熊本パンタグラフ03

【熊本パンタグラフ】3

水俣

 新水俣駅には驚かされる。街はどこだ。
 自転車を借りて水俣駅方面へ。ちゃんと街はあるよ。その向こう、いろいろなものが埋められている土地へ。広い広いところだ。資料館にはぜひ行ってほしい。多分、知らなかったことがいろいろとあるから。
 広大な薔薇園が出現する時期もある。薔薇の香りがするソフトクリーム、おいしかった。


花の香りを抜け
バス停が二本
熊本と鹿児島が
流れ込んでくる
どっちが早いかな
どっちがゆっくりかな
もう一度花を見ようかな


大観峰

 阿蘇にはさまざまな顔がある。外輪山から内側を眺めると、人が寝転んでいるように見える、らしい。
 らしい、というのは、どうも私にはそうは見えないのだ。山は、山に見える。
 天気によっても様相は違う。晴れているときは、広々とした世界の中に、阿蘇が零れ落ちているようだ。そして雨の日には、世界が阿蘇だけになって、佇んでいるようだ。
 毎回新しい景色を見れるのだから、大観峰には、何度行ってもいいのだ。

少年が走って行った
初めての大観峰から
早く景色を眺めたくて仕方ないのだ
私は歩いて行った
本当は
走りたかったのだ
けれども
歩きたくもあったのだ
少年は大きな阿蘇を覗き込み
その後空を見た
私は空を見てから
田んぼの広がりを見た
そして少年も私も
雲間の光を見た
この景色を忘れないだろう
二人とも
ゆっくりと歩いて戻って行く


崎津教会

 天草は遠い。河浦はかなり遠い。
 その地には、キリスト教の歴史が今も生きている。神父不在の中で信仰が続いた例は、世界でも珍しいらしい。
 漁港の中にたたずむのが、崎津教会である。小さな波の音と、澄んだ空気。そして、美しい建物。
 立ち止まるほどに、来てよかったと思えるのだ。

私はかつて祈りを知らなかった
今でも信仰があるわけではないが
祈りがあることは知っている
ここで見ていよう
ここで感じていよう
すると
ここに私がいることがわかる
私を知ることになるのだ

つづく


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清水らくは
大変感謝です!