亡くなった人を見た時
私は今までで、二度亡くなった人を見る機会がありました。
一度目は棺桶の中で眠る祖父。
二度目は大学で見学させて頂いた沢山のご献体の方々です。
棺桶の中で眠る遺体とホルマリンの処理をされたご献体はかなり異なるもので
でも、どちらもとても神秘的なものでした。
棺桶で眠る祖父は少しだけお別れの時に触れました。
触れたときの生きていたとは思えないほどに冷たく、硬い感触が今でも手に残っています。
ホルマリンで処理されていたご献体は、医学部の人がとても丁寧に解剖していました。
その医学部の人達の、知識量の凄いこと。
自分と同い年とは思えませんでした。
医学部の人達に驚かされたのは知識量だけではありませんでした。
ご献体に向き合う姿勢にも驚かされました。
人間の慣れというのはとても強い力をもっているみたいです。
医学部の人達はご献体と教科書を見比べながら、熱心に淡々と解剖を進めていました。
沢山のご献体を前にしながら、全く動じないんです。
誰でも何度もご献体を見れば同じようになる、慣れが生じるのかなと思いました。
ご献体を見て、生きていたとは思えませんでした。
なんだか精巧に作られた模型のようで、本当に生きて動いていたとは思えませんでした。
でも唯一目にして、生きていたんだ、と思った部分がありました。
それは皮膚です。
人間の臓器や筋肉なんて日常で目にしません。
でも、人間の皮膚はいつも目にしていて知っているからこそ
皮膚の一本一本の皺が、その方が生きていたと強く確信させるものに見えました。
とても貴重な体験でした。
とても大切な時間でした。
これから私も人の身体と向き合う職業の一つを目指す者として、
あの光景を忘れたくありません。
医療が進歩していくために、ご献体はかなり貴重なありがたいものだということを学びました。
この先私も何らかの原因で死んでしまった後だとしても、役立つ方法があることを知りました。