【ネタバレ感想】映画すみっコぐらし とびだす絵本とひみつのコ(リバイバル)

※注意※

この記事には「映画すみっコぐらし とびだす絵本とひみつのコ」のネタバレが含まれますので、未視聴の方やネタバレ感想等が肌に合わない方は撤退を推奨いたします。
これらに承諾できる方のみ、どうぞ続きをお読みください。

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〇新作映画公開・おめでとうございます〇

さる2021年11月5日(金)。
映画すみっコぐらしシリーズの最新作「映画すみっコぐらし 青い月夜のまほうのコ」が満を持して公開されました。
株式会社サンエックスで生まれたこのキャラクターシリーズであるこの「すみっコぐらし」。恥ずかしながら私はこのシリーズのファンでありまして、ぬいぐるみやタオル、クリアファイルや衣類等、全てを網羅とまではいかないのですがグッズを収集したりコラボイベントに足を運んだりと、それなりのファン活動を行わせていただいております。
2012年に生まれ、間もなく10周年を迎えるこのシリーズ。可愛いのだけれどどこか目が死に気味で陰のある設定のキャラクター達が織りなす、ちょっぴり切ないけど優しくて暖かな世界観は子ども達だけでなく現代を必死に生きる大人達の琴線にも触れまくったようで、今や同社からリリースされているリラックマに並ぶ大人気シリーズとなりました。
そうです、自分もその琴線に触れられるどころか、琴線をメッタ刺しにされた大人の一人と言うわけです。
先日より公開されたこの新作映画を、最終的に私は七回ほど鑑賞させていただきました。20歳以降、こんなにリピートした映画はそうそう無かったと考えています。アベンジャーズ第一作くらいじゃないでしょうか。
完全に生来のオタク気質が作用しているのを感じます。いやもう本当に。

〇映画第一作を振り返ってみる〇

既に「大ひっと上映中」と公式サイトで報じられている新作映画ですが、今日は一通りの鑑賞を終えたこの心境の下、こちらも予期せぬ大ヒットを繰り出した記念すべき映画シリーズ第一作である前作「映画すみっコぐらし とびだす絵本とひみつのコ」を振り返ってみようと思います。
公開当時、色んな方々へのネタバレを気にしてまごついた結果、なんか中途半端な形でしか感想を出力することが出来なかったこともありましたので…今こそ出力するには持って来いの機会なんじゃないかな、と筆(もといキーボード)を取らせていただいた次第です。
今回がnote初使用だし、どうせなら好きなこと書きたいですもんね!

さて、2019年に公開されましたこの映画第一作「映画すみっコぐらし とびだす絵本とひみつのコ」。
「逆詐欺映画」や「大人でも泣ける」という評価から、一部のアレなオタクに「実質ジョーカー」だの「実質Fate」だの変な誇張をされるような事態も発生してしまいましたが、映画館へ足を運んだ人々には概ね好評を博し、TVニュースで取り上げられたりツイッターのトレンドに載るほどには話題となったので、もしかしたら記憶の片隅に「あぁ、あったねそんなん」レベルで覚えていらっしゃる方もいるかもしれません。
そんな訳で以下より映画鑑賞文をしばかせていただきます。
映画批評はてんで素人な自分ですが、感想をつらつらと書き記していこうと思います。

〇あらすじ〇

これはこの世界のどこかにある「すみっこ」のお話。
寒がりのしろくま、自分が誰か分からないぺんぎん?、気弱で恥ずかしがり屋のねこ、食べ残されてしまったとんかつ、本当は恐竜であること隠しているとかげ――それぞれ様々な事情を持つ「すみっコ」達は、今日ものんびりとお部屋のすみっこを譲り合ったり、積み上がってのんびりしたり、皆で思い思いの時間を過ごしていました。
お腹が空き、近所にある「喫茶すみっコ」へやって来たすみっコ達。
注文をして待っていると、何やら地下室から怪しい物音が聞こえてきます。
全員で降りた地下室で音の出所を探っていると、そこで一冊の「飛び出す絵本」を見つけました。
その本を開いたのも束の間、突然絵本が大きくなって強く光り出し…すみっコ達はなんと、絵本の中に吸い込まれてしまい…!?

