#002 先輩からの缶コーヒー
大きなプロジェクトを任された。
今までにもいくつかのプロジェクトを担当させてもらったことはあるが、
ここまで大きなプロジェクトは初めてだった。
今まで見たことないような金額が動き、物凄い人数の人が動いた。
その分今まで感じたことのない責任と緊張を感じていた。
絶対成功させてやる、と思い、ほかの社員が帰ってもオフィスに一人残り資料の作成を念入りに念入りにした。
眠たくなると近くの自動販売機で缶コーヒーを買い、飲んだ。
味が分からなくなるまでに飲んだ。
家に帰っても寝ずに資料に目を通した。
生活の削れる時間を出来るだけ削って、プロジェクトに時間を当てた。
けれども、会社からのプレッシャー、同期の影口からくる情緒の不安定で、
失敗するんじゃないか、なんて考えた時もあった。
そんなプロジェクトは成功した。大成功だった。
クライアントも、想像を遥かに上回ってくれた、と言ってくれるほどの物だった。
ホント良かった、思わずそう口からこぼれた。
大仕事を終え、デスクで項垂れていると先輩から、プロジェクトお疲れ、と
缶コーヒーを渡された。その缶コーヒーはとても旨かった。
眠気覚ましで飲んでいたのと一緒の缶コーヒーなのに
比にならない、格別だった。
状況が変わるだけでこんなにも変わるのか、そう思った。
今まで飲んだ中で一番旨いコーヒー、それが先輩からの缶コーヒーだ。
一生忘れないと思う。