学校保健委員会で講話を行いました
1,はじめに
中学校で学校保健委員会の講話を行いました。
市内の小中学校では、「学校保健週間」というものが年間予定に組み込まれています。
養護教諭の先生を中心に心の健康にまつわる様々な企画が行われていて、先生方が毎年知恵を絞ってらっしゃるそうなんです。
私も初めて中学生への講話を担当することになりました。
結論を先に話すと、講話を行ってみて、「楽しかった!!」、「得るものが大きかった。」というのが感想です。
言葉で表しきれない感動がありました。
2,前もって準備したのは?
中学校では、どの学校でもちょっとした事件がいろいろと起こります。
日頃学校現場でカウンセリングを行っていて、何かと課題が多いと感じていました。
反面、「生きるってこういうことだよな。」と思い起こさせてくれる中学生たちが大好きで、大切なことをたくさん学ばせてもらっています。
2年生たちに伝える内容が、最初はなかなか思い浮かばなくて苦労しました。
学校保健委員会のテーマは、「心を軽くする」だったのですが、ストレスについて難しい話をしても響かないかもしれないし、話を聴くだけではなかなか伝わらないし、変わりにくいのではないかと思われました。
そこで気が付いたのは、「伝えてあげよう」、「教えてあげよう」、「変わってもらおう」と意気込んでいた自分の姿でした。
むしろ、中学生から聴いて、こちらが教えてもらえばいいんですよね。
そう思ってからは、アイディアが浮かびやすくなりました。
そこで、難しく考えて心を軽くするよりも、「自然と心が軽くなる」方法を紹介することにしたんです。
「自然と心が軽くなる」と思ったときに頭に浮かんできたのは、「赤ちゃん」、「自然の恵み」、「身体の感覚」でした。
そこで、この3つを軸に講話を組み立てながら、生徒さんたちが五感や身体感覚を通した体験ができるように工夫しました。
3,当日の様子
対象は中学2年生全員です。
5クラスの生徒さんたちが体育館に集まってくれました。
畑で収穫した野菜やご縁のあった農産物を集めて学校に運びました。
駐車場から体育館まで農産物の入ったダンボールを運ぶのは、ちょっと恥ずかしかったです。
「この人、一体誰?」と思われそうで…
生徒が集まってしまえば、あとは話すだけ。
人前で話すのは、ドキドキしながらも楽しめます。
以前は、人前で話す際に入念に準備を行い、原稿も作っていました。
最近では、絶対に伝えようと思う通過点だけ決めて、その場の様子を見ながらやり取りを行います。
通過点の中には、自分の心が動いたこと、感動したことを入れておきます。
あとは、出たとこ勝負で、行き当たりばったりです。
原稿を決めてしまうよりも、この方が話が生き物みたいに生きていて、とっても面白いんです。
4,講話(1) 臨床動作法「足の踏みしめ」
心理療法の1つに、身体の動作を通して物事を改善に導く「臨床動作法」という手法があります。
研修会に行ったり、学会に参加したりして、有効な方法だということを実感して来ました。
まだまだ初学者ではありますが、カウンセリングで度々取り入れて、効果を感じています。
今回の講話では、その場で簡単に実践できる「足の踏みしめ」という動作課題を紹介し、実際に行ってもらいました。
一言で足の踏みしめと言っても、個性が出ます。
ジャンプして思い切り踏みしめる生徒もいたりして、新鮮な驚きがありました。
「足の裏一周旅行」と題して、床を踏みしめる実感を抱いてもらえるように工夫しました。
足を踏みしめるように言っても、実は難しい人が意外といるんです。
現代人は、コンクリートの上で生活する時間が長く、畑や田んぼなどの作業で地面とつながる時間も少なくなりました。
地に足がついている感覚が味わいにくいのかもしれませんね。
そのため、できる範囲で生徒さんに声を掛けて行きました。
じっくり足を踏みしめて身体を安定させることが心の安定にもつながって行きます。
そのこともお伝えしました。
この間、同時進行で順番に自然の恵みにも触れてもらいました。
5,講話(2) 自然の恵みに触れてみよう
学校にいる時間が長いと、自然の恵みに目を向けたり触れ合う時間が少ないのが現状です。
私は日頃から畑で野菜を育てたり、知り合いの農家で田植えや稲刈りを体験させてもらっています。
そんな自分の持ち味を生かしながら、力の強い野菜や農産物などに触れてもらうことが中学生に元気を運んでくれるのではないかと考えました。
生徒さんたちは、思った以上に自由奔放に野菜や農産物に触れて行きました。
生き生きした表情で、とても楽しそうです。
アロエを顔に塗る子までいたようです。
特に、お米やもみ殻のような細かい粒の中に手を入れて感触を味わうのが人気でした。
普段味わったことのない感覚を五感を通して味わってもらうことができて、私自身も明るい気持ちになりました。
生徒たちには、自然の恵みに触れるのも対人関係の練習になるという話をさせてもらいました。
人と人のやり取りだと相手にも感情があるから難しい場面が生じてきます。
ところが、自然の恵みにも命があって、触れてみると優しく応じてくれるんです。
私が以前木に触れながら心の中で話しかけてみたところ、あたたかい想いが何時間も心に残っていたという話を交えました。
6,番外編 親子の会話
お母さんが赤ちゃんを抱っこしている絵に吹き出しを付けて配りました。
講話の最初と最後で、どんな台詞が思い浮かぶかを書いてもらいました。
「赤ちゃんのことを思ったらホッとするかな。」、「中学生から教えてもらおう。」といったように、思いついたことを合わせてみました。
中には否定的なイメージが出てくる生徒さんもいるかもしれません。
ありのままに書いてもらったことを、カウンセリングや学校生活に活かすことができたらという思いも込めました。
まだじっくりと確認できていませんが、楽しみに読ませてもらおうと思います。
7,講話を行ってみて
講話の最後に、亡くなった友人の話をしました。
と言っても、前向きな話です。
物事をいろいろな角度から見てみることが大切だと知ってほしかったかんです。
詳しい話はここでは割愛させていただきますが、つい先ほどまでテンション高く騒いでいた生徒も真剣なまなざしで聴いてくれて、私自身の心が軽くなったように感じました。
それから、中学生が触れた野菜や農産物を見て思ったことがあります。
それは、「中学生たちの持っている生きる力がここに込められている」ということでした。
そこに気が付いたことで、そのもみ殻を畑にまき、さつまいものつるは畑に飾りました。
野菜やお米を食べたら、私が元気になります。
私の方も得るものが大きい講話となりました。
それはおそらく、自分が受け取ると決めたからなのだと思います。
とてもありがたい経験をさせてもらいました。
8,生徒たちの感想
ここで1つ触れておくことがあります。
生徒が書いた感想をざっと読んでみたところ、ものすごく響いている子もいれば、「全く分からなかった。」と回答している子もいたという事実です。
同じ学年でも、生徒によって受け取り方が様々で、授業においても同じことが起こっているのではないでしょうか?
半分がっかりしながらも、また1つ大切なことに気づかせてもらうことができました。
9,おわりに
中学2年生を対象に、学校保健委員会の講話を行いました。
一般的なお話だけの講話とは異なる内容ではありましたが、五感を通して実感したことが生徒さんたちの中に残って行くように思います。
講話を受けて、「自然に触れるにはどうしたら良いのか分からない」という声も聞かれましたので、生徒さんからの質問に順次回答して行く予定です。
読んでいただきありがとうございました。