〇感想○

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最初、「すみっコぐらしが映画化される」と聞いて、サンエックスの公式で流れているあの動画で映画…?
と不安で仕方なかったけれど、いざ行ってみたらすみっコ達が綺麗なCGで、且ついつものあのゆるい雰囲気は失わずに動くこと動くこと!
冒頭からしてねこの1アクションごとに動く耳とか、ちょっと左右に身体を揺らしながら走る姿に照れ隠しの感情を付随させるなどすごく可愛い。
とんかつがからしやケチャップのチューブから砲弾のように一発ずつ発射した調味料を頭に乗せるのとかも「えwそうやるんだw」と思わず笑っちゃうコミカルな動きですげー可愛いw

感嘆したのは公式あらすじの残されたとんかつがコロンと転がってこちらを向く描写。
これまでリリースされた絵本や公式の紹介イラスト等ですっかり見慣れた描写がフルで再現されていました。

個人的には本当に「子どもが観て分かる、楽しいアニメ映画」を目指した造りになっていたと思うのですが。それにしても丁寧でした。丁寧オブ丁寧。
シナリオにしても描写にしても演出にしても、全く手抜きが無い。
全てにおいて一定の意図の下で手が入っている。
それでいて製作者の驕りのようなものがない。
「この作品はこうやった方がより楽しめる!」とか変な経験値からくる自信過剰な原作破壊が全然ない。
「子ども向け」を「本気で」やっているから、基本的に精神年齢が低めな自分のようなオタクにも、お子さんと同じ目線で物を見ることのできる保護者にも、琴線に触れるエモーショナルな部分が多かったのだと思います。

※余談※
さんざっぱらツイッター上で「実質Fate/EXTRA」とか妙な例えをオタクにされてしまっていた件は本当に残念でならない。
前もツィートで言ったことがあるのですけど、「すみっコぐらしが泣けるのはいつものこと」なんですよ。
いや、本当にそうなんです。メインの書籍シリーズは三冊出ているけど、そのどれもで涙腺に刺さるシナリオが多くて(とかげのおかあさん編とか泣いた人多いと思う)。
こういう感想を言う時に「実質○○」って言ったり、オタク受けしそうな言葉に置き換えて大喜利っぽく紹介するのは元々好きではないのだけど(演出の近似性なんかを表す際、引用として他作品名を出すのはアリだとは思う)、この時ばかりは自分の好きな作品でそれをされる側になってしまったことで、「そういう大喜利ネタみたくされるのはちょっと…」って方の気持ちを痛感した。
ここは自分もしないように気を付けようと思う。
※余談ここまで※

〇映画化について〇

前述の通り、こういうキャラクター物の映画化って「それまでの世界観から乖離するような描写」が出ちゃう場合とかあったりするのだけど、今回の場合は従来のファンも納得する「いつものすみっコぐらしっぷり」だった。
原作者のよこみぞゆりさんが深く監修に関わっているとのこともあり、とにかくこの数年で作り上げてきたシリーズの世界観を壊さない努力が随所に見受けられました。
せいぜいとかげにこれまで出たことのない新技(?)が有ったくらい。
実際、まんきゅう監督はインタビューを見るに、この点をかなり意識していたように思えましたね。すみっコ一人一人に違った個性があることをしっかりと認識していらっしゃったように思います。
あとは「すみっコを喋らせない」という判断をしたのはたいへんな英断だったと思います。
よこみぞさんきってのお願いだったそうで、当初アニメスタッフ側は声がついている方が演出もしやすいと思っていたようだけど、結果的にはイノッチと本上さんのツインナレーション形式にして正解だった、と言ってましたね。
自分もそう思います。
すみっコのセリフ等はシリーズで見慣れたフォントが用いられていて、派手じゃない分平仮名が多用され、子どもも目で追えるテキスト量なのが良く配慮されていました。

イノッチはメインのナレーション。観客とスクリーンの中の世界を繋ぐ橋渡しの役割なので、すみっコ達にツッコミを入れたり、すみっコの台詞を代読してくれたりもする。
彼の声質がまさに優しいお兄さんなものだから、すみっコぐらしの柔らかな世界にはとても良く合致してたと思います。

一方の本上さんは、すみっコ達の冒険が繰り広げられる舞台となった「せかいのおはなし」の絵本に吸い込まれた後、各お話のあらすじを読んでくれるナレーション。
抑揚を付けすぎず、ゆっくり・はっきりとした喋りはアレ、絵本読み聞かせのプロの人達がやってる読み方で、女声であることからお母さんがお子さんに読んでいるかのような状況を自分は連想しましたな。
とにかくこのナレーションが実に良い、絶妙なバランスをしていた。こういう構成のアニメ映画なんて観たの、何年ぶりだろう。
後で購入した小説によると、本上さんのナレーションは一部「劇中ですみっコ達にも聞こえる態で響いている」もののようです。
なので、この辺の役割分けもかなり面白い。

