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手帖

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ちいさな記録 雑記帳
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あらしはこない

あらしはこない

窓を水滴が伝ってく。

なんの野菜が残っているかな。かぼちゃのスープが飲みたい。うさぎのまんがを閉じて布団からでよう。風のおとが強まる。

「きのうの筍煮たので筍ごはん炊くから」
それなら卵焼きを焼こう。

どこにも行かないのは雨のためでもつよい風のためでもない。

うなぎ

これからうなぎを食べに行く。
まだ二週間もあるけれど無事に年を越せるお祝いにと。
うなぎは苦手だったはずなのに、うなぎが食べたいと、ある日好みは変わる。うなぎが食べたいと言い出して、家族みんながまさかと思う。

年が越せることよりもたったいま会えていることがめでたい。あしたはもう会えないかもしれない、それはいつでもとなりあわせ。こうして窓ぎわでミルクティーを飲んでるすぐとなり。

いまのわたしの手

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あらしがくる

あらしがくる

雨が降り出しそう。摘んだ撫子は七本。
きのうの歩き疲れたままにスーパーへ行く。
切り身じゃないまとめられた半端な鮭、鮭そぼろをつくろうか。

これからあらしがやってくるのだろうか。雨が降り出した。南風に運ばれる蛙の鳴き声と柿の葉のにおい。雨が入るから、南の窓は開けてられない。

牡丹華

牡丹華

真紅の薔薇を飾ろうか。
見切りで安くなっていた咲きかけの白い芍薬を買ってきた。白いベールが揺れるような、降りそそぐ月のひかりをきのうみた。
ふりまく白いひかりが似ている。
水切りをした途端、一本が呼吸をするように華ひらかせてその夜バサバサ音をたてて零れた。  

牡丹華のまえの月夜

牡丹華のまえの月夜

きょうの月のひかりはベールみたいだね。

どら焼き

どら焼き

きょうはどら焼きを買いに行こうか。
一度食べただけの、皮が美味しかった、いちばんすきなお店の。
好みの皮は、なかなか見つからない。

ちいさな店。
かしわ餅は、好みじゃなかった。
いちばんすきなどら焼きの店。

辿り着けるのなら、その角に現れる。
また来れた。

二月四日

二月四日

春のお祝いはちらし寿司。
梅と紫蘇漬けを加えた寿司酢でほんのり桃色ごはん。

お正月のお雑煮に入れてくれる結び三つ葉、えんを結ぶという意味があるなんて知らなかった。

巻きからちらし。

二月三日

善哉。
振る舞い追儺のおぜんざい。
よきかなよきかな。  

関西のほうでは節分に食べる追儺のおぜんざいがあるらしい。厄祓いにぜんざいを振る舞うのだとか。

ただぜんざい食べたいだけ。二日前から豆を炊く。
まめ炊きは愉しい。

はしっこ。
家にあるもの集めて七福。
太巻きは愉しい。  

春がくるね。

二月一日

家に帰ったら盛られてた。
鏡餅からいま揚げ餅へ。

一月十三日

一月十三日

わたしのきょうの一時間を出迎えられて見送られた。たったひとりのいましかない一時間を。
三春のごちそうのあと、ちょっとはやめの小正月。

出迎えて見送る、ただそのくりかえし。
きっといつの瞬間も。

一月十一日

一月十一日

鏡開きの晩ごはん。ふっくら炊けたよいおしるこ。われない鏡餅、時間をかけてカラカラになったら揚げ餅へ。冷凍庫ののし餅でおしるこ。
ただおしるこ食べたいだけ。

一月七日

醒めるようにすっとした日曜日のあさごはん。下ゆでした春の草たちとコトコト炊いたお米とのびる餅。  

おかゆのあとのおやつ。
やりたかったのはこれ。
祝福のあまり。  

一月六日

土曜日のあさごはん。たまご焼きときゅうりと甘く煮た油揚げとおせちの余りを太巻き。ひとくちで頬張る。祝福の余韻を。

一月三日

一月三日

三ヶ日のさいごはちらし寿司。ゆったりと流れる祝福。よきかなよきかな。
ねがいは、そのひとがいつでも安心して、しあわせに無邪気に笑って生きていますように。どうもありがたい。