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僕はこうしてXジェンダーだと気付いた

僕がはっきりと他の女の子と違いが出てきたのは、小学校高学年の頃からなんだと思う。服装が完全に男の子のものになって、他の女の子と話すのがちょっと苦手になって、男の子と話すのが好きになって、女の子と噂話とかするよりも男の子と用水路に遊びに行く方が好きになった。小学校高学年になってから、それぞれの性別でまとまって過ごすようになって密かに、どうして性別で離れてる過ごしてるんだろう?って思っていた。

実は今ではそういうことないんだけど、中学生までは不定期に「女の子らしくしようキャンペーン」があった。急に女の子っぽくなりたい時期がきてある日突然急に終わる。その間は基本女子といる。好きになるのは男の子だけ!いろいろ小物を買ってみるとか訳の分からないことをしてた。ある日はっとなって自分何やってんだよ………ってなる。で、僕にはいらんってなる小物を片っ端から捨てて、男の子と今まで通り話す。それを5回くらい繰り返した。でも、女の子らしくしようキャンペーンの間も私服のスカートは基本履かなかった。キャンペーンを繰り返すたび、僕は女性なのか、それとも世間でからかわれそうなオナベというやつなのか?と自己嫌悪に陥った。それでも「これは思春期の悩みだ!」とこじつけていたのだった。

中学校に上がる頃二次性徴がきて、自分の体が変わっていくことが怖かった。それを誰かに相談しようとしても、普通にしておかないと何か言われるのでは………という思いのせいで相談できず、確実に女子って見えるようにしなくちゃ………という思いにも囚われていた。

かなり不幸なことに僕は人よりも成長のスピードが速くて、中学生の半ばからは「胸盛ってる」とか「男に媚びてる」とか「男たらし」って女子が噂するようになった。時期悪く、僕が事情があって児童養護施設にお世話になったこともその噂に拍車をかけた。自分が自分じゃないような気がしていたけど、「やばい女子」という印象のせいでとりあえず「女子を好きになったり、男の子といる方がずっと楽しい僕」という印象を誰も持っていなかったことにホッとして高校も本来の自分じゃないことに血の涙を流しながらも妥協してその印象のまま行くことにしたのだ。

僕の高校はちょっとおかしくて附属校でもないのに僕の出身中学の子がそこそこの割合を占める。ずっとそれが流れのように続いている。でも他の中学出身者はいるからどっちかと言えば出身中学が違う子と過ごすようになった。意外とデリケートな話も結構する子が多くて(多分中学で女子とそういう話をすることがなかったから僕の偏見だろうけど)、自分の身体のことをかなり笑い飛ばせるようになったし、噂も気にしなくなった。それでもやっぱりモヤモヤしていた。

「やっぱり何かおかしい」

他の女の子とは何かが決定的に違う。高校一年生の夏に今の僕の「女子を好きになったり、男の子といる方がずっと楽しい僕」は「思春期の迷い」とかそういうものじゃないような気がした。男の子といる方が楽しい。でも男になりたいわけじゃない。かと言って今の女ままはいや。でも好きになったりしたことがある人は男の子もだし女の子も。もう、なんか自分わけわからん。自分はひょっとして化け物か病気か何かか?精神科に行かなくちゃいけない?混乱した僕はとにかくネットを調べまくって「Xジェンダー」という言葉を見つけ出した。その言葉はすんなり受け入れられて、ああLGBTQ+だったのかってホッとした。それから少しずつLGBTQ+の勉強を始めた。

とりあえず高校のうちはLGBTQ+だってことは隠しとかなきゃまずい気がする……今まで血の滲む思いで作り上げてきたキャラが崩壊して友達を失うことだけは避けたいと思った。自分がXジェンダーだと分かってからは自分の女子みたいな体型や自分の制服が急激に嫌になったけれどあと2年半我慢して、家を出て大学に行ってからきちんと自分らしくやり直そうと思った。けれど、今年から学校でスラックスがはけるようになって、おまけでナベシャツも使うようになった。

僕らしい格好をすること。それはやっぱり気持ちがよくて、幸せだった。今はトイレの鏡を見てもこれまでよりずっと明るい顔の僕が映っている。

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