シナリオ全体として注目すべきは、構成がほぼ群像劇であることは素晴らしかったですね。
中盤~終盤にかけてぺんぎん?とひよこ?の交流にフォーカスが当たる回数が多くなってこそいましたが、基本的にメインのすみっコ達全員の冒険と、キーキャラクターであるひよこ?との関わりがあり、誰が欠けてもダメなシナリオになっていたのは個人的にかなり評価が高かったです。
次項では、そのキャラクター達について個別の感想をば。

〇すみっコ達について〇

各すみっコの簡単な解説を書いていきますね。
〈しろくま〉
寒さが苦手な人見知りのしろくま。「北から逃げてきた」という強烈な紹介文に草を禁じ得ない。相棒となるふろしきと共に文字通りの脱北(北極出身)を果たして今に至る。
最初の頃にすみっこに辿り着いたのは彼。DEXの能力が滅茶苦茶高く器用さではナンバーワン。
裁縫や工作、お絵かき、料理など技術を要する場面で活躍する。
絵本の中の世界では「マッチ売りの少女」に変身。
雪の降る同世界ではひよこ?や現地で知り合ったきつねと共に脱出に挑む。

〈ぺんぎん?〉
緑色をしたぺんぎん?
自分が何者なのか記憶を喪失しており、日々自分探しに精を出す。
協調性が少ない分、衝動的に動くことが多々有りムードメーカー的な側面を持つ。
昔は頭に皿が有ったり、川を流れていたらしい…故にメイン五人の中で彼は幻獣種の可能性が高い。
しろくまとは争うこともあれど、互いに長い付き合いなのか信頼度が深い。
普段から本を読みまくっている為かINTが高く、知識も豊富で絵本の中の各物語についても理解度が高い。
迷子のひよこ?に自分を重ね合わせ、「この子のうちをさがそう!」と提案する。
絵本の中では「アラビアンナイト」のアリババに変身。空飛ぶ絨毯に四苦八苦。

〈とんかつ〉
油っぽいからと食べ残されたとんかつのはじっこ
何を言っているのか分からないと思いますけど、この世界では食べ物にも顔が描かれていて感情があるらしいです。
残された料理が動き出すのもそう珍しくないので仕方ないでしょう。
「誰かに食べてもらいたい」という食べ物の本懐を遂げるべく頑張っており、同じ食べ残し同士であるえびふらいのしっぽとは無二の友。ただ最近カップルにしか見えない。
絵本の中では「赤ずきん」に変身。おおかみの襲撃から逃亡するが…?

〈ねこ〉
ふっくらした丸い猫。
食いしん坊で体型を気にしており、極度の恥ずかしがり屋。
かつてはきょうだい達と箱を共にする捨て猫だったのだが、ごはんを独り占めして自分だけが太っていた為に拾ってもらえず野良猫となった。
設定では三毛猫なので恐らくこのコだけメスだと思われる。
過去の自分を恥じており、自分よりも他の皆を気遣える優しい性格。
ざっそうとはそんな猫を常に励ましてくれる友達同士。
絵本の中では「桃太郎」に変身。
いぬ、さる、きじ達と共に鬼ヶ島へ向かう。

〈とかげ〉
珍しい青色のとかげ。
実は恐竜(恐らくはプレシオサウルスのような首長竜)の生き残り。
研究者達に捕獲されてしまうのを恐れて自身を偽っており、そんな自分に「うそつき」と罪悪感を覚えている。
海にいる「おかあさん」とは何らかの理由で離れて暮らしている模様。
かたつむりに憧れて殻を背に乗せている、実はなめくじのにせつむりとは、自分を偽りながら生きる親友同士。
普段は森に居を構えて暮らしており、皆が住んでいる「すみっこ」には少し遅れて合流した(戦隊で言う追加戦士みたいな感じかな…)
なお、彼のみ喋る時に口が動く。


〇各キャラクター所感〇


【メイン五人について】
先に「群像劇」と書きましたが、何故ライゾウさんがそう感じられたかと言いますと、メインとなるすみっコ5人に対して明確に役割が割り振られていた点が大きいからなんですね。

