清水らくは
物語を参照しながら、哲学的な問いを考えていきます。
詩と短歌を発表します。
ぐうたらしていたい。
1980年生まれ 熊本在住 哲学・倫理学・将棋講師 元 無責任.zone 所属 元 月刊詩歌誌「無責任」責任者 元 将棋文芸誌『駒.zone』編集長 詩誌『みなみのかぜ』編集長 同人誌『舟』『福岡ポエトリー』『詩誌福岡詩話会』に寄稿 2020 神保堂「はじめての詩創作」講師 第52回植樹祭「植樹祭の詩」優秀賞 2013『詩と思想』現代詩の新鋭 第25回詩と思想新人賞入選 第39回熊本県民文芸賞 現代詩部門二席 2017年度金澤詩人賞 掲載作品 第29回野田宇太郎生誕祭献詩
「どーすんですか!」 ボゴールは、大きな声をあげながら机をたたいた。彼はパイナップル星の官僚であり、稀星祭の担当者である。次回大会についての代表者を相談しに、パイナップル将棋連盟を訪れていた。 「そう言われてもなあ。去年より格段に強くなっている者は見当たらないのだ」 申し訳なさそうに頭をかいているのはゴールド・パイナップル将棋連盟会長である。 「本当にどうするんですか。これでは我々はずっとこんな場所ですよ」 ボゴールは語気を緩めない。それもそのはず、稀星戦の結果は人々の
バント処理、できるかな。 気になるな。 それができたら幸せを感じるよ。 君が投げている姿は、 小象が水浴びをしているようだ。 楽しそうに見えても、 色々と警戒している。 間違えたり、 迷ったり、 そして今その最中かもしれないけれど、 見守って応援して、 拍手をするよ。 きっとすごい球を投げて、 すごい球が外れることもあって、 感情をぐらぐら揺すってくるんだろう。 だから、 バント処理に注目するよ。 バント処理ができたらいいんだよ。 もうすぐ、 藤浪がマウンドに上がるよ。
世界が私を愛しているので、七十七億人が余った。ただし、私は世界を愛していない。それでいいだろう。私は世界を背負わない。世界が吐き捨ててきたものを拾う。あるものは美しくあるものはそうでもない。集める。七十七億人が見つけられないものを見つける。 世界は私を支える言葉を持たない。言葉は彫り出し組み立てねばならない。マッチングアプリで出会った言葉たちが輝くこともある。絆、を解体して、木こり、にしよう。理由は後からつかみ取る。七十七億人の吐息が結晶となる。 実在するものは尊い。ビスケッ
昨年は歌会も出られず、歌誌にも参加せず、ほとんど短歌を発表することができませんでした。とはいえいくらか作っていたものがあるので、まとめてここで発表したいと思います。 ミキサーで混ぜていいもの駄目なもの混ざらないもの全部嫌いだ ココナッツみたいな夢を割っている信じたいんだ中身は甘い 発電所みたいに夢を吐き出してコンセントみたいに絡まっている やあどうも初めまして僕の声独りを一人ひとり増やして おびえるよ君が世界を感じてるそれを感じていると感じて 「お弁当始めました」ワタシ翻訳
カクヨムにて『みんなネタ将』https://kakuyomu.jp/works/1177354055484326409という小説の連載始めています。第1章が終わったところです。『僕の妹はネタ将』『妹弟子はネタ将』に続くシリーズ作品です。よろしければお楽しみください。
季節は常に呼吸を合わせて 同じように巡ってくるから 私も常に呼吸を合わせて いつも同じように迎えていた 同じように 同じように そして 私の花だけ咲かなかった 季節は巡ってきたのに 種を植えて いくつかの儀式をこなして 少し祈りさえすれば 花は咲くものだと思っていた 皆の花は咲いているのに 私のものだけ蕾も付けなかった 花を見ることができない 花を嗅ぐことができない 花を知ることができない それはつまり 季節の完成を知らないままなのだ 巡ってきているのだろうか 花は
