読書感想:戴天
先週拙宅に届いた千葉ともこさんの戴天、この週末に本腰入れて読み始めたら、一気呵成に読み切っちゃいました。
千葉作品はストーリーやキャラクターが魅力的なのはもちろんなんですが、それだけでなく、作者自身の心の叫びが文章から響いてくるんです。
デビュー作の震雷の人もそうでしたが、千葉さんの長編小説って、いったん読み始めると止まらなくなります。
戴天から聞こえた叫びとは何か。
千葉さんのインタビューにもあるように、既存の「英雄」観に対する反論もあります。
それと同時に、「怒り」というものも強く感じました。
自分を傷つけた者への怒り、社会の理不尽と無責任に対する怒り、そして「英雄」やその物語とそれを崇める世への怒り。
唐代の中国であれ現代の日本であれ存在するはずの、そういった「怒り」を抱く自分自身から逃げていない。
その「怒り」の声を「天」に対してあげる、それだけの明確な自我を見せる主人公たちと、そして作者である千葉さんの姿に惹きつけられました。
震雷の人の感想で、てんぐは「一目惚れ」という表現を使いました。
では戴天はというと、一目惚れした相手と再会して、やっぱり魅力的だと感じられたことが嬉しくなる、そんな作品でした。
そして、3月12日には、<安史の乱>三部作最新作となる「火輪の翼」も発売されます。
いやあ、早く読みたいです。