・ゲストキャラクターとの交流:しろくま、ぺんぎん?、とかげ
・「いつもの」すみっコ描写兼コメディリリーフ:とんかつ
・「いつもの」すみっコ描写兼舞台装置の転換役:ねこ

ざっくり分けるとこんな感じでしょうか。
特に今回、キーキャラクターとなるひよこ?と特に強く絆を結ぶぺんぎん?は、所謂舞台芝居等に見られる「群像劇の主役」に近いポジションも兼ねているように思います。
新作映画の方でもゲストキャラクターと既存キャラクターの交流が軸になった描写がありましたが、前作であるこちらはまだそう言った構成にはなっていませんでした。

すみっコ達って、全員が全員何かしらのネガティブな部分を抱えているんだですが、一緒にのんびりとした時間を過ごしている一方、それに対して互いに過干渉せずにいる距離感というか、彼ら一人一人が互いの関わり方を大事にしている所が自分は好きですね。
それでいて、誰かが困った状況になったりすると進んで助け合う。
各自に「いつか達成したい大目標」があるのに、何か仲間が困っていたりすると「助けてあげたい小目標」の方を超優先しまくる。
これまでそう言った流れのシナリオは少なくなかったと思います。
相手の価値観の奥深くまで突っ込んでいかない、根掘り葉掘り聞いたりしない、非常に現代的な優しさを持っているのではないかな、と感じることが多いです。

今回のキーキャラクターであるひよこ?はどこから来たのかも、自分が何者なのかも良く分かっていない訳だけれど、そんなひよこ?にぺんぎん?は「親近感を覚えた」なんて、たったそれだけの理由で力になろうとするし一生懸命励まそうとする。
ぺんぎん?だって自分が何者か分かっていないのに、自分のことそっちのけで彼のおうちを探そう!と皆に提案して皆を巻き込んでいく。
皆は別にそんなぺんぎん?を疎ましくは思わない。
そういうある種の「優しさ」に抵抗が無いキャラクター達だからこそ、こんなに魅力的に思えるのではないかな。
ひよこ?と交流を深める他の二人にしてもそう。
しろくまは飛ばされたお話の世界が「マッチ売りの少女」で、ロケーションが「大晦日の雪の夜の屋外」なんていう超絶アウェーにも関わらず(しろくまは寒さが大の苦手です)、寒がっているひよこ?にマッチを松明にしてあげたり、自分の相棒のふろしきを巻いてあげている。自分は鼻水垂らしてブルブル震えまくってるのに

とかげも一人で黄昏ているひよこ?に対して親身におうちが見つかったかを積極的に尋ねてあげたり(とかげもとかげで海に住んでいるおかあさんと離れて暮らしており、一時期孤独な日々を送っていた)と、積極的に気を遣い、特に会話を交わさずとも隣に居たのは「誰かと一緒にいる」暖かさを知っているからだと思う。

「自分が誰なのか分からない不安を知っている」
「寒さのつらさを知っている」
「仲間の居ない孤独を知っている」

三人のすみっコ達は、自分が一番辛いと感じるものを知っているからこそ、同じ辛さを感じているひよこ?に、少しでもそのダメージが和らぐように動いていました。多分、本人達としては全然意識してやってるものではなくて、あの各キャラクターの設定ならこうなる筈だ、という形で。
ここが本当にいつものすみっコぐらしの延長でね、大々々好きです。

とんかつとねこについては、先に挙げたコメディリリーフと舞台装置係の他に、絵本の世界の住人達との交流の面でも光っていました。

とんかつ&えびふらいのしっぽのあげものコンビ推しとしては、「赤ずきん」のおおかみに自ら「食べてくれるの!?」と迫るとんかつ赤ずきんは爆笑でしたけど、彼にしてみれば相棒のえびふらいのしっぽ共々おいしく食べてもらえるまたとない機会な訳だから、オチの後は一抹の寂しさが残っており切なかった…
とんかつとしっぽについては、何と言うか「保護者と娘」にも「親友同士」にも「カップル同士」のどれにも見えるあの関係性が良く出ていて大満足でしたね。

画像1

て言うか赤ずきんのとんかつが可愛すぎるw(画像引用先:映画すみっコぐらし公式サイト)
あと、えびふらいのしっぽに白いもこもこパンツ穿かせただけで「これはウサギです」でやり通す製作陣の芯の強さほんとすき。

