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新作落語も100年経てば古典落語

ご存じの人も多いと思うが、明治34年(1901年)、正月三が日に発行された『報知新聞』には、“二十世紀の豫言(予言)”が掲載されていたそうだ。

これは、一般の人が「20世紀の間にどんな科学技術が実現するのか」を予想した投書をまとめて記事にしたものである。

今で言うスマートフォンやネットショップの利用、エアコンの登場などに通ずるような予想が23ケースほど書かれており、2015年時点で17ケースがほぼほぼ実現しているとのこと。


“近くて遠い100年後の未来に想いを馳せていた先人たち”に想いを馳せるたびに、ワクワクとトキメキで胸が高揚してしまう。

今、これ読みながらBGM流せる人は、『タイムマシンにお願い』をお願い♪ ←

あっ。カエラちゃんのか、本家サディスティック・ミカ・バンドVer.でね。桐島かれんは美人だけどなんとなく違うと感じているので。


「大好きなあの人の写真を撮って、毎日見れたらいいな♪」

なんてことは、20世紀初頭の乙女たちには叶わぬ焦がれた夢だった。

科学技術の発達が今ほどでは無い時代は、胸の中で想うのが精一杯だった。

自分の思想、感情や意志、心持ちや想像力など、自分の内に在るものだけが自分の味方だった。

だから未来予想図に希望を抱いた。

(↑あ。この辺からBGM、ドリカムに変えるべき?)


でも、今の女の子たちはスマホでバンバン写真を撮れるから、いつでも大好きな人の顔を眺めることができる。

今の子たちはこれが特別なことだとは思わない。

「これが当たり前だ」という環境下の現代に生まれ落ちたからだ。


この「当たり前」とは恐ろしいものだ。

「落語って言えば、古典落語だろ!新作落語?そんなの落語とは言えねぇなぁ」

と当たり前に思っている往年の落語ファンは未だに多いのではないかと思う。

そして、噺家さんの中、特に師匠がたにも同じように思ってる人が多くいそうな気がする。


古典落語こそが落語であって、当たり前田のクラッカー!的な。え。

(前田のクラッカー、塩味きいてて美味しいよね!)


古典落語こそが落語であって、それ以外は落語でないという当たり前の思い込み。

例えば、落語演目「宗論」は大正時代に作られているので歴史としては浅い方だし、「猫と金魚」においては昭和時代につくられているのでもっと新しい。

どちらも古典落語っぽく見えるけど、新作と言えば新作なのだ。

「宗論」は“イエス・キリスト”というワードが出てくるし、賛美歌なんて歌い出しちゃうから最近のもののように思えるけれど、「猫と金魚」においては“主人と番頭”の関係描写が出てくるし、設定も内容もシンプルなので古い時代に作られたもののように感じられる。

古典落語と新作落語の線引きって、すごく難しくて定義も曖昧なんだろけど、今この現代において「宗論」も「猫と金魚」も『古典落語』と認識している人がほとんどだろう。

少なくとも私は、「猫と金魚」がそんなに新しいものだと知らなかったのでびっくりした。そして、もっと驚いたのは、「猫と金魚」の作家がかの有名な『のらくろ』の作者である田河水泡氏だということ。

子供の頃、アニメで『のらくろくん』観てたなぁー!懐かしいっ。

そして「宗論」は、旧三井物産・創始者の御子息で、エリート実業家の益田太郎冠者氏が作っている。しかもこの益田氏の生家は、コンドルが設計した『碧雲台』という大豪邸である。ジョサイア・コンドルといえば、文明開化の象徴とも言える、あの『鹿鳴館』の設計者で有名である。


鹿鳴館と聞いてライブハウスを思い出した人、当時ヴィジュアル系バンドのファンでしたね?

鹿鳴館と聞いてゼリー菓子を思い出した人、『彩果の宝石』をちょっと下に見ていますね?

鹿鳴館と聞いて三島由紀夫を思い出した人、一緒に飲みながら語り明かしましょう!

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鹿鳴館では 夜毎のワルツのテムポで今宵も
ポンパドールが花咲き シルクハットが揺れるわ ahahann♪

↑この部分の歌詞がめちゃくちゃ好き。

まさかここで『タイムマシンにお願い』に戻るっていう。笑


大正時代なんて令和時代から見たら遥か昔だから、その頃に作られた「宗論」や「猫と金魚」などは時間の経過によって人々の意識の中で『古典落語』に分類される噺となっている。しかし、その当時の人々からしたら、バリバリの新作落語である。

今まさにどこかで生まれたばかりの新作落語があるのだとしたら、それが物凄くウケて、物凄く流行って、物凄くバズったうえで、ひとりの噺家さんの専売特許にならなければ、口伝のみならずインターネット上で、100年も200年も末永く生き続けたりするんだろうな。


そしたら、それはきっと“当たり前に”古典落語になる。

良いものは永く残るし、また時を経て、より良いものに燻される。

後世に残したいと思える名作落語が、これからもたくさん登場することに期待♪






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