あの日君のスカートが風を揺らして 季節は秋に向かった 人々の情熱がかなわなかった分だけ 星々は輝きを増した 君は笑っていた 望みはないから失望もないと 僕は言葉を作れなかった 世界がよどんでいくのを眺めていた 君に手を振った さよなら未満が 伝われと願った きっと君は忘れずに スカートで風を揺らしたのだろう 季節は正しく巡り続けて 僕らはずっと会わなくて あれはさよならになってしまったね そして君は 再び現れた 悲しい顔で 望みも生まれて 失望もあったのだろう 僕より
街に釘を打ち込む 深く深く刻まれていく 今年という傷 光と音楽で印をつける 夜が回ってはまる 子供たちは飛ぶ できるだけ疲れるように 翼が動かなくなって 眠りに落ちる 来年もこの星にいてもらう 契約と引き換えに贈り物が届く 深い穴を掘っている 墓にするための 深くて細い穴 いずれ歴史そのものの 骸を突き落とすだろう 子供たちにだけは存在する 未来という名の領土から できるだけ石を拾う とがった石を拾う 翼の横に贈り物を置いて 夜の役目を終える
「遅かったか」 星に降り立った男は、吐き捨てるように言った。 星には、生物がいなかった。 「はずれはずれはずれ。またはずれだ。出世は遠いなあ」 報告データを作成し、宇宙船に戻った男はごろんと横になった。 Search for All Natural Talent and Alien、通称サンタ。それが彼の所属する組織名だった。ある日並行宇宙からの襲撃を受けたことにより、世界にはいくつもの宇宙があること、そして別の宇宙を侵略しようとする存在のあることを人々は知った。なん
カクヨムで連載していた小説『さよならビッグ4』が完結しました。大学将棋部を舞台にした作品です。 「ビッグ4」とよばれた強豪4人組の存在により、地方の公立校ながら全国2位にまで躍進した県立大学将棋部。しかし彼らの卒業により残った部員はたったの4人に。新入生4人の入部により何とか大会には出られたものの、地区大会での勝利すら厳しい状況に。ここから将棋部が、再び全国大会を目指して「再建」していく物語です。 私自身、将棋部の4年間では全国大会から地区最下位まで経験しました。将棋
「大丈夫だよ」を言い過ぎた 人は心を失うらしい 「大丈夫だよ」だけが生き続け 誰かを少し助けるらしい 魔法の言葉だと 分かってしまった後は 全然使うことができない 誰かがまず僕に唱えてよ 月が消えるまでそばにいて それで少し大丈夫だから 太陽よりも輝いて それでずいぶん大丈夫だから 「大丈夫だよ」を我慢して 残った心は何だろう 「大丈夫だよ」だけのせいにして 傷つきながら生きていく
2015年3月21日、電王戦において永瀬六段は、Seleneに対して「△2七同角不成(ならず)」と指して勝利した。プロの指し手で「角不成」が現れるのは非常に珍しい。しかも永瀬は、勝利を確信してこの手を指したのである。永瀬はSeleneの特徴を調べたうえで、「角不成」に対応できないことを事前に知っていた。対ソフトゆえの出来事であり、二度と現れない種類の「角不成」だろう。 角は相手陣に入る、もしくは相手陣から出るときに馬になることができる。そうなると、角の動きを保ったまま、縦
あの日私は 烏になるしかなかった 誰もが誰もを監視しながら 町は少しずつ錆びていった かわいい動物たちは捕まえられて 家の中に閉じ込められた 優しさ柔らかさ甘さ誠実さ それらはすべて記号化された 逃げ出そうとするものは追い詰められ 記号で縛られて晒された あなたは町の外にいた 烏になって飛び出すしかなかった 監視されないもの かわいくもないもの あきらめてもらえるもの それは烏だった 烏は監視されなかった 鉄のにおいから飛び立って 壁を越えていく あなたのところへたどり
カクヨムに『魔王はタイトルに含まれますか?』という小説を載せました。https://kakuyomu.jp/works/1177354054954484141 魔王が五冠王を倒しにくる短編将棋小説です。