細かい所なんですけど、ひよこ?との関係性が一番薄い為に彼の正体に迫る第一段階のシーンで、メイン5人が「えー!?」みたいな驚き顔している中、一人だけ (・・ )? みたいな顔してリアクションが薄いのが非常に細かいと思いましたね。
各自のコミュニケーション状況がきっちり管理されているんですよ。
とんかつは結構なマイペースキャラなのと、そこまででひよこ?に対しての思い入れ度合いが薄く、関わっていた時間が五人の中で一番短い点をハッキリと差別化させていた所が凄い。
これ、ひよこ?に対しての感情の度合いを均一化してないんですよね。
安直に「全員でリアクション取るシーンだから、みんなで同じリアクションさせよう」をやっていない。
最初は何故か分からなかったんだけど、二回目くらいから「ひよこ?に対して優しく接する動機はそれぞれで違っている」ってことなのかなと感じた。
もしそうだとしたらこんな細かい所にまですみっコ達を「個」として描写していることになるので、本当に凄いと思う。
ねこも時間的には同程度なのですが、彼女は恐らく前述の他者を一番良く見ている気遣いの性根を、ひよこ?への優しさの根拠にしているのだと思います。

そんなねこはフィジカル面で大活躍でした(笑)。
おにに驚いて穴掘りをしている時、良く見るとちゃんと爪がにょっきり出てるのが芸細。
彼女の特徴と言えば恥ずかしがり屋な所と、その優しさ。おなかを空かせたおにへきび団子をあげて、友達になった優しい桃太郎は何ともねこらしいお話でほっこりしました。
(ねこはこねこ時代、きょうだいをおしのけてごはんを独り占めしてしまったことに強い後悔と罪悪感を感じている)
これも先の三人と同じなんだけど、「空腹のつらさを知っている」から出来る行動で、ねこについても各キャラの持ち設定を活かしていると思った。
あと、地味ながら群像劇に良くある「コイツが居なかったら詰んでいた」担当でもあったと思う。
ねこが穴を掘りまくって各おはなしの世界の境界となるページを破壊した結果、本来は絵本の中のギミックで行き来できるものを、全ての舞台装置が一ヶ所に集まってあのクライマックスに繋がったのではないかと思います。
何と言うか、全てを壊し!全てを繋げ!な感じでした。本当に。

ちなみに、まめマスターの喫茶店で五人が頼んだ料理は

とんかつ:ホットケーキ
ぺんぎん?:サンドイッチ
ねこ:オムライス
しろくま:ナポリタン

だったと思う。とかげだけ忘れちゃった。めだまやきだったかな。
まぁいいや。家にDVDあるしあとで観て確認しよう(使命感)


【みにっコ達可愛すぎ問題】
五人のすみっコ達の他、ちょっと小さいサイズのキャラクター達は通称「みにっコ」と呼ばれている。
今回は導入部分に出て来た森に住んでいるみにっコ達を除くと、ふろしき、えびふらいのしっぽ、にせつむり、ざっそう、たぴおか達、ほこり、そしておばけが多く活躍していた。
まめマスターは若干扱いが異なるみたいw

物語を脇で支えるみにっコ達も大活躍…と言うか動きがいちいち可愛い

・とんかつとずっと手を繋いでるえびふらいのしっぽ(萌える)
・パリピプリンスにせつむり
・タイタニックやるたぴおかとほこり
・ずっとにこにこして楽しそうなざっそうの安心感
・おばけが「ぐわっ!」をちゃんとやってくれた!
・チューチュートレインするたぴおか達
・パラパラを踊るたぴおか達
・ざっそうと共に行軍していくたぴおか達
・ブルジョワジーと化したたぴおか達
・えびふらいのしっぽの手がかりにされる黄たぴおか

たぴおかの描写に余念なさすぎだろ!!wwwww
気付くと増えてるし、最後本当に全員絵本の世界から帰ってきたのか非常に気になる…絶対10匹以上残ってるでしょアレ…


【ひよこ?について】
今作のキーキャラクター、ひよこ?
おうちがどこかも、自分が何者なのかも分からない迷子のひよこ?。
正直、ひよこ?の見た目と題材が絵本ってんで大体のストーリーラインは予想しておりました。
まぁ、子ども向けアニメだしこんなもんだよねー、なんて。
「どーせみにくいアヒルの子なんでしょ?w」と。

