腸内細菌の働き・種類

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1)腸内細菌とは
ヒトの腸管内には、約1,000種類、約100兆個もの多種多様な腸内細菌が生息する。ビフィズス菌、乳酸菌に代表される生体に有用な菌(善玉菌)もあれば、ウェルシュ菌、大腸菌のように生体に有害な(悪玉菌)も存在する。

こうした腸内細菌の集まりのことを腸内フローラ(腸内細菌義)といい、そのバランスは食生活、疾病、薬剤、ストレス、年齢などの要因によって変動する。腸内フローラを至適状態に保つことは、老化防止、生活習慣病、がんの予防につながるのである。

酵母菌、乳酸菌ともに、バクテリアの一種であり人体の粘液部、腸内、表皮にも存在。農作物などの表皮にも多いなど、多くの場所で生育する。酵母・乳酸菌は共存関係にあり発酵食品では酵母、乳酸菌が培養され、同時にこれらの菌がアミノ酸、ビタミンB群ミネラルやその他多くの栄養素を生み出す。

2)プレバイオティクスとプロバイオティクス
プロバイオティクスやプレバイオティクスは、腸内フローラを調節で働く。

(1)プロバイオティクス(probiotics)
善玉菌を増やし、悪玉菌を減らすことで腸内フローラのバランスを改善することにより、人に有益な作用をもたらす生きた微生物や、それらを含む製品、食品を指す。

プロバイオティクスは、1989年に英国の微生物学者Fullerによる「腸内フローラのバランスを改善することにより人に有益な作用をもたらす生きた微生物」という定義が、今日でも広く用いられている。現在ではFAO(世界広報センター)、WHOにより、「十分量を摂取したときに宿主に有益な効果を与える生きた微生物」という定義もキョウヒョウされている。

主な作用は、整腸作用(下痢や便秘の改善)、腸内の感染予防、免疫力の回復などが挙げられる。主な食品は乳酸菌、ビフィズス菌、納豆菌などである。

(2)プレバイオティクス(prebiotics)
腸内において有用な菌を増やし、腸内フローラの健常化を促進。人に有益な作用をもたらす難消化性食品成分のこと。食物繊維や難消化性オリゴ糖(ラクツロース、フルクトオリゴ糖など)、レジスタントスターチなどが該当する。

プレバイオティクスは英国の微生物学者Gibsonによって、1995年に提唱された用語である。プロバイオティクスが微生物を指すのに対して、プレバイオティクスは以下の4条件を満たす食品成分を指す。

1.消化管上部で分解・吸収されない
2.大腸に共生する有益な細菌の選択的な栄養源となり、それらの増殖を促進
3.大腸の腸内フローラ構成を健康的なバランスに改善し維持する
4.人の健康の増進維持に役立つ

主な作用としては、乳酸菌・ビフィズス菌増殖促進、整腸作用、ミネラル吸収促進、炎症性腸疾患への予防・改善が挙げられる。

代表的な食品は、オリゴ糖(ガラクトオリゴ糖、フラクトオリゴ糖、大豆オリゴ糖、乳果オリゴ糖、キシロオリゴ糖、イソマルオリゴ糖、ラフィノース、ラクチュロース、コーヒー豆マンノオリゴ糖、グルコン酸、食物繊維の一部[ポリデキストロース、イヌリンなど]など。

(3)シンバイオティクス
プレバイオティクス・プロバイオティクスを組み合わせたものを指す。腸管免疫系の維持改善に有効と考えられている。

3)酵母(Yeast)
酵母は小腸内で、乳酸菌は小腸・大腸内で、それぞれ腸内健全化に働く。酵母は「酵素生産工場」とも呼ばれ、酵母菌体中に多くの酵素が含まれる。食物で摂取した乳酸菌は体内で棲みつくことができず、4日ほどで排便される。

4)乳酸菌(Lactic acid bacteria)
糖を分解し乳酸を作り出すことで、身体によい働きをする細菌の総称。生物学上の分類である菌属としては「ラクトバチルス(乳酸桿菌)」「ラクトコッカス(乳酸球菌)」などがある。腸内では主にビフィズス菌のサポート役となり、ビフィズス菌が生息しやすい環境を作るのに役立つ。

乳酸菌の定義のひとつに、「糖(グルコース)を分解して作る代謝物の50%以上が乳酸であること」というものがある。ビフィズス菌も糖から乳酸を作り出すが、それ以上に酢酸を作り出すので、厳密には乳酸菌の一種に数えられない。

乳酸菌は人や動物の腸内のほか、牛乳や乳製品、漬け物などの発酵食品にも多く存在する。酸素(空気)があっても生育できる「通性嫌気性」という性質があるため、ビフィズス菌と異なり自然界に広く生息する。

乳酸菌は糖質(ブドウ糖、オリゴ糖など)を分解して乳酸を作ることで、菌体成分を合成、生育に必要なエネルギーの生成などを行う。代謝産物である乳酸は腸内を弱酸性にするので、悪玉菌の住みにくい環境を作ることができる。

乳酸菌は腸内に存在し、食事により摂取もできるが、腸に長く住み着くことができない。そのため常に補う必要があります。

(1)効果
①整腸作用
乳酸菌の生菌を摂取することで、腸内の善玉菌と悪玉菌のバランスを整える。それにより小腸での栄養素の吸収をサポート、腸の蠕動運動を活発化、便秘や下痢の症状の改善に働く。

②免疫力の向上
乳酸菌には花粉症、アレルギー等への免疫力増強効果が認められている。ただし死菌にのみ限定されるため、生菌への作用は極めて弱い。

5)ビフィズス菌
ビフィズス菌は、母親から引き継いだ「腸内に棲息する乳酸を産生する善玉菌の一種」である。乳酸のほかに酢酸も生成するなど、乳酸菌の一種ではないが、乳酸菌の働きと似ているという特徴を持つ。

食物で摂った(一時的に体内に存在する)乳酸菌とともに、腸内環境改善に働く。腸内改善の改善でビフィズス菌も住みやすい環境となり、ビフィズス菌も増えやすくなるという好循環が生まれる。ビフィズス菌を増やす方法としては、ビフィズス菌が餌とする食物繊維、オリゴ糖などの摂取も有効と言われている。

乳酸菌は酸素がある場所でも生きていけるが、強酸に弱い性質を持つため、酸素のほとんどない大腸に辿り着きたいのものの、胃酸や胆汁酸によって死滅することが多い。

(1)効果
腸内を酸性にし、悪玉菌や病原菌の増殖を抑制する。栄養素の消化・吸収を促し、補助腸の蠕動運動を促進させる。

(2)サプリメント
食べ物、サプリメントなどによって外部から摂取したビフィズス菌は。乳酸菌と同じように対外へ排出される。乳児は誕生後数日経つと、ビフィズス菌の繁殖が始まり、ミルク・母乳から乳糖を得て乳酸・酢酸を作り腸を守る生理作用を発揮する。


ビフィズス菌は年齢を問わず、常に大腸内にある。しかし加齢とともに減少し、悪玉菌の増殖し、大腸内の環境悪化を招くため、できるだけビフィズス菌のサプリメントなどで補い、大腸を健康に保つことが必要である。乳酸菌は基本的に、長期間腸内に住み着くことができないため、継続的な摂取が望ましいと考えられる。


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