【子育て/部下育成】伸びやかな成長を支援する”褒め方”
「褒める」
ということには、コーチングやカウンセリングでいうところの「承認」というものが関わります。
「豚もおだてりゃ木に登る」という言葉がありますが、人間は、ゴハンをもらって芸を覚えるものではありません。
【褒めて伸ばそう】というブームもありましたが、褒めるというのは、簡単そうに見えてなかなか奥が深いことです。
我が子でも、自分が教えている生徒さんでも、会社でともに働く部下でも、できればその人のポテンシャルを最大に引き出して、その人も幸せになる褒め方で応援したいものですよね。ほんの一言が、人を支えることもあれば、開き始めたツボミを再びしぼませてしまうこともあります。
今回は、コーチングの視点から、できるだけ日常生活に活用できるように端的に「褒め方」についてお伝えします。
「褒める」には2種類ある
最初にクエスチョンです。
小学校6年生の子どもが(あなたのお子さんでも生徒さんでも、親戚の子でも構いません。想像しやすい相手でイメージしてください。)あなたの元に走ってきて言いました。
「テストで80点とったよ」
この子は、あまり勉強が好きになれず、テストは50点前後を行ったりきたりしていました。
さあ、あなたはどのように褒めますか?
A:80点もとったんだ!すごいじゃないか。優秀だなあー!
B:とっても感激したよー!うれしいなあ。
どちらが多いでしょうかね。
これまでいろいろな方に同じ質問をしてきたのですが、
「思わず、Aの方を言ってますね」
という方が多いように感じます。
「Aを言って、その後、Bも言っている気がします」
という方もいらっしゃいます。
皆さんは、いかがでしょうか。
AもBも、良い/悪いということではありません。
どちらも相手を「承認」していること、そしてポジティブに捉えていることは同じです。コーチングの目線では、どちらも相手を「褒め」ていることに入ります。
では、どこがちがうのか?
Aが「評価」しているのに対して、
Bは「事実」を伝えている
という点です。
もう少し詳しくいうと、
A
主語は「相手」
判断や評価、解釈している
B
主語は「わたし」
自分の中に起きた変化をそのまま言葉にしている
ということになります。
日常会話の中で、「褒める」というと一般にはAの言葉が近いですよね。これは「YOUメッセージ」と呼ばれています。主語が「相手」。
「よくがんばったね」
「立派だね〜」
と言われたら、嬉しい人が多いでしょうが、この「YOUメッセージ」は、
実は【カラブリ】することがあるところが注意点です。
80点とった子に、「すごいね、よくがんばったね」と言ったとします。
その子が、本当にいつもよりも努力して、自分を変えて奮闘したのなら全く問題なし。「みていてくれたんだな」とあなたを信頼して、あなたが好きになると思います。
でも、たまたまヤマをはったところが当たった80点であったり、本人としては100点を本気で狙いに行っていたのに、予想外に20点も足りなかったことを悔しいと思っている場合は…?
「すごいね、よくがんばったね」と満面の笑みで言われても、
「こいつ、わかってねーな」
「何が『がんばったね』だよ。結局、結果しか見てないんだな」
と感じてしまうことになります。反抗期だったりすると、「褒めてんじゃねーよ、何も知らないくせに」と反発が起きることもあります。
また、「80点はすごい」「50点はダメ」という評価を相手に植え付けることにもつながります。YOUメッセージで褒められて育つと、他者からの評価や社会一般の価値観に合っている「すごいこと」を達成しようとする気持ちが大きく育ちやすくなる一方で、自分自身の気持ちを顧みて、目標設定したり行動を開始したりすることが減ってしまうといったリスクも持っています。
これが「YOUメッセージ」のリスクです。
一方のBはと言うと、これは実は自分の感情をそのまま伝えている「I(アイ)メッセージ」と言われるもので、直接、相手を褒めてはいません。
自分が過去に「褒められて嬉しかった」経験がある人や、「褒めてあげたい!」という気持ちが強い時は、「こんなので大丈夫かな?足りるのかな」と不安に感じられると思います。
確かに、褒めて褒めて♡と思って80点を持ってきた相手の場合は、直接的に、「すごいねーーーー」と言って抱きしめてあげた方が嬉しいこともあるでしょう。
でも、「I(アイ)メッセージ」は、相手の潜在意識に浸透すると考えられています。子どもは「自分がお母さん(先生など、相手)を喜ばせている」「自分には幸せにできる力があるんだ」と感じることができるのです。
これは心のつながり、愛情のつながりを生み出します。
自己肯定感のベースにも影響がありますね。
もう1つ。
人が本来もつ力を伸びやかに発揮して成長していくための関わり方として、【褒めない】けど重要なものについて、お伝えします。
「褒めない」けど重要な関わり方
これは、フィードバックです。
企業や組織における人材育成の現場では、近年、特に重要視されている言葉なので、耳にする機会が多い方もいらっしゃるでしょう。
「フィードバック」とは、
評価を交えず、みたまま、ありのままの相手の様子を言葉にして相手に伝えるものとされています。
「褒める」のではありませんが、フィードバックは、
相手に対する確実な【承認】を送るものです。
前出の子どもの例になぞらえて「フィードバック」をするとしたら、
「テストで80点をとったね」
(もし、見ていてそんな事実があったら)
「毎日、勉強机に向かっていたね」
という感じです。
「80点とった」という事実を、
わたしはしっかり受け止めて心に留めたよ、という伝達。
見ていてもらえること、自分が表出したことをそのまま受け止めてくれる人がいることは、確実に相手の中に【承認】の土台を作ります。
日々の言動をしっかり見て観察し、心に留めたら、そのことを伝えるのが「フィードバック」。これがあって、その上で送る「I(アイ)メッセージ」。この2つのセットが相手に届けられると、相手への【承認】を届けることができると考えられています。
この関係が深まり、相手と自分の間に「信頼関係」ができてくれば、サジェスチョン(提案)なども、相手の耳に届きやすくなることがあります。
周囲の人から充分な「承認」をもらっている人は、初めてのことでも、未知の世界に遭遇したときも、落ち着いて自分の頭で考え、行動する意欲を持てるようになります。失敗しても、自己卑下したり嫉妬に狂ったりすることが起きにくくなります。
心の繋がりを人との間に、持てているからです。
まずは、「あれしたら?」「これしたら?」と指示や提案を浴びせるのではなく、地道に日常の観察から始めて、フィードバックを重ね、I(アイ)メッセージを伝えて、本人の感じ方や考え方に耳を傾ける…。
こんな関わりかたを少しずつ始めて行けたら、関係性が代わり、相手の成長速度が変わってくるかもしれません。
大澤 弘子
日テレHR代表/企業の人材育成を支援しています。
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なかなかの男性社会で30年働いてきたテレビマンが、コーチングやカウンセリングで「自分らしく生きる」を支援中。限定少数しか出来ませんが小学生からシニアまで。