自分はあの時の自分を全力で一本背負いしたい。
ごめんなさい、ナメてかかってました。自分が浅はかでした。
こんなに泣いたのは、アベンジャーズ・エンドゲームでキャップが老人として帰ってきた時以来だと思います。
クライマックスで判明する彼の正体は「絵本の後ろの空きスペースに描かれたただの落書き」でした。
「誰でもない」
「皆で探していた帰るべき家も元から無い」
「仲間も居ない」

ということだったのですが、最初自分はポカーンと呆気に取られてしまい、数秒経ってから頭が一瞬真っ白になりかけました。
なんだその重い設定は…と。
ひよこ?の正体を知って悔しそうに涙するぺんぎん?の姿は本当に辛そうで、心が痛かったです。
ぺんぎん?にして見れば喉から手が出るほど欲している「自分は何者なのか?」というアイデンティティに対する回答が「この子は何者でもありません」だったのだから、そりゃ悔しいし涙するに決まっている。
ここでも各キャラクターの設定に基づいたリアクションの差分が作られているのは本当に見事で、他の皆はただ落胆するだけだけど、涙しているのはぺんぎん?だけなものだから凄く辛かった。
しかし、そこはすみっコ達。
持ち前の優しさでひよこ?を自分達の仲間に加えます。
しろくまが道中で拾っていたお花を皆に配り、「仲間の印」と皆で共通認識を作る場面が暖かい。
更には彼の住む場所は「絵本から出て自分達の世界へ行こう」と誘い、解決方法が見つかり、みんなで「やったー!」と力を合わせてハッピーエンド。




…に、なりませんでした。
「絵本の中の住人達は外には出られない」という残酷な現実がもう一つ存在していて、すみっコ達がどんなに頑張っても変えることはできない仕様になってました。

「救いはないんですか?」
「そこに無ければ無いですね!」

なんでだよ!!!!!
「奇跡は起こらないの?」と思っても、しっかりと「奇跡はもう起きている」状況だから困る(クライマックスでひよこ?の涙によって奇跡が起こり、現実世界へ続く出口の光が閉じるまでの時間が延長されている)
絵本の中の物品も同様に外へ出られないので、現実世界へと戻っていくすみっコ達の身体から「仲間の印」のお花が取れて、無数の花びらになって散っていく光景で

「あぁぁぁ…ダメ…ダメだよ…散っちゃう…花が散っちゃう…!」

とライゾウさんは狼狽して泣きっぱなしでした。
でも、当のひよこは泣き叫ぶことも嘆くこともなく、出口へ続く皆で作った「絵本パーツの塔」を小さな体で支え、涙を流しながら手を振っているんです。

画像2

(画像引用:映画すみっコぐらし公式サイトより)
後日購入した小説版によれば、手を振っているひよこ?は笑顔なのだそうです。
なんだよそれ。
ナレーションもここに来ると最後に一言入るまで無くなっていて、完全に文字と画だけ。
このどうしようもないルールを知るぺんぎん?の思考描写も本当に上手で、まんきゅう監督には頭が上がりません。
ていうかアーム先輩で泣く日が来るとか思わなかったよマジで。
一生懸命出口を支えるアーム先輩カッコ良かった。
もうここまで来ると涙腺には地獄でした。
涙も鼻水もドバドバで、書いてる今もちょっと思い出し泣きしそうになってます。

「絵本の外に出られない落書きのひよこは、いつまでも、手を振るのでした」
ってナレーションが切ない。

駆けつけてくれた絵本の住人達もまた寂しそうでね…。

【ライゾウ、大いに泣く】
泣きました。
いや、あんなん泣くなって方が無理だ。
少なくとも自分の涙腺には強烈に効いた。
親子連れのお客さんも何度か目にしたけど、息子さんそっちのけでめっちゃ泣いてるお父さんがいた、やっぱりお子さんにも分かる感動は、大人にも効くんですな。
後は三回目だったかな。
二つ隣に座っていた小学生くらいの女の子がべそべそと泣いていて、終わって照明がついた後、持ってきたぺんぎん?の大きいぬいぐるみをギュッと大事そうに抱きかかえていました。
あれはきっと、ぺんぎん?を慰めていたんでしょう。

