時は、税関に貨物が回され、税関が忙しいときはFDAに貨物が回されたりと、港内でたらい回しになって全く進まないこともしばしば。
不慣れな規制のチェックに拍車をかけて、港スタッフの人手不足でとんでもない状況になっている。
この状況は半年経っても改善は難しいだろうと見立てている企業さんもあるようでしばらくは続きそうだ。
今後の想定できるリスク
今まで書き綴ってきた内容に加え、将来のリスクを想定する必要がある。
直近で足音が聞こえてきたリスクとしては、各国のロックダウンだ。
ロックダウンが起こると、船の運航にも影響が出るし、港の作業にも遅れが出る。さらなる遅延が予想される。
さらに、最も恐れているのが2022年2月に行われる「北京オリンピック」だ。
中国は意地でも開催するだろう。最悪なケースは、オリンピックが終わった途端にロックダウンになることだ。
今世界の2大勢力がアメリカと中国だ。このどちらかが、こけると世界の貿易は寸断されてしまう。
中国は過去に、港スタッフ1人感染者が出ただけで港全てを封鎖した。
しかもその港は世界第3位の規模を誇る世界の中心的な港だ。
今でも中国は、感染者が出た街、地域を丸ごと封鎖して完全な封じ込め作戦を決行している。
北京オリンピックで世界中から人が訪中することを考えても、港が封鎖されることも想定しなくてなならない。
半年先、欧州がどんな状況になっているか想像すらできないが、需要予測をして日本に早めに発注をかけなくてはならない難しい状況が今後もしばらくは続きそうだ。