No.19 「面河渓・石鎚山 探勝の栞」を読む
皆さまこんにちは。イベントシーズンで意外とドタバタしている、面河地区・地域おこし協力隊の桑名です。
前回は、面河・橋コレクションの中組篇ということで、中組地区にある橋をいくつか紹介させていただきました。
(前回の記事はこちら↓)
さて、先ほどもこぼしていましたが、最近はありがたいことにいろいろなお仕事でドタバタしております。ですがその分、note記事作成に使える時間が減ってしまいまして……(前回の橋コレクションもかなりギリギリの作成でした笑)
というわけで今回の記事は、おすすめの面河に関する文献のご紹介にとどめさせていただきたいと思います。(言い訳タイム終了)
こんな本もあるんだ!と、軽い気持ちでお読みいただけると幸いです。
「面河渓・石鎚山 探勝の栞」の概要
早速こちらの本の概要をご紹介していきたいと思います。
この本が発行されたのは昭和33年(1958年)3月31日。今から66年前、テレビ番組だと月光仮面が始まった翌月…と言えば、なかなか古い本であることがわかるかと思います。(若い人には伝わらんて)
著者は、牧野富太郎博士にも師事していた、植物学者の八木繁一(やぎしげいち)氏。発行所は大面河観光協会、発行者はその会長である新谷善三郎氏となっています。
以前にもご紹介した通り、大面河観光協会は、のちの上浮穴観光協会、現在の久万高原町観光協会の前身となります。
ちなみに定価は85円。令和現在の価値で言うと497円となり、観光地でちょっと詳しいパンフレットを買おうかな…と思った時くらいの価格帯かと思います。(※1)
本の内容としては、面河渓で今でも残る観光スポットの名称や、動植物の一覧表、面河までのアクセス方法などが記載されており、まさしくガイドブックと呼べるものでしょう。
ここからは個人的オススメポイントを3つほど紹介させていただきます。
ポイント① 付属の地図が熱い!
こちらの本を数ページめくると、「面河渓及石鎚山探勝畧図」と書かれた地図が掲載されています。
こちらの地図、手書きで制作された思われ、しかもかなり簡略化した図ではあるのですが、当時の道路事情や公共交通機関の路線事情などがわかる、なかなかに興味深い資料となっています。
更に面河渓の探勝ポイントはかなり細かく記載されており、現在は消失している橋や建造物の名称も残っているのです。
現在はほぼ記載されていない探勝ポイントを知ることができる上、この時期に確実に存在していた建造物も知ることができます。このページ一枚でも一見の価値があるかと思います。(著作権が切れていない本のため、写真の掲載は控えさせていただきます)
ポイント② 目録等の協力者が豪華!
まず47ページから紹介されている昆虫類。こちらの情報提供者が、愛媛県における昆虫研究の第一人者である、楠博幸氏となっています。専門家目線で紹介されており、当時の世における、石鎚山系の昆虫たちの位置づけが分かる面白いページとなっています。
さらに50ページから96ページまでの45ページにわたって掲載されている植物目録。(全ページのほぼ5割を占めています。)こちらは「牧野富太郎博士の御指導を主とした」と記載されており、著者の八木氏が牧野富太郎博士と共に記録した際の目録であると推測できます。
牧野博士と八木氏が共に石鎚山を訪れた際の写真が、かつての愛媛新聞に記載されていましたが、その調査記録の一端を知ることができる、これまた貴重な資料かと思います。
ポイント③ 冒頭写真が豊富!
目次の次ページからは、川崎清規氏による写真が複数掲載されています。面河渓の探勝ポイントはもちろん、上浮穴郡内の御三戸嶽や岩屋山も掲載されており、視覚的に当時の観光の様子が垣間見れるかと思います。
さらには当時のお山開きの様子や、今では県内絶滅の可能性があるとされているカモシカの写真もあり、歴史を証明するものとしても見ごたえがあるギャラリーです。
まとめ
今回は、くわな的オススメの一冊をご紹介させていただきました。こちらの本ですが、古本サイトなどをチェックしていると、古い本の割には安価で手に入れることができます。(おそらくかなりの部数が発行されたためでしょう)
「ちらっと見るだけでいいのだけど……」という人も多いかと思いますが、面河山岳博物館2階の図書コーナーにも置いてありますので、お立ち寄りの際にはぜひチェックしてみてください。
もちろん私も一冊所持しておりますので、直接お会いできるよという方はぜひお声がけください!
おことわり
さて、ここからは少しおことわりをさせていただきます。
冒頭から述べている通り、ここ数日他の業務が立て込んでおり、NOTE記事の作成に使える時間が大幅に少なくなっております。さらに来月からは、新たな学習の方に時間を割きたいなと考えているところです。
書きたい題材自体はいくつもあるのですが、2週間おきではそれらをまとめ切って紹介するのが難しくなってきました……。
今回のように簡単な内容でお届けし続けようかとも悩んだのですが、やはり未来に情報を遺すという当初の目的も考慮すると、内容は重視していきたいなと考えております。
そこで、大変心苦しくはあるのですが、次回からは4週間おきの更新とさせていただけたらと思います。
楽しみにしてくださっている皆さまには本当に申し訳ないのですが、ご理解いただけますと幸いです。
その分、内容はこれまで通りしっかりと掘り下げていきたいと思いますので、今後ともよろしくお願いいたします。
ここまでお読みいただきありがとうございました。少し時間は空きますが、また次回お会いいたしましょう!
【注釈一覧】
(※1)日本円通過計算機による。GPIベース。
【参考文献】
・面河渓・石鎚山 探勝の栞(1958年・大面河観光協会)
・日本円貨幣価値計算機 (yaruzou.net)
・月光仮面 - Wikipedia