【エンドロール】
しかし、そんなビターな結末で終わらせないのがこのすみっコぐらしというシリーズ。
絵本の世界から帰ったすみっコ達はなんと、絵本の中にいるひよこ?が寂しく無いよう、彼の落書きの周囲へ彼のお家を作り、お花畑を作り、そして自分達に似せたひよこ達を作りました。
ここで自分達の姿をそのまま作るのではなく、ひよこにしているのが素晴らしいですよね。
そもそもすみっコ達も種族も違えば境遇も違う。
何となく一緒にいるから仲間とは言えるけど本質的に同種ではない。
でも、ひよこ?は仲間を探していたから。
だから似姿のひよこ達を描いたのだと自分は考えています(しかもちゃんとみんな「仲間の印」のお花を付けている!)。
「ひよこ?に仲間は居ない」
「すみっコ達との別れも回避しようがない」
この二つの残酷な現実に対して、すみっコ達が出す答えはもう無限大の優しさとも呼ぶべきそれで、これまで原作を追ってきた自分個人としても解釈一致でした。
個人的に基本、すみっコぐらしという作品の短編はハッピーエンドではあるんですけど、ベストな結末ではないベターなハッピーエンディングが多いと考えています。
例えば、とんかつとえびふらいのしっぽが二人でスーパーに並んだ時、とんかつだけがお客さんに持って行かれたけど、とんかつはしっぽを一人ぼっちにすることに耐えられず、そこから飛び出してえびふらいのしっぽの所まで走って戻り、「あげものセット」として結局二人で売れ残った、という話があります。
(参考:書籍「すみっコぐらし~このままでいいんです~」より)
自身の命題ともいえる「誰かに食べてもらう」こと(ベスト)よりも、「大事な友達と一緒に居る」こと(ベター)を選んだ結末。
ベターがベストを上回るエモーショナルさを生んでいる。
すみっコぐらしの良さはこれだと個人的には考えています。
ここら辺は同じサンエックスの「センチメンタルサーカス」にも程近い雰囲気を感じますね。

そしてエンドロールでは、原田知世さんの「冬のこもりうた」に乗せて、一人のままだったひよこ?のもとへ仲間である五人のひよこ達が現れ、一緒に暮らしたり、絵本の住人達と遊んでいる姿が描かれていました。
そこでまた爆泣きですよ。
ひよこ達はメイン5人の思考を持っているようで、緑色のぺんぎん?ひよこちゃんは再開時にひよこ?へいの一番に抱き着いて号泣してましたw

そういえば。

とんかつの形してるひよこは…あれは「とりふらい」とか「ちきんかつ」なんだろうか…w

〇まとめ〇

(画像引用:映画.comより)

長文乱文と相成りましたが、「映画すみっコぐらし とびだす絵本とひみつのコ」の感想でした。
ちょっと気になって同年公開されたアニメ映画を調べてみたところ。
・天気の子
・ONE PIECE STAMPEDE
・ドラゴンボール超 ブロリー
等ビッグタイトルから
・劇場版 Fate/stay night [Heaven's Feel] ll.lost butterfly
・劇場版シティーハンター 新宿プライベート・アイズ
・ミュウツーの逆襲 EVOLUTION
等根強いファンを持つ作品が並んでおり、実写でも
・アベンジャーズ エンドゲーム
・翔んで埼玉
・名探偵ピカチュウ
等の名作や秀作が並ぶ激戦の年でした。
コロナ禍前と言うことも有り公開本数も多く、良い評価を得た各作品が名を連ねる中、すみっコぐらしは後発となる11月に公開され、取り扱っていた映画館は全国的にはやや少なめにも関わらず興行収入は 14.5億円と言う、子ども向けアニメーション映画としてはかなりのスマッシュヒットを記録しており、本当に良かったなぁと思います。
まんきゅう監督には感謝しかありません。
彼は他のアニメでもそうですがキャラクターごとの個性が出る動きをかなり大切に描くので、すみっコ達もそれぞれで動きに差をつけているなどの演出がとても光っていたと思います。
とんかつやえびふらいのしっぽの足音が、揚げ物を食べる時のサクサク音っぽいのとか面白かったです。

数字の評価が良かったのは勿論嬉しいのですが、これが新作に繋がったことが本当に嬉しいですね。
大のオッさんがすみッコぐらしなんて可愛いキャラクターを好きだ、ってのも噴飯物かもしれないですけど、この映画第一作は本当に奇跡のような名作アニメだと思いますので、良ければ皆さんも観ていただけますと幸いです。

なんなら貸すよ!本当に!

以上、お読みくださりありがとうございました。

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