RAKU-GO-LABOと広島つながり寄席がやっていくこと。
前回、広島で落語会をやります!と書きましたが、何もこれは広島に落語会がないから、私がやります的な宣言ではないのです。広島に帰ってきたのは2年前ですが、既に多くの方々が、広島で落語会を開催されておられることは知っています。江戸落語、上方落語で活躍している芸人さんの来広公演も年に数回あり、その他に地元の天狗連の方々も活動されています。
広島で落語?あ、聞いたことある。知ってるー。けど、別にいいわ。。。
と立ち去る前に、ちょっと待ってください!
今、イメージしている「落語」とは違う「落語」もあるかもしれませんよ!
今年「東京かわら版」から発行された「東西寄席演芸家名鑑」によりますと、現在、東西(江戸と上方)のプロの落語家は、889人。
そのうち、江戸の落語家、つまり、落語協会、落語芸術協会、落語立川流、円楽一門所属の落語家の数は624人。
江戸落語には、入門すると、「見習い」「前座」「二ツ目」「真打」の階級があり、寄席や落語会に入って「前座」としての修行が約5年。その後、「二ツ目」として約10年以上、芸を磨いた後、ようやく「真打」になれます。つまり、入門してから「真打昇進」までは、約15年以上はかかるわけです。(「真打」「二ツ目」など、落語界の階級については、こちらにわかりやすく書いてあります。https://www.geikyo.com/beginner/what_class.html )
「二ツ目」からは、プロとして落語会を開けるようになるので、江戸落語では現在、「真打」が384人、「二ツ目」158人の合計542人が、落語会にスタンバッているわけです。
落語家には定年がありませんから、これだけいれば、年齢層も幅広く、それぞれの世代に人気者がいるのです。しかし、一般的に知られているのは、往年の名人であったり、テレビ番組の「笑点」の出演者だったり。どっちかというと、「おじいちゃん」というイメージ?
ところが、実際には、落語会をいつも満席、発売後即完売にする同世代(=オーバー30としておきましょう。)の人気者がたくさんいます。古典落語だけでなく、新作落語(創作落語)も大いに盛んになっていて、江戸の人々はそれを楽しんでいるんです。これって「落語」という看板だけを知識として知っているだけでは知りえなかったことでした。それを知ってしまうと「えー!こんなに笑える場所あったの?こんな楽しみがあったんだ!」の連続でした。
東京には、末廣亭、鈴本演芸場、浅草演芸ホール、池袋演芸場、国立演芸場という5箇所の寄席の定席があり、国立演芸場以外は、基本365日毎日興行しています。真打はその定席に出演する枠がありますが、上方と違って江戸落語はそれぞれの寄席のお席亭が出演者を決めていくので、待っていて順番が回ってくるわけではありません。お客の呼べる演者が起用されるので、人気者は一日に複数の寄席を掛け持ち出演したりします。
(写真上:浅草演芸ホールのチケット売り場には、男前な看板猫のジロリさんがいる日もあります。)
その他、お江戸日本橋亭、お江戸両国亭など、定席小屋的なものから、プロモーターによるホールでの落語公演、個人や芸人主催の落語会、飲食店、カフェ、ギャラリー、個人のお座敷などなど、、、日々、開催されている落語会の数は、数え切れないほどです。
↑お蕎麦屋さんのお座敷での落語会
「東京かわら版」の落語会スケジュールに載っているだけでも、1日に20前後、多い日には30近くの落語会情報が掲載されていて、毎日、どこかしらで落語が聞けます。同じ日に行きたい会が重なって、クローンが2、3体欲しい日もあります。
つまり、たくさんの人がそれぞれの嗜好(古典派、新作派)、世代(ベテラン、中堅、若手)、交友関係などなど、いろんなご縁で落語会を開催しているのです。
広島で落語を楽しむ場も、いろんな人が、得意の守備範囲を生かして、それぞれのやり方で、伝えたい年代や嗜好に合わせて開催すれば、皆さんの落語との出会いのチャンスが増えるはずです。
私、RAKU-GO-LABOと広島つながり寄席も、その一つとしてスタートしたわけです。
昨年は、寄席が休席になったり、落語会の中止や延期が相次いだ時期もありましたが、今の落語を知りたいと思い、コロナ禍の中、昨年から既に400回以上の落語会、寄席に足を運びました。もちろん、すべての落語家さんを聞けたわけではありませんし、江戸落語のほんの一角です。それでも、聞きかじりではなく、自分の足で行き、目と耳で確かめた落語会の経験から得たもの。それを活かして、広く浅くよりも、自分が面白いと思うところを、ある程度深掘りして、より分かりやすい言葉で発信したり、イベントをお届けしていきたいと思っています。
文化や芸術は、いろんな視点からの発信やイベントがあってこそ、その芸術に触れる機会も増え、やがて「違いの分かる大人」になるわけです。
違いの分かる大人?
例えば、ピアノ演奏。
これは日本では比較的身近にあり、経験者も多い。なので、初心者の弾くピアノとプロのピアニストとの技術の差は簡単に分かります。そのうち、同じ曲でも弾き方やアレンジで、「あ、これは誰々の演奏だ!」と分かるようになったりもするでしょう。
その”違いが分かる”からこそ、レッスン生は技術を切磋琢磨してより上を目指すことできるし、愛好家として演奏会を開いて楽しんだり、お金を払って素晴らしい演奏を聴くという楽しみも生まれてくるのです。そうすると公演も増えて、エンタメ界も盛り上がりますね🌟
ところが、日本が本場の落語はというと…。
25年関わって来たフラメンコもそうだったのですが、フラメンコも落語もその名称は誰でも知っているのに、固定観念的なイメージでひとくくりにされていて、意外と"現状"が知られていません。もしくは、最初に見たものの印象だけで判断されて、「違いの分かる」以前に、違うものがあることすら目に触れる機会もないという感じ。あーもったいない!
それについては、また次回に。
<今月の落語探訪、その壱。>
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