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小説版『秒速5センチメートル』読んだよ

あくまで私の考え方なので原作ファンの方にはいささか怒られるかもしれないと思いながら書きます。

初っ端から正直に書く。
新海誠監督の映画は
「ほしのこえ」「雲のむこう、約束の場所」
「星を追う子ども」「言の葉の庭」(←これ好き。歌も)「君の名は」「すずめの戸締り」を観た。
作画は心底すごいと思う。
小説版を読んで、文字でも情景を丁寧に描く方だなと思った。
それはもちろんご自身のアニメであれだけ繊細に背景を描いているのだから当たり前なのかもしれないけれど、文字でも心の描写と共にその場の雰囲気が手に取るようにわかった。絵はすごい。
ただ物語は少し苦手だ。 


◉第一章 桜花抄


角田光代さんの『だれかのいとしいひと』という本の「転校生の会」という短編の中で

転校を経験したやつとしないやつじゃ、決定的に何かが違う。
ぼくが言ってることを、絶対にきみは、感覚的に理解できないと思う。
それがいいことだとか悪いことだとかっていうんじゃなくて

角田光代『だれかのいとしいひと』


という言葉がある。
転校生をやったことのある人はその経験がない人には到底わかり得ない感情がある。
子どもながらに、いつか終わりが来るということを知ってる。

私も幼稚園の頃から小学生までで4か所転校した。
だいたい2-3年。転校生は異物だ。
その土地に生まれた時から住んでいる人たちの中に入っていく。自然と嫌われないための所作が身につく。その分何かが削られていたようにも思う。当時は何も感じていなかったけれど。

出会った時から惹かれ合い運命のような繋がりを感じている貴樹と明里の二人。スマホもない時代に延々と相手のいる場所へと向かう気持ちは、きっと今のそれよりも強いものであったに違いない。

「あなたは大丈夫だから」

根拠もない、何の保証もない。
でも心強く支えてくれる言葉。
ただ私には貴樹にとってこの言葉が呪いのように
この先の人生に影響を与えすぎているように思えた。 


◉第二章 コスモナウト


貴樹に片想いする子からの視点。

最後の貴樹のあの拒絶は本当に身勝手だ。

ただ身に覚えがないわけではない。
人から向けられる好意というものが怖い時期があった。
私の気持ちなどお構いなしに向けてくる。
何なんだろう。
好きという気持ちが素晴らしいもので
向けられることは光栄なことで
尊いものとでも言いたいのか?

遠い昔私にもその感情があったのだろうけど
その熱量と言うべきものの感覚は忘れてしまった。
だからだろう。
好きという感情を信じてない。
一時的な風邪みたいなものだし、今後も信じない。
(あ、推しは別です。なんかそれとは違う好きなんで)
(あと単におばさんになったから説あります)


◉第三章 秒速5センチメートル


男性の方がロマンチストなのだろうと思う。(偏見)
貴樹が第三章から突如村上春樹の作品に出てくるような男になってびっくりした。
昔のことを忘れられないながらも成長段階で何人かの女性と付き合い、仕事に関しても自分の中の構築したルールをストイックにやっていく様子。
申し訳ないが村上春樹に出てくる"僕"やないか!!
と思わざるを得なかった。
(誤解のないように書くけど村上春樹氏読んでますよ。それこそ初期の「風の歌を聴け」から長編はほぼ)

アニメでは山崎まさよしさんの曲が使われていて
歌詞とリンクした映像だったイメージがある。
それがMVのようで、結局何を伝えたいのか私には分からずアニメは消化不良だった。
今回小説版を読んで少し補填されたけど相変わらず貴樹は苦手だな。
ラストに一歩踏み出そうとする描写があったことはよかった。

どうせなら北斗さんに最高に未練がましい貴樹を演じてほしい。
過去を引きずり自覚なく周りを少しずつ傷つけ生きてきた男。
自分を省みて申し訳なさで咽び泣いてほしい(ひどい)(だが北斗さんの泣き顔は見たい)

他のキャストの方たちや監督の撮り方などで映画は原作とはまた違った雰囲気を纏う可能性はある。
(夜明けのすべてだって変更点は多々あった)

私は一つ一つのことに意味を持たせたがるので人生が疲れやすいのだけど、この物語の私なりの答えがほしい。
もしかしたらそんなものはなくて、答えを求めることは間違っているのかもしれないけれど。
全くもって自分勝手な解釈だが、北斗さんしか演じられない貴樹を楽しみにしている。

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