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読書日記『むかしのはなし』
今、「昔話」が生まれるとしたらをテーマに三浦しをんさんが書かれた小説集『むかしのはなし』。
昔話といえば勧善懲悪のイメージが強く、親切なおじいさんには良いことが起こり、意地悪なおじいさんには、悪い結末が待っていたりする。
悪い鬼は退治されるし、コツコツがんばったカメがウサギに勝ったりもする。
この小説集は今、生まれる「昔話」だ。
「今っぽいな」と感じたのは善も悪もなく、”ろくでもない人”が登場するところだ。
そして、必ずしも勧善懲悪されるわけではないところ。
多様性が叫ばれ、善悪を判断することが難しくなった現代を表しているのかなと感じた。
ここで昔話の定義を確認する。
1. 以前の出来事・経験などについての話。むかしがたり。
2. 民俗学で、口承文芸の―。子供に語って聞かせるたぐいの、空想的な世界のを内容とする話。
そして、このお話のあらすじは下記の通り。
三カ月後に隕石がぶつかって地球が滅亡し、抽選で選ばれた人だけが脱出ロケットに乗れると決まったとき、人はヤケになって暴行や殺人に走るだろうか。それともモモちゃんのように「死ぬことは、生まれたときから決まってたじゃないか」と諦観できるだろうか。
この本には、定義的に民俗学の方のお話が書かれていたこともあり、
三浦さんが書かれているお話も民俗学の方の昔話に該当すると思う。
つまり、100年後、200年後、大人が子どもに聞かせたり、絵本になっていたりするということだ。
私はそれを考えると、なんだか楽しい気持ちになった。
だいぶ際どいお話もあったけれど、きっと『竹取物語』が『かぐや姫』に改編されたみたいになるんだろうな。
そして、大人になって古典とかで学ぶんだろうな。
「違う星に移住する」という行為が当たり前になった時代に、
この話を聞いたらどう思うんだろうな。
もし、このお話が経験に基づく昔話だった場合、
どんなお話が残るのだろうな、とも…。
そんなことを考えて楽しんだ。
ちなみに、この小説集の中で私が一番好きなお話は『入江は緑』だ。
情景描写も含めて綺麗なお話だと思う。
私的に”ろくでなし”要素も薄かったし、みんなが幸せそうだった。
私はそういうお話が好きなんだなぁとつくずく思った。
おまけ:モモちゃんが好きなパン
【コッペパンに缶詰の黄桃と生クリームを挟んだもの】
(黄桃が売ってなかったので、白桃で代用)
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