至高の肴
至高の肴を見つけた。
方々の食物をつまみ乍ら吞んできたが、遂に一つの答えに辿り着いた。
能書きが長い性分もここらにして置いて、結論に入ろう。
「失敗」で或る。
具体例を挙げやう。
己の失敗、たとえば番組の途中で寝て了った、寝坊で約束を破った、等。
とくに、人間関係での失敗は最上品で或る。
其の時は腹を掻っ捌いて詫びたく成るやうな事でさへ、終わって家に着くと、
机の上に既に用意された夕食の如く、大変な美味に変はる。
失敗を赦せるほど傲慢には成れない私が見つけ出した、唯一のブレイク・スルーやも知れぬ。
順応、と云へば聞こえは良いだらうか。
殊更に良いのは、所要などで遠方に赴いた際、当然のやうに百の失敗、百の後悔をする。
其れらが、ウヰスキーやチーズのやうに醸造されて、とっておきの褒美に化けるのだ。
今日もまた、つまみを作りに出かけやう。