【詩】太陽の大きさ
太陽が近づいてきているのだろうか
ホッキョクギツネは空を見上げていた
氷の溶けていく音がする
血の中に刻まれた記憶が
ざわざわと泡立っている
太陽が近づいてきているのだ
ホッキョクギツネは宇宙を見上げていた
全ての氷が溶けて
血がすべて大地に染み込んだら
とても悲しいだろう
太陽から遠くへ行かなければ
穴の中は少し涼しい
けれども太陽はまだ大きいままだ
掘って掘って掘り進んで
すとん と落ちた
血がぐるぐるどかんと巡った
とてもとても冷たい場所だった
ゆっくりと進んでいくといくつかの瞳が
ホッキョクギツネをとらえた
仲間だ
同じ体毛の同じ目つきの動物が
歩いたり眠ったり跳ねたり歌ったりしていた
時折ゆるやかな風が吹いた
太陽はないが明るかった
幸せしかない場所だろうか
敵の姿は見えなかったし
お腹はすかなかった
ここはずっと太陽から遠い場所なんだ
ホッキョクギツネは笑おうとした
したけれど
どごどごと血の中で暴れている
太陽がない
次第に心が軽くなっていった
考える力がとろけだして
こだわりがなくなっていった
それでも血だけが抗って
熱い熱いきらめきを
思い出させようとしていた
ホッキョクギツネはまどろんでいる
決して笑うことはないが
空っぽになった心には悲しみもない
太陽の大きさも忘れてしまった
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