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【詩】メイユ・インユ2

あの日君が見せた爪は
まるでバールのようだった
僕に振り下ろして
薔薇のような血しぶきを見るつもりの
ねえ、インユ

あの日君の瞳の中には
飢えかけの獣がいた
一度も食べたことのない
太陽の味を知りたがっている獣
ねえ、メイユ

ひらひらとしたワンピースが
消えかけのオーロラのようだった

冷たい午後の風は
終焉の相図だった

二人はいろいろあって
季節のようだったね

二人はいろいろな傷を
宝石にしていたね

まるで逆回転する時計のようだった
時計が壊れた洞窟の中だった
洞窟に漂う冷気のようだった
冷気は孤独を丁寧に切り裂く刃物だった

白鷺のよう
シジュウカラで
竹林のよう
防風林で
最後の三分間
間欠泉のような涙が
運命を悟ったかのような
灰色のじゅうたんを濡らした

地球がわずかに動く間に
心臓に穿たれたブラックホールが
語るべきアルバムの
リングを飲み込んでいった

ねえ、インユ
世界は誰もいなくなった島の工場のようだ

そうだね、メイユ
いま世界は何も洗うものがない洗濯槽なんだ

→「メイユ・インユ」


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清水らくは
大変感謝です!