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苦労話は好かれる

インタビューする際の定番の質問として、近況、きっかけ、セールスポイントと並んで苦労話があります。

苦労話は記事の定番になるほど、反応を得やすいポイントなんです。
(デリケートなお話でもあるため、質問するときは気を使います)

私が書いた記事でも苦労話に反応をいただくことが多く、他の方が書かれた記事を見ても、華々しい話より苦労話に対して反響が大きい傾向があります。

一方で不幸話はあまり好かれません。不幸話をネタにするなと不快感を示す人もいます。

なぜ、苦労話は好かれ、苦労話と不幸話は何が違うのか。
そのことから、ライターとして生かせることがあるのか。
本日はそのようなテーマで書いてみます。

華々しい話より苦労話が好かれる

華々しい順風満帆な話よりも苦労話の方が好かれる傾向があります。

たとえば、次のどちらが魅力的に感じるでしょうか。

  1. 大人気の芸人さんが、お子さんに芸能人だと気づかれていなかった。子どもに芸能人だと伝えたら、尊敬してもらえるだろうかと思い、正体を明かした話

  2. 一発屋芸人と呼ばれる方が「父が一発屋だとバレたら、子どもは恥ずしい思いをするのではないか」と思って隠し続けていた。でも、勇気を出して告白した話

おそらく、2と思った方が多いのではないでしょうか。

1の話は想像で書きましたが、2のお話は髭男爵の山田ルイ53世さんのお話を参考に書きました。とても面白い記事です。

一発屋と呼ばれている負い目、それゆえに子どもに自分の仕事を隠し続けていた葛藤、告白するために勇気を振り絞った様子など読みごたえのある記事です。

文章の巧みさも相まって、Twitterでもトレンドに上がるほど話題になりました。

この記事の他、半沢直樹や下町ロケットの例を見ても、苦労話は好かれています。

苦労と不幸の違い

苦労話は反応を得やすい一方で、不幸話は苦労話ほど反響は大きくありません。

苦労と不幸は似ているように見えますが、一体何が違うのでしょうか。
国語辞典で調べると、次のように書かれています。

【苦労】

物事がうまくいくように、肉体的、また精神的に骨を折ること

国語辞典(旺文社)

【不幸】

ふしあわせ。不運。悲運

国語辞典(旺文社)

不幸話と違って、苦労話が好かれるポイントは次の3つではないでしょうか。

  • 不幸はマイナスのままだが、苦労は「物事がうまくいくように」と前向きである

  • 不幸の「運」は自力ではどうしようもないが、努力の「骨を折る」は自力でできる

  • 不幸の「運」のよしあしは個人差があって共感しにくいが、苦労の「物事がうまくいくように」「骨を折る」は経験している人が多いため共感しやすい

半沢直樹も下町ロケットも苦労話です。
大変な思いをしながらも、うまくいくように明るい道を作ろうと努力する姿を描いています。

苦労話からは、勉強や仕事、プライベートなど自分が経験した苦労と重ねて共感し、励みやヒントを得ることもできます。苦労話が好かれる理由はこのようなところにあるのだと思います。

一方、不幸話は「いつもついていなくて。とても不幸なんです」のようなお話です。

「他人の不幸は蜜の味」というくらい、他人の不幸が好きな人もいますが、大ヒットになることはなかなかありません。蜜の匂いを嗅ぎつけて寄ってくることはあっても蜜を取ったら去って行ってしまいます。

苦労と不幸の違いから学ぶこと

先日読んだ阿久悠さんの『作詞入門』に、このようなことが書かれていました。

悲しい事件を歌っても、最後にどこかに救いがなければいけないのではないか

『作詞入門』(阿久悠)p111

苦労話を書くのであれば「物事がうまくいくように」骨を折った結果、「うまくいった」ところまで描くことも重要です。

そうすることで始めて、読者に対して希望や励み、ヒントを提供できます。

阿久悠さんの言う「希望の匂い」をライターとして実現する一つの方法が苦労話なのかもしれません。

そうはいっても、質問されて嬉しくはないであろう苦労話を聞かせてくださるインタビュイーへの感謝も忘れずに記事にしたいですね。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。

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らく
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