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月の台地

透けた扉に 幾つも世界が結球し

光を宿さない瞳が その倍の数だけ視線を繰る

虚白に抜かれた 

声は途絶えた

息の仕方を 忘れた

膝を抱いて水底に行く 

青に濡れた身体で

秒針の刻む音を頼りに

ささやかな言珠で

櫓を漕いだ

逃げよう

逃げよう

探し物があるわけじゃないよ

逃げよう

逃げよう

何処へ向いても 終には朝が来てしまうのなら

記憶の支配の及ばない

月の台地の上で

水面を見あげて

花は微睡む


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