ルックバック(漫画)(映画)〜ルックバックとは何だったのか?〜
「ルックバック」はチェンソーマンやファイアパンチの作者、藤本タツキ先生の描いた読切漫画です。
3年くらい前にジャンプ+というオンライン媒体で無料公開されていました。今もかなりの分量を途中まで立ち読みできます。読切というには大作で、本作のみの単行本も出ています。
なぜ漫画を描くのか。なぜ描くのを辞めないのか。
創る人の苦悩というかむしろ苦痛が、あれもこれも詰め込まれています。漫画制作は基本的に苦行で、外野もうるさい。だけれど一筋の光として、作品を読んだ人の、心強く揺さぶられた反応が、創作者を前に動かしていきます。
以下、結末の内容に触れています。
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Amazonプライムで配信開始💻
今夏に映画版が公開されましたが(見ました!)
11/8金からAmazonプライムでの配信がはじまり、あらためて話題になっています。
3年の月日が流れたからでしょうか。京都アニメーションについての言及が減ったように思います。修正の経緯があったのであえて触れないのかもしれません。
どこまでが創作か、どこまでが事実を含んだものなのか。定かではありませんが、多分に私小説的内包があるのではないでしょうか。そう感じた読者は多く、藤本タツキは女性なのか?という話題も以前あがりました。この作品の主人公が女性だからです。それだけ本作の主人公が藤本タツキに近い存在だと言えるでしょう。
メッセージは現実と漫画の世界を行ったり来たりする
夢か現か。投影か。
結末が少し難解な漫画ですが、監督の解釈が添えられて、映画ではかなり読み取り易くなっていると思います。アニメーション化の底力です。臭いだけじゃない、ドリアンの存在感はすごかった。
クリエイターを包囲するさまざまな理不尽、憤り、やるせなさ。見当違いな悪意が向かってくる恐怖。それらを実にリアルになぞっています。
頭の中にあるものと、それを現実に生み出したものとは、まったく次元が違います。天と地の開きがある。さらにそれを最後まで描き上げられる人はごく僅かです。そして打ち砕かれた後に、また立ち上がって、描き続けられる人も。
藤野ちゃんはそれでも描き続けました。
漫画が上手くなりたい。絵が上手くなりたい。純度の高い情熱と、その情熱を受け取った読者との化学反応で、漫画はまた面白くなる。
だから藤野ちゃんは、ひいては藤本タツキは、一心不乱に全力で漫画を描き続けるんだ。私はそんなふうに感じました。
また付け足すかもしれませんが、ルックバックについて思うこと、感じたことでした。
付け足し:
漫画タイトルのルックバックとは何だったのか。
英語にすると、
Look back!背中を見ろ!
です。このフレーズは映画の中でとりわけ丁寧に重ねて伝えられています。京本の部屋の扉の前、風の悪戯で手にした4コマの題名と作者名は
「背中を見て 京本」
でした。ハッと後ろを振り返ると、あの半纏が、ファン第一号の背中に書いたサインが、藤野ちゃんの目に飛び込みます。あの風は京本だったのでしょうか。
藤野ちゃんがただひたすらに絵をかいていたときもずっと背を向けたアングルでした。藤野ちゃんが描き続ける姿も、積み上げられた京本のマルマンも、無音で他者の心を掻き立てます。
後進に向けて、創作がうまくいかないと嘆く人たちに向けて、この背中を見ろ!描き続けてみろ!そんなシャウトが「ルックバック」に込められていたのかもしれません。
追記)
ノートの看板をよくchatGPTで作成しているのですが、この作品にはちょっとそぐわないと思い